SHE SAID シー・セッド その名を暴けのレビュー・感想・評価
全20件を表示
記者たちの執念、権力の宿痾を斬る
「パルプ・フィクション」「恋に落ちたシェイクスピア」「グッド・ウィル・ハンティング」……ワインスタインがプロデュースした作品は、皮肉なほど名作が多い。ヒット作は金を生む、そしてその才能には権力がついて回る。
ワインスタインの犯罪をニューヨークタイムズがすっぱ抜くその瞬間までの、記者の地道な取材と被害女性の葛藤や決心を描く本作。報道後のMetoo運動などの劇的な社会の反応などは周知のことだからか触れないが、そこに至るまでの関係者の心理の動きやワインスタインとの応酬などは、比較的淡々とした描写でありながら地下でたぎるマグマのような緊張感がある。ラストの出稿直前は、見ているこちらもどきどきした。
被害女性には不利な条件で示談契約書を書かせ金を渡し、身辺調査で弱みを把握して口封じ。意向に沿わないものは業界から締め出し、権力にものを言わせ報道も訴訟も潰す。映画や時代劇でしか見かけない、そんな巨悪が実在した。女性側も嫌だとは言ってなかったし、などと言い訳したらしいが、本気でそう信じているならここまで徹底的に事実を隠すような発想には至らないだろう。
取材活動の中心にいたミーガンもジョディも幼い娘を持つ母親だ。被害者と同じ女性としての正義感とともに、娘が生きる未来がワインスタインのような存在を黙認する社会であってほしくないという、強い願いがあったに違いない。
男性による女性への性犯罪という構図ではあるが、根底にあるのは権力の横暴と、それを許す法律の脇の甘さだ。男対女という単純な図式だけで語れる問題ではない。スクープに協力する男性の存在や、ニューヨークタイムズ社内の男性の闘う姿勢も描かれている。
制作総指揮のブラッド・ピットは、グウィネス・パルトローと付き合っていた当時彼女からワインスタインによるセクハラを聞かされ、彼に直接「俺の彼女に二度とあんなことをするな」と啖呵を切ったそうだ。
ワインスタインの醜悪さも見せられたものの(中盤にあった、被害女性との会話の録音音声はもしや本物?)、記者の覚悟や執念が物語の中心になっていてよかった。キャリー・マリガンとゾーイ・カザンのバディっぷりが自然で親近感があって、それでいて頼もしい。パトリシア・クラークソンが演じた上司のレベッカは毅然としていてかっこよかった。
一方、被害女性が多いので仕方ないが、それぞれの女性の描写が断片的な印象があり、20年以上黙っていたことを話そうと決心した契機が、人によっては分かりにくい場面があった(アシュレイ・ジャッドなど、一部本人がキャスティングされていたのはすごい)。
それと、ジョディがイギリスにあるロウィーナ・チウの家に行った時、本人が不在なのにワインスタインの行為を知らない夫に彼女の過去を話したシーンだけはかなり引っかかってしまった。いや、本人隠してたのに夫にぺらぺら話すってアリなの?結果オーライではあるけどさ……その辺はちょっと残念。
68歳で禁固23年を言い渡され、その後も別件で裁判が続いているワインスタインは、もう娑婆で悪事をすることはできないだろう。その後のMetoo運動で、彼のような人種は「前時代の悪弊」として一掃されつつあるようにも見える。
しかし、権力の周辺に驕りや腐敗が生じやすいのは、人間に心の弱さがある限り普遍的なことだ。どのような業界でも組織でも、決定権が集中する場所には、情報の風通しのよさと異論に耳を傾ける土壌、権力を持った者の恣意的な振る舞いを抑制する仕組みが必ずなければならない。
ワインスタイン後にそういう社会になったのか、その状態に近づけるべく自分自身に何が出来るのか。そういったことをあなたも考えて欲しいと、この物語から投げかけられている気がした。
巨悪を倒すには…
後のMeToo運動に繋がる性暴力報道の実話。ハリウッド有名プロデューサーによる絶大な権力を利用したあまりにも卑劣な手口、告発したくてもできない不当な法制度、被害女性たちの恐怖、恥辱、後悔、絶望感、当時の周囲達の無関心さ、権力の前での無力さ、真実に迫る記者たちの執念、報道機関としての矜持が犇々と伝わってくる。記者たちも子を持つ女性であり、人間ドラマとしても見応えあった。人生の一部を盗まれた、将来を奪われた悲痛の叫びが過去の人生は変えられないが、未来ある女性たちや、今を生きる女性たちに同じような被害に合わせてはならないという勇気ある告発に繋がった。
男性の権力者に立ち向かう勇気ある女性たち!!
1990年のアイルランドで権力ある男性から、受けた女性への性暴力被害!
が赤裸々に描かれていました。
ニューヨーク・タイムズやニューヨーカーと
言う新聞や雑誌に告発された内容は
Me.Too!
男性の性的暴行は音声だけでも
世界中に炎のように広まっていました。
裁判や示談、お金に関わる話
性被害を受けた女性たちが、地道に事件の
真相に迫る姿が毅然として見えました。
ワインスタイン氏の告発に踏み切る!!
禁錮25年の服役が下されたとき!
事件の捜査をしてきた女性たちの努力が実り
実態が明かされたセンセーショナルな
ストーリーでした。
公開した日に観ました。
ハリウッドはこの事件と闘った女性たちを忘れてはならない
2017年、その事件は暴露された。
映画プロデューサーで映画会社のCEO。ハリウッドのドンとも言われた超大物、ハーヴェイ・ワインスタイン。
彼が、多くの若い女優や女優の卵、若い女性スタッフや会社の従業員らにセクハラ、暴行、脅迫を…。
その期間、プロデューサーとして名を馳せ始めた90年代から暴露された昨今まで。
被害者の数、100人以上とも。数え切れぬとも。
ハリウッドを、映画界を、世界を、激震させた…。
私はこのニュースを知った時、衝撃ではあったが、特別驚きはしなかった。ああ、やっぱりな、と。
ワインスタインの黒い噂や横暴は色々と聞いていたから。
監督と事ある事に対立、揉める。勝手にフィルムを編集。色々要求を押し付ける(『ギャング・オブ・ニューヨーク』が微妙な作品になったのもワインスタインが色々注文付けてきたから)。アカデミー賞を受賞する為だったら過剰なゴリ押しPR(『ダークナイト』を押し退け『愛を読むひと』がノミネートされたのもそれが要因の一つとも)…。
数々のヒット作や名作を手掛けてきた敏感プロデューサーである一方、スーパーワンマン。ハリウッドは俺様に跪け、と言わんばかりの傲慢さ…。
このセクハラ事件もそう。何かで聞いた事がある。例えば、狙われたのが女優の卵だとする。夢を抱いてハリウッドにやって来た。関係を強要する。拒む。すると、「俺はお前みたいな奴をこのハリウッドから消し去る事など簡単に出来るんだぞ」。
つまり、ハリウッドで永久に仕事にありつけなくしてやる。自分の権力や地位を使って。愚か者が権力を握った時、どんな振る舞いをするか、その典型的凡例である。
もし、ワインスタイン事件が今も暴露されていなかったら、ハリウッドはどうなっていたのか…? 考えただけで戦慄。
ハリウッドは夢や憧れの場所。世界中の映画ファンにとっては聖地。
そこで、一人の愚者が権力を使っていた悪行…。
単なる性的スキャンダルじゃない。大事件。間違いなく、ハリウッドの歴史に汚点として残るほどの…。
では、何故誰も訴えなかった…?
こんな長きに渡って、多くの女性が被害に遭ったというのに…。
それほどの絶対的権力者だったから。ワインスタインに逆らったら、ハリウッドで仕事が無くなるとも。
報復を怖れて。
口止め料などの裏工作、妨害、隠蔽…。
闘っても無意味だった。闘いすら出来なかった。被害女性たちは泣き寝入りするしかなかった。
この闇と悪行が明るみに出る事はないのか…?
しかし、
遂に暴露された!
そして今の“#MeToo運動”に続く…。
ワインスタインの悪行を暴いたのは、ニューヨーク・タイムズの二人の女性記者…。
ミーガン・トゥーイーとジョディ・カンター。
本当に二人の不屈の闘志と信念には敬服する。
ある時ハリウッドに蔓延するワインスタインの性的暴行の情報を掴む。二人は取材を始めるも…
誰もが口をつぐむ。被害女性たちすらも。
相手が相手だから。被害女性たちにとっては、傷口に塩を塗るような、思い出したくない事だから。
関係者や当事者たちにとって、時に面倒で煩わしかったかもしれない。
が、彼女たちは諦めなかった。
この悪事がこのまま闇に葬り去っていい訳ない。
必ず、真実を明るみにする。
皆口をつぐむが、中には声を上げたい人だって、きっといる。
粘り強く、取材を続ける。
有力な証言を得るも、公に出る事を怖れ断られる。
確かに苦しい事かもしれない。難しい事かもしれない。再びトラウマと向き合う怖い事かもしれない。
だが声を上げないでいると、何も変わらない。ずっとこのまま。ハリウッドに闇が続く。
勇気を出して。声を上げて。
夢と憧れの場所のハリウッドを、本当にそうする為に。
今、行動に移る時。今、変える時。
声を上げた被害女性たち。
奔走し、尽力した二人の記者。
二人は幼い子供がいる母でもある。我が子やこれから産まれてくる子供たちの未来の為にも。
権力や妨害に屈せず、闘ったからこそ、巨悪は挫かれ、悪行は暴かれた。
記憶に新しく、未だハリウッドに尾を引くこの事件。
だから映画化されると聞いて、これは絶対見逃せないと思った。注目の一本だった。
そして、よく映画化したと思う。ハリウッドにとって、自らの暗部をさらけ出すようなもの。劇中のように、色々圧力や横槍があったかもしれない。
スタッフもキャストも女性が多い。だからこそ、意義がある。
演出も展開もドキュメンタリータッチのようで派手さは無く淡々としているが、題材も相まって飽きや間延びはする事なく、終始引き込まれた。マリア・シュラーダーの真摯な手腕。
生々しい証言や実際の肉声も。ワインスタインは勿論、被害に遭った多くの女優たちの実名も。本人役として出演も。隠す事なく、巧みに昇華した脚本。
この手の作品の十八番、アンサンブル劇。主演のキャリー・マリガンとゾーイ・カザンの熱演。
実録社会派とエンタメ性も踏まえた一級の作品。本当に、よく映画化した!
…にも関わらず、批評は良かったが、興行的には不発で、アカデミー賞でも一部門もノミネートされず。
映画化には早すぎたのか、あくまで業界の醜聞であって一般観客の興味を惹かなかったのか、アカデミーも業界もまじまじと見せ付けられる恥や暗部を見たくなかったのか…?
いずれにせよ、この興行不発やノミネート落選は、変わろうとして変わらないでいるようなハリウッドの問題に感じる。
2017年に暴露され、2020年に刑が確定。その後余罪も。
禁固23年が言い渡され、現在収監の身。
70歳を過ぎているワインスタインはおそらく、刑務所の中で生涯を終えるだろう。
が、一切同情はしない。
劇中でも記者たちに圧力をかけ、社に抗議の脅迫電話をかけ、最後の最後まで往生際悪く。
お前にキャリアを潰され、人生を狂わされた女性たちがどれほどいるか、知っているのか?
自分は権力や地位を使ってやりたい放題甘い汁を吸ったろうが、どれほどの女性たちが苦しんだ事か。
女性たちはお前の性の玩具じゃない。人間なのだ。
本当にそれを分かっているのか? 自分の犯した罪も分かっているのか?
ハリウッド全てに悪影響を及ぼし、自身の会社は破産、他社に売却。関係ないスタッフまで路頭に迷わせた。
関わった作品にまで今後もマイナスイメージが付きまとうだろう。
我々映画ファンの楽しみも砕いた。
罪を認識し、刑務所の中で朽ち果てろ!
劇中でも触れられていたが、ワインスタインのような愚者や事件は、世界中にまだいるだろう。
この事件の直前に起きた、アメリカの大手TV局、FOXニュースで起きた同様の絶対的権力者によるセクハラ事件。(『スキャンダル』として映画化)
またミーガンは、大統領になる前のトランプのセクハラを糾弾していた。が、苦渋を舐めさせられ、トランプは大統領となったが、再び過去のセクハラが暴露され、今正念場を迎えている。こんな奴、二度と大統領にするな!
バカで愚かな男どもの傲慢がのさばり続ける限り、同様の悪行も続く。
が、自分の権力が永遠に続き、隠し通せるものか。
必ず、暴かれる。
屈せず、闘う者たちが現れる。
女性たちの声が、世界を変えようとしている。
ハリウッドは、この事件と闘った女性たちを絶対に忘れてはならない。
子だくさんの粘り強い記者
いつもの映画館②で
仕事を2時間早退して16:35開始
タフな女性が権力者の男に食らわせるというストーリーが大好きだ
キャリーマリガンはプロミシングヤングウーマンから続く強さ
ゾーイカザンは子だくさんの粘り強い記者を好演
中国系の元社員へのアプローチはかなり際どい
結果オーライだったが
タフといっても傷つき悩みながら日々生活する
しなやかな柳とか葦とかのような強さ
それぞれの旦那もいい味出していた オラはこういう男になりたいのだ
The Weinstein Companyのクレジットはオープニングでよく目にした
あとミラマックスもオラが本格的に映画を観だした頃に
ひとくせあるとんがった映画を送り出していた記憶がある
・いい映画を世に出したい映画オタク
・成功を収めて信頼を得る
・社会的な成功・名声
・モテなかった自分に女が言い寄る
・言いなりになる周囲
ワインスタインの狼狽えぶりにはザマミロ感があった
グイネスパルトロウには明確に拒否されたのだろうか
その名を暴けというタイトル痛快なイメージだが違和感
オラ:ワインスタインはみんな知っているんだから
彼奴きゃつをあげろとかさらせとか告発せよ くらいがいいのでは
妻:世間が知らなかったことを暴いたのだからそれでいいんじゃないか
…その通りだ
妻は映画を観ていない オラにはやっぱりセンスがない
あと引用という邦訳がなかなか飲み込めなかった
結構な頻度で出てきたのでキーワードだと思うのだが
それと証言者が多くて名前と顔が一致せず消化不良 若干の眠気
そういえばNHKのアナザーストーリーを録画していたはず
理解を深めるために観てみよう
(以下映画と無関係)
映画が終わったら雨があがっていた
先週から続くひとり花見②
ファミマで③ビール×2
またまた家から持ち出したさけるチーズとポリッピー
駅東口のペデストリアンデッキベンチでグビっと この上ない自由♪
シメは何年かぶりに吉野家
牛丼withサラダ・みそ汁で643円ナリ 変わらぬ安定の味 美味かった~
芸能界のこと、どの組織にもあるのでは
ゾッとして具合が悪くなる映画。
展開が早く、最後まで頭を使う。
犯人が逮捕されたからいいけれど。
自分が被害者になったら、その現場になったら
Noと言えるのか、声を上げられるのか。
とても怖くなり、だれかと話したくなった。
2人のワーキングママが抗えないシステムに立ち向かう
本作は#MeToo運動の火付け役になった2人のママさん記者たちの奮闘を描く。
火をつけるどころか火を起こすところから始まる本作のストーリーは報道記者の苦労をひしひしと感じる。また本作は傷つき、沈黙を余儀なくされた多数の被害者の存在がある。彼女らは公序良俗を無視した悪法たる契約の存在とそれを守る法の番人たちのせいで半ば生ける屍状態だ。
中でも印象深い台詞は物語導入でミーガンが語る 報道機関は法的支援はできない というもの。
しかし、観賞後そんなことはないと強く主張できると私は考えるにいたった。
報道とは報われる道と書く。
ひとつの記事を世に出すための労力たるは想像を絶する。
足を運び、関係者の心を解きほぐし、証拠や裏付けを得て、根回しもする。
他社とのスピード競争もあるだろう。
まさに究極の製造業といってもよい。
彼ら彼女らのとりわけ弱き者たちのための頑張りが報われ続けてほしいと願うばかりである。
ひとことReview!
後の「#MeToo」ムーヴメントになった実話作品。濃厚な感じなんだけど、「ふーん...それだけ?」ってな感じ。偏差値50以上の大卒の意識高い系と、フェミニスト女子向け。
実名を出すことの困難
セクハラの被害者に証言をしてほしい、できれば実名を出して欲しいとお願いして回る2人の女性記者の話なので、「その名を暴け」という副題の「その名」は加害者ではなく被害者の名前を「暴け」ということになる。なんか変。
1990年代にまで遡って調査しているので、セクハラ被害はなかったこととして暮らしている女性の傷をえぐり出すことにもなり、当然スムーズには行かない。しかし、夫の理解や協力を得ながら子育て中の2人の記者の奮闘ぶりが被害者達を動かした部分もあり、勇気を出す人が出てくる。
髪ボサボサですっぴん風のキャリー・マリガン、ゾーイ・カザンはイメージとそんなに変わらないか、上司で白髪が美しいパトリシア・クラークソン、に加えて、「ブルックリン99」のホルト署長が出ているのも嬉しかった。
女性版『記者たち』かな
初めの方で、1992年のアイルランドの場面があって、いきなり2016年のニューヨークに飛び、電話で当時大統領候補のトランプ氏のセクシュアルハラスメント告発への恫喝があり、この作品のテーマへの火蓋が切られた感じがした。その後はトランプ氏ではなく、当時大物映画プロデューサーとして権勢を誇ったワインスタイン氏が加害者として据えられ、二人の女性新聞記者が取材を重ね、真実に迫っていく。まさに様々な論評で言及され、撮影監督のブライエ氏がインスピレーションを得たという1976年公開の『大統領の陰謀』の女性版と言って良いものであった。ただし、監督のシュラーダー氏は、その作品について、私生活が描かれていない点でむしろ避けたいと述べています。それならば、2017年に公開された同様の二人の男性記者によるイラク戦争の背景についての取材経過を描いた作品の『記者たち』は、私生活を描いている点でより近いと言えるのではないだろうか。取材において裏づけを徹底的に取りに行き、特に被害者の同意が得られるまでは記事に移すのを控える非常に丁寧な姿勢の繰り返しの描写は、やや冗長に感じたが、その誠実さこそが、この作品で伝えたかったことでもあるのだろう。性行為の描写も意図的に控えたものだという。そこも卓見なのであろう。2019年公開の『スキャンダル』は、被害者を俳優に絞り、泣き寝入りから告発への動的な変化を描いていたが、このたびの『シー・セッド』と比べると、荒過ぎる描写だったと言わなければならないであろう。映画『記者たち』では、『ニューヨーク・タイムス』は、政府の発表を鵜呑みにするジャーナリズムの主体性を放棄した報道体制を批判されているのに対して、この作品では相手が政府ではないけれど、矜持を感じるものだと言って良いであろう。
BRICK WALL
劇伴のおどろおどろしさが随所に演出を増幅させる構造になっている作品である
紛れもない"#MeToo運動"のきっかけとなった映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインによる性的虐待の告発を促したニューヨーク・タイムズの記者、ジョディ・カンターとミーガン・トゥーイー、それぞれが母親でもある2人の軌跡を描いた作品である
ルッキズムを彷彿とさせてしまい甚だ遺憾なのだが、確かにかのプロデューサーの容姿は問題を匂わせる ああいう"お山の大将"的容貌と振る舞いは、一定の数存在する ドラえもんでいうところのジャイアニズム的位置づけだろう 自分の人生に於いてもああいう輩は存在していたし、誰にでもそれは身に覚えがあると容易に想像出来る そんな極端に利己主義、独占主義的な思想が許される背景は、決して与えてはいけない、但し容易に奪取できる先見の明、そしてタイミングの妙という"運命"だったのかも知れない そもそもが親分気質で成長したであろう、体格的にも恵まれた人生に於いてその人格がかなり曲がった形で形成されてしまったことは手に取るように解る 残念なことに勉強も出来たであろう 容姿の怖さのインパクトもあって、上下関係を構築しやすい構図が容易く手に入れてしまったことに、この世の不条理を禁じ得ない モラハラ、セクハラ、パワハラ等の"ハラスメント"の根源は、強烈な個性の持主にリーダーシップを奪われるという負の側面が大きくなった状態からの原因なのである
今作品のキモは、その"必要悪"を如何にして対峙すべきかの術を懇々と説く内容である 兎に角証拠!証拠!証拠!・・・ 被害者は1人ではない、そして今でも拡大生産中である最悪な状況を、周りの誰も"自己防衛"という消極的力の加担の中、世知辛い毎日を諦観に馴らされた殆どの人間達にぶつけてきたストーリーである 人間はこの"ジャイアズム"を利用し続けるのか、それとも排除するのか、それが問われるプロットなのではないだろうか?
エンドロールの「HERSELF」の価値
ワインスタインの性犯罪を丹念に追った記者二人の物語。勇気を出して、実名での被害公表に応じた方々の勇気。とりわけ、エンドロールで「HERSELF」と書かれた出演者たちに拍手を送りたい。
あっさり風味だけどよかった
パルプフィクションを製作したミラ・マックスの創始者。
ウキペディアのワインスタインの写真。こんな奴に迫られたら怖いに決まってる。パワハラに屈した自分を恥じ、苦しむことになる。泣き寝入りしている被害者はたくさんいて、そういう人に限って傷が深くて、人に話せない。
巧妙に被害者に泣き寝入りを強要する示談契約書。逆にこれが大きな証拠となった。
被害者の気持ちを察すると、やっと時間が経過し忘れかけていたのに、マスコミの取材によって再び傷をえぐり返される。退職したり、業界を変えてその後の人生をひっそりと送っていても、報復されるかもしれない恐怖に怯える。
SNSが普及し、アシュレイ・ジャッドが声をあげたから、ワインスタインを懲らしめることができたが、結果の如何にかかわらず、取材にあたった女性記者の正義感と罪悪感の天秤が気になった。どんなに丁寧に慎重に取材しても、彼女らを傷つけるので、信頼を得て、オンレコの許可を得るのは困難を極める。キャリー・マリガンとゾーイ・カザンの二人とも出産、育児をしながら頑張る役。旦那もまずまず合格点。「ニューヨーク親切なロシア料理店」の小さい息子二人をワゴン車に乗せて家出するゾーイ・カザンの印象が残っているのでなおさらだった。「プロミキシング・ヤングウーマン」が記憶に新しいキャリー・マリガン。デスクのトップがしっかりしていて、ワインスタイン側の揺さぶりに屈せず、男気があって、いいチームだった。
女性記者の二人がメインで、全体にあっさり味。ワインスタインの描かれ方はアホ過ぎる。もっと狡猾でパワハラ全開だったにちがいない。
パワハラには厳罰大賛成。
その名を暴け、屈するな!
ワインスタイン氏の性癖、愚行、裁判、判決
それらについては、もう周知の事実であるから、
その辺の件(くだり)については置いといて…✋
.
.
性被害に遭うと、被害者という立場なのに
好奇の目に晒され、何気ない言葉に
深く傷つけられるいわゆるセカンドレイプを
恐れ、声を上げられない。
.
.
本作では、映画業界に携わり続けたい
スタッフや女優たちにとって、
示談による泣き寝入りの悔しさと敗北感たるや…
.
.
オンレコを許可した女性たちの行動には
脱帽するとともに、彼女たちが腹を括るまでの
葛藤や覚悟にグっとこみ上げるものがある。
.
.
ハーヴィー・ワインスタイン
彼が手掛けた数々の名作の裏側には
ワインスタインのみならず、
黙認していた業界や関係者たちをも
一網打尽にし、厳罰を与えよ。と思うばかり。
.
.
ニューヨークタイムズ紙の女性記者2人の
気概に満ちた行動に心振るわされるし
2人の記者の夫たちのデキの良さよ。
夫たちの理解と許容量、協力、それらが
あったからこそ、あそこまで仕事に没頭する事ができたと
言っても過言ではない。
すばらしい家族の関係性だ。
NYTは嫌いだけど、称賛せずにはいられない。
2019年8月、ニューヨークタイムズ紙の編集主幹であるディーン・バケット氏の社内会議の音声が流出します。彼の発言は、「モラー報告書」で誤報が明らかになったトランプの「ロシアゲート疑惑」をあきらめ、「人種差別問題」を深く掘り下げて、反トランプの新しい報道ビジョンに掲げる事を主張するものでした。手っ取り早く言うと、「反トランプの偏向報道をしてきたが失敗した。次のネタは人種差別だ。」ですよ。
この内部音声の流出後、米ジャーナリストであるシャリル・アトキソンの発言が以下。
「NYT紙は、発生した真実のニュースの全てを、事前に決めた物語りに当てはめるつもりであり、発生した真実のニュースを型に当てはめて、人種差別の文脈で報道すると語っている。これが、彼らの【読者】が欲していることだと彼らは信じている。」
だからですよ。NYTの信頼度なんざ、今や地を這うレベルな訳で。日本の朝日新聞も、NYTに日本のネタを仕込み、「アメリカではこう報道されている」と、後日自分の新聞に書くマッチポンプ&逆輸入方式を取っていたりします。ネット時代に、そんな手は通じないってw
と言う事で、だいだいだいっ嫌いなNYTですが、この件についての報道に関しては称賛したい。
でもですね。
ある意味、皮肉なところはあるんですよ。
バイアスの掛かったNYTの報道を、はなっから嫌っていたトランプは、2016年の大統領就任後、NYTへの取材に対して非協力的な態度を取ります。それに対するNYT側の対策が「調査報道」。この映画に描かれた、ミーガン・トゥーイーとジョディ・カンターは、「調査記者」な訳ですよ。2017年、ワインバーガーの性暴行を暴くと言う成果を上げた後、NYT社は調査報道に更に力を入れて行くことを宣言するとになります。その後、成果が出たかどうかは、知らんけど。
映画本編の方はと言うと。
キャリー・マリガンが老けたよなぁ、ってのはあるんですが、魅力的なのは相変わらず。お嬢ちゃん役のイメージが、なかなか抜けないゾーイ・カザンですが、これは生涯代表作じゃないかと思えるほどの素晴らしさ。この2人に、オスカー上げて下さい!特に、ゾーイ・サガンが英国に渡り、必要だと言われてきた「Document」を手にした場面、財務部門の責任者から証拠を手に入れる一連の場面、被害者のうち二人が「実名を出しても良い」と連絡してきた場面、等々の演技には鳥肌が立ちました。
良かった。
とっても。
キャーリー・マリガン目当てで、リピート確定。
でも、やっぱり、NYTはだいだいだいだい大っ嫌いですw
天晴れな女性記者に完敗です!
女性新聞記者たちが苦難を乗り越えて勝利を掴む瞬間の感動は、まさにこの作品のハイライトでした。映画プロデューサーのセクハラを見事に暴露した瞬間でした。その映画プロデューサーの悪事の働き方は、用意周到に準備された契約書などを盾にしており、25年あまりの間にレイプを繰り返していたことが、白日の元に晒されなかった理由です。その間にどれだけの女性が苦しんだかと思うと怒りを禁じ得ません。しかし、二人の勇敢な新聞記者の地を這うような努力の積み重ねが、その悪事の大きな壁を突き壊したのでした。ある意味精神闘争の激しい攻防戦ともいえます。セクハラは人間の生み出す悲しい性でしょう。どんな時代でも組織があれば必ず発生するものと言えるかもしれません。人類は最初は女性しか存在しなかったところに、男性という生物が誕生しました。本来は女性を守るために発生したはずですが、腕力があるために戦争をし、男性社会を作り、女性が下に置かれたり蹂躙されたりしました。そして現代の会社組織でも権力を握った男性は、女性をコントロールしようとする馬鹿な輩が出てきます。性欲は人類の継続のためにあるものですが、突出した人間は、その性欲を満足させるために、現代の会社組織の中でも悪事を働きます。権力を持つとそれは容易に人間性のタガを外すものになるようです。しかし、やはり最終的には女性の方が本質的には強いのでしょう。ラストには鮮烈に女性が勝利します。映画プロデューサーは、2020年に23年の刑期が確定し、その男性に関係する女性86人が告発を行いました。女性新聞記者の奮闘により、一気に女性たちの真実の告発の歴史が開始されたのでした。天晴れな記者に完敗です。
勇気がある!
me tooにつながる話
淡々と取材をする女性記者
彼女には、家族や娘さん達もいる。
仕事に家庭
ハードワークだ。
ミラマックスで知ってるよ。
権力者の悪業には腹たちを感じます。
これからもでてきますやろ。
アシュレイジャッドが本人出演している。
だから
彼女はいっとき銀幕から姿を消したのか!
本より分かりやすかった。時間がすぐに過ぎるエンタメ性の高い作品
グウィニスの家で皆が集うエピソードは出てこなかった。でも彼女の家のシーンはあったので、
ストーリーの都合もあったのでしょうね。
ブラッドピットがプロデューサーで(プランB)参加しているのも興味深いですね。
映画業界以外でも大物の悪事に黙ってしまう組織の闇は世界に多く存在するのでしょうね・・・
【哀しき沈黙を、執念で抉じ開けた子を持つ2人の女性ジャーナリスト魂を描く。長きに亘り、唾棄すべき行為を繰り返して来た映画界の権力者の真の姿。今作が製作され、世界で公開された意義は非常に大きい。】
ー ご存じの通り、映画プロデューサーだった、ハーヴェイ・ワインスタインの性犯罪を告発した2017年のニューヨーク・タイムスのスクープは衝撃だった。
この唾棄すべき男の所業を、全世界に露わにした2人の子を持つ女性ジャーナリストの執念は、今作で描かれている通りである。-
◆感想
・冒頭、忌まわしきトランプのセクハラ疑惑が描かれているが、(あの電話の声はトランプに激似であった。)是非、ミーガン(今作では、キャリー・マリガン)とジョディ(今作では、ゾーイ・カザン)のお二人には、トランプの所業を露わにして頂きたいと思うとともに、巧い構成だと思った。
ー スクープの難しさを描いているからである。-
・ジョディは、ハーヴェイ・ワインスタインの毒牙に掛かった女優や、ミラマックスの関係者の証言を追い求め、西海岸まで車を飛ばし、イギリスに飛ぶ。正に”現地現物”である。
ー 今作の魅力は、ミーガンとジョディの執念で取材する姿である。ミーガンは産後鬱の中、ジョディは幼き娘を家に置いて飛び回る。それを支える夫の姿も良い。-
・ミーガンとジョディの上司である、ニューヨーク・タイムス編集長や、編集局次長のブレない姿勢と彼女達を支える姿も心強い。
ー ハーヴェイ・ワインスタインの脅しともとれる電話に毅然と対応する編集長の姿。部下を持つ者はかくありたいモノである。-
・ミーガンとジョディの執念により、最初は沈黙をしていたが、徐々に思い出したくない出来事を語るローズ・マッゴーワン、アシュレイ・ジャッド等の女優達や、且つてハーヴェイ・ワインスタインの下で働いている時に、被害に遭った女性達の哀しみと怒りが綯交ぜになった表情。
ー セクハラ、レイプという行為が、如何に長年被害を受けた女性の心や、働く環境を奪っていたのかが良く分かる数々の告白のシーンは、哀しい。-
・被害に遭いながらも、示談金を積まれ、更に機密保持契約で口封じをさせられていた女性達。それを組織ぐるみでしていたミラマックスの愚かしき真実が明らかになるシーンも、恐ろしい。
ー 劇中でも、数名の女性が口にしていたが、”負のサイクルを止める制度を作らないと駄目。”と言う言葉は、重い。-
<マスコミの過剰報道が問題になる事も多い、昨今であるが今作を観ると、矢張りジャーナリズムとは地道に取材を重ねる事で、真実に辿り着くのだな、という事を改めて感じた作品である。
今作の製作総指揮には映画製作会社”PLAN B"の名があり、エンドロールでもブラッド・ピットの名前がクレジットで流れる。この貴重だが、重い作品にキチンとハリウッドの大スターが関わっている事は、素直に嬉しかった。>
全20件を表示