「絶妙なバランスで女性の尊厳と調査報道の醍醐味を描く。」SHE SAID シー・セッド その名を暴け 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
絶妙なバランスで女性の尊厳と調査報道の醍醐味を描く。
ひとの感想はそれぞれのものだし、文句を言う筋合いは本当に一切ないんですが、この映画が地味であるとか、エンタメとしては退屈とか言われていることがさっぱり理解できない(これを書いている時点で、映画.comの他のみなさんのレビューはまだ読んでいません)。というのも、難しい題材を、よくぞここまでエキサイティングに描いたものだと感心しきりだったからだ。
原作を2時間強に縮める上で、必要最小限にまで刈り込み、それでいて登場人物たちの人間的な弱さや葛藤をちゃんと描き、なおかつ強大な相手に立ち向かう覚悟をビシッと伝えてくれる。調査報道自体が地道な作業の積み重ねであり、当人たちがそこにプライドを感じていることもよくわかる、お仕事映画としても秀逸。どこまで描くかで苦慮したと想像するが、あそこで映画を終わらせると決めたクレバーさにも惚れ惚れした。
そして当然ながら、現実の事件で直接関節被害にあったり、わが身を晒して抵抗した女性たちへの連帯と配慮が大切な作品であり、本当にギリギリのバランスをみごとにつかまえたと思っている。アメリカの賞レースでは無視されている形になっているが、これほどのクオリティの映画には絶賛しかない。
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