こんにちは、母さんのレビュー・感想・評価
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いろんな世代の岐路
寅次郎の周りで起きるようなドタバタを経て、ひとまずの一件落着へもっていくが、いろいろと風変わりで共感できるところは少なかった。
概説によると『母べえ(2008)、母と暮せば(2015)に続く「母」三部作の集大成』──とのことだが、どちらかと言うと東京家族(2013)や家族はつらいよ123(2016~2018)に連なるような家族に焦点がきている話で出来はけっこう粗かった。
メンヘラっぽい木部(宮藤官九郎)のエピソードはわりと突飛で、娘(永野芽郁)のセリフもなんかズレていて、昔の人が現代を描いているという印象が拭えなかった。寅さんの映画だったらしっくり収まるドタバタが現代劇では暴れる──という感じ。
言ってみれば新作でありながら既に懐かしい。そのこと自体に哀愁はある──とはいえ。
田中泯が演じているホームレスの老人は橋から川に飛び降りてB29の空襲を逃れたそうだが、現代ドラマにとってつけたような“戦争による泣き要素”が挿入されている感が拭えず、設定が浮いていた。
他にもしみじみできないエピソードが多かった。
ただしラスト近くで母の福江(吉永小百合)が次のようなセリフを言う。
『かあさんが怖いのはね、いつ死ぬかってことじゃないの。いつ歩けなくなって、いつ寝たきりなるかってことさ。なにもかも人のお世話になるっていうのは、どんなに情けないことだろうね。そういうことが起きる日がすぐそこまできているのに、まだ大丈夫まだ大丈夫って希望をつないでいる。・・・』
50歳を知命と言うそうだが、50くらいになると確かにこういう言説がよくわかる。
日本ではしぬのはだいたい癌か血管系といわれている。
癌だと闘病になるし血管系だと突然ぶったおれるし、予防していてもコントロールできずに、人様のお世話をこうむる身体になってしまうことが往往にしてある。
そうなってしまう前に自分の意思で逝ける法律や制度があったらいい──ということを、高齢化社会を描いている映画のレビューなどで何度か言ってきた。
山田洋次監督もそれが怖いんだと思う。だから、東京家族も家族はつらいよの三作品も、この映画もぜんぶ遺言のようなものになっているのだと思う。前述した吉永小百合のセリフも山田洋次の気持ちを代弁したものにちがいない。
というわけで気の晴れない映画だったが、寺尾聰演じる牧師の荻生さんが昭夫(大泉洋)がまだ若いって言うので、さらに気分が沈んだ。
『ほんとうに若い、まだいくらでもやりなおせる。わたしは焦がれるような羨望をこめてそう言うんですよ。』
現代社会がやっかいなのは50歳が若いってことでもある。それはいいことだ──と思うかもしれないがいざ50歳になってみるとこれからどうやって生きたらいいんだという昭夫みたいな気分になっているものだ。むろんそうならない人もいるのだろうが50歳になってさらに50年生きるって考えたら、福江や荻生さんのような80歳の心境にはなっていないわけである。
離婚し離職することにもなる50歳の昭夫は、今のじぶんを未来から顧みたとき「焦がれるような羨望」の時代になっているなんて思いもしないだろう。人生を知悉している人が書いたドラマなのはよく解った。
ところで加藤ローサを久々に見て、この既視感の出所を思い巡らしたら、かつて大泉洋と共演したシムソンズ(2006)に思い至った。
よくできたスポ根ドラマで大泉洋をはじめて見たのもあれだった。まとめ役加藤ローサ、幼馴染み星井七瀬、地味っ子高橋真唯(岩井堂聖子)、クールな藤井美菜と訳ありコーチの大泉洋。みんな活き活きと描かれていて、がんばっていきまっしょいに並ぶカルトだと思う。
母の恋愛(追記を読んで頂けると嬉しいです)
日本を代表する女優・吉永小百合。
日本一のモテ男・大泉洋。
そして日本を代表する名監督。
肩の凝らない、気持ちいい、
銭湯で垢を流したような作品。
一流企業の人事部長の大泉洋は、大学時代からの友人
宮藤官九郎のリストラ(肩たたき)をすることとなる。
一方で妻とは別居中、一人娘の永野芽郁は家出をして、
祖母・吉永の足袋屋に住みついてしまう。
さぁて、リストラは?
離婚問題は?
と言うお話。
母親の吉永はホームレス支援活動に取り組んでいて、
牧師の寺尾聰に気持ちが傾いている。
ホームレス役で田中泯が、これまた、いい仕事をする。
隅田川を背景にして屋形船や遊覧船が美しい。
そして吉永の日本家屋がなごむ。
ホームレス支援のNPOの事務所&溜まり場になっている。
社会問題もさりげなくはさむ。
この映画で意外だったのは
名脚本家の宮藤官九郎が重要な役で出演していること。
職務質問を何回も受けるほど人相が悪い・・・と自認していたのに、
けっこう《見やすい容姿》、
髪はさらさら、お腹はすっきりそして背も高い、
歯列矯正の効果が現れたのだろうか?
宮藤官九郎=劇団・大人計画
大泉洋=演劇ユニット・TEAMNACS
宮藤も大泉も音楽・演劇・映画と八面六臂の活躍なのに
しなやかさや逆らわない自然さを感じる。
そこは山田洋次監督のおおらかさにつながるるのかも知れない。
今の日本で安心して観ることの出来る《ホームドラマ》
深くはないかも知れないけれど、
懐かしくて心が安らぐのでした。
追記
1月21日午後のNHKラジオ放送で、山田洋次監督と高橋源一郎氏の対談を
聞きました。
【母の恋愛】
これは映画ではサラッと描かれていますね。
ところが山田洋次監督は90歳を超えて初めて告白しているのです。
母親が山田監督20歳の時に年下の弟と父親を捨てて他の男性と恋愛して
離婚して出て行ったそうです。
お母さんはその恋愛相手と死別して、また別の男性と恋愛。その人とも死別して、
帰ってこられたそうです。
自分はそうでもなかったが弟は相当にショックを受けていた。
90歳を超えるまで言えなかった母親の恋愛。
やはり山田洋次作品に色濃く反映しているのでしょうね。
大泉洋のように帰る家も母と肩を並べて花火を見る事も
叶わなかったのかも知れません。
それにしても今やっと話せるほど、重たい事だったのですね
ザ昭和
吉永小百合×山田洋次監督で描く現代の家族ドラマ。
申し訳ありませんが「無題」とさせて下さい。
監督:山田洋次、主演:吉永小百合という「鉄板コンビ」の一本として、劇場公開を楽しみにしていた一本になります。
実は、何も語れないのです。本作について、評論子は。
なんとなれば、自他ともに認める筋金入りの「サユリスト」としての評論子であってみれば。
つまり、サユリストは大方はそうだろうと思いますが、おおよそ2時間のあいだ、彼女の姿を見て、彼女の声を聞いていられれば、それ以上は何も言うことがないし、何も言えないのです。
その意味で、評論子には、映画作品として正当に評価をすることができない一本ということになります。
これから本作を見ようという方、観終わって他のレビュアーがどんな感想を持ったかを知りたい方には、まったく役に立たないレビューで、たいへん申し訳ないのですけれども。
ただ…映画の鑑賞スタイルとして「そんな人も世の中にはいるんだ。」ということをもし知っていただけるのであれば、唯一、評論子がこの駄文を映画comのサイトに上げる意味があることと思います。
あえて本作についてコメントするとすれば、評論子が住む北海道発のローカル・バラエティ番組に出演していた当時から、その柔らかい物腰の一方で、独特なキャラクターが冴えていた大泉洋も、本作では息子役として、とても良い味わいを醸し出していたと思います。
ふとした折に彼が垣間見せた「苦渋の表情」が、評論子には、今でも忘れられません。
今更ながらですが、こんな素晴らしい演技をする役者さんだったでしょうか。
評論子には、彼の出演作品を改めて観直してみたいと思うことのできた一本ということが、本作を観ての「プラスα」と言えると思います。
映画作品としての出来としては、「鉄板コンビ」のホームドラマとして、良作の評価が適切と思います。
大泉洋、枝元萌が自然で上手です!
この2人ずっと見ていたいけど、全体的に脚本が平坦。
東京下町のありがちな日常を少しの起伏で2時間みるのはしんどかった。
クドカン、永野芽郁ちゃんも説明台詞が多くて間合いが変。もっと演技うまいはずなのに。
小百合おばあちゃんはキュートだけど一人称「わたしはね」と連発するのが違和感です。
小百合さんは日本の宝だけど、そこを忖度なしの監督のもとで『脇役で』輝いてほしい。
寺尾聰牧師素敵。
まったりするにはいい映画なのかもだけど・・
「人間とは、生きるとは、社会とは」
正統派大船調を堪能
山田洋次監督と吉永小百合の母もの3作目。前2作と異なり、現代を舞台にした家族映画で、山田監督の真骨頂を発揮している作品となった。前作「キネマの神様」では、さすがに山田洋次も衰えたなと感じさせられたが、今作では、シナリオ、演出ともに熟練の技を見せている。
誰にでも起こりそうな家族の問題を丁寧に描き、クスッと笑わせ、ホロッと泣かせて、後味すっきり。まさしく正統派大船調の面白さを堪能させてくれる。冒頭のビルのショット、居酒屋のカウンター、足袋屋の看板など、あまりに小津安二郎を彷彿とさせていて、ちょっと驚く。
吉永小百合は相変わらず生硬だが、かわいいお祖母さんになっている。山田監督との相性はどうかと思った大泉洋が、期待以上に良い。永野芽郁、宮藤官九郎をはじめ、脇もみな良い。肝心の吉永小百合と寺尾聰のからみは、少し弱い感じがしたが。
いまだ健在ぶりを見せてくれた山田洋次監督、92歳。あらためて次回作を期待したい。
どうなんでしょう?
疲れた心に染み渡る
田中泯に涙が出た
優しさの溢れた作品
現代社会に生きるストレスと古き良き下町のコミュニティ
吉永小百合、驚異の初々しさ。
親が80歳手前、自分が50歳手前、バタバタしていた子育ても終盤に...
親が80歳手前、自分が50歳手前、バタバタしていた子育ても終盤に差し掛かり、ふと、親へ意識が向きだして、懐かしさも重なって連絡もせずに突然実家を訪れる。なんてこと特に息子はやりがちです。この歳の息子(娘も?)は、もはや会社に家族に色々と疲れているのですよ。疲れて布団の上でバタバタもがきたいのだけど、そんな姿は子供にも奥さんにも父親にも見せられない。世界で唯一見せられるのは「母」しかいないのです。そんな息子と母の関係を山田洋次監督がほのぼのとした物語にしてくれました。
全体的には「男はつらいよ」のテンポと演出。昭夫(大泉洋)は実家に帰れば寅さんだし、舞(永野芽郁)は母親嫌いで家出するちょっとスレた女子と思いきや、祖母のコイバナに目を輝かせ、父の布団を当たり前のように敷くおよそZ世代の女子とは思えぬ昭和っぷりに若き日の桃井かおりさんが重なりました。主人公中心で話している背後でも誰かが下町の日常を演じている抜かりなさ。全く安心して観られますが、アクションでもサスペンスでもないこの映画は若い世代には平凡にしか映らないかもしれません。私も若い時と今で同じ「男はつらいよ」を観ると感じ方が大きく異なりますので。
夫は早く他界し、失恋したけど紳士との恋も咲かせ、今後は離婚した息子(嫁姑問題無し)やかわいい孫娘と同居。息子も途中退社とはいえ50歳手前まで働き、大きな会社の部長クラスなら退職金も上々でしょう。母自体もお金に困って無さそう(金を工面するというセリフから想定)。地域の繋がりも厚く、三人で暮らすに十分な広さの東京持ち家一軒家など、下衆な話ですが老後の不安は無さそうです(笑)。
「男はつらいよ」の寅さんの妹・さくらを演じた賠償千恵子さんの昨年の主演作品「PLAN75」とは真逆の世界。若い頃から同世代の女子たちの羨望と嫉妬を集めてきた吉永小百合さんが、またまた同世代の女子?たちから嫉妬されてしまいそうです(劇中の話ですけど)。
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