「大企業の人事部長を務める神崎昭夫(大泉洋)。 もうすぐ50歳の大台...」こんにちは、母さん りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
大企業の人事部長を務める神崎昭夫(大泉洋)。 もうすぐ50歳の大台...
大企業の人事部長を務める神崎昭夫(大泉洋)。
もうすぐ50歳の大台だ。
妻とは別居、大学に通う娘・舞(永野芽衣)ともあまりうまくいっていない。
そんなある日、大学時代の同級生、同期入社の営業課長・木部(宮藤官九郎)から相談を受ける。
大学の同窓会、安い居酒屋チェーンはこの年齢では恥ずかしい、隅田川の屋形船を貸し切り、盛大に行こうじゃないか、ついては墨田区向島が地元のお前に屋形船の手配を頼みたい。
ま、実家で足袋屋を営み続ける母親(吉永小百合)に頼めば、伝手ぐらいあるでしょ、と。
知ってか知らずか、会社では人員整理の候補ピックアップ中。
木部がその候補に挙がっていることは昭夫は知っているのだが、業務上の秘密ということで洩らせない。
が、とうとう木部が知ってしまったから大騒動に・・・
という話で、松竹映画としては『男はつらいよ』が下火になった頃につくられた『サラリーマン専科』の流れの映画。
主役は、大泉洋演じる昭夫。
会社と友情との板挟み、加えて夫婦間の危機・・・と男性のミドルエイジクライシス映画で、母親・福江の恋物語は話の脇(宣伝では吉永小百合のハナシが中心のように喧伝されているが)。
その意味では、観る前の予想よりは面白い。
『男はつらいよ』で培った世間(社会)との軋轢の物語と恋愛コメディを、前者は大泉洋に、後者は吉永小百合に託した二面作戦。
脚本は功を奏している。
さらに、時折みせる、下町家屋のヌキの構図が抜群に上手く、美術も含めて、たぶん、現在でこの画が撮れるのは山田洋次監督組だけではないかしらん、と納得、ため息が出る。
で、映画はそこそこ面白いのだけれど、大企業に反旗を振りかざし、意地をみせた主人公の帰る場所が、母親の元というのは、いかにも前時代的。
さまざまな困難を個人や家族に押し付けてきた平成の世にモノ申してきた山田洋次監督が示す帰着点というには、安易すぎ(中心観客層に忖度したのかもしれないが)。
ということで、本作、観終わっての感想は、面白いけど、ちょっとムムムな感じ。
これには続編を期待したい。
『おはよう、母さん』で、母親と同居することになった無職50代の男性のハナシ(離婚の事後も含めて)、
『おやすみ、母さん』で、突然死んでしまう母親への惜別の情と、残った実家の処分と再出発を描くということで。
本作を現在進行形の物語にするか、やっぱり家族が良いいよね的な昭和の物語にするかは、このあとにかかっている、そう感じずにはいられない作品でした。
おじゃるさん、コメントありがとうございます。
「おやすみ」まで是非観てみたいものです。
なお、「おはよう」は小津安二郎作品へのオマージュも込めての命名です。