「もう山田洋次の時代ではないのにスゴイ」こんにちは、母さん Scottさんの映画レビュー(感想・評価)
もう山田洋次の時代ではないのにスゴイ
オープニングは大手町のビルなんだよね。「大手町をこんなにキレイに撮れるのか」と驚いた。話が少し進んでタイトルのところは隅田川で「小津安二郎みたい」という画なんだよね。カメラマンすごいな。
大泉洋が仕事でも家庭でも困って、吉永小百合が恋に落ちていて、それでテンヤワンヤでどうしようって話なんだけど、ちょっと古い感じがするの。登場人物の行動が「いま、その行動かな?」ってところがある。
大泉洋は吉永小百合の恋に対して「やめてくれよ」と言うんだけど、どうなんだろう。いまだと「死ぬまで恋した方がいいよ」ぐらい言っても良い気がするし。
永野芽郁の大学生はちょっと学生運動の頃の感じもある。
一番感じたのは、大泉洋の家に来たUberの大学生なのね。「大学四年なら就職活動してるのか」って聞くんだけど、いま四年で就活するのかな。三年生で終わってない?
そういうとこもあるんだけど、納得感もあるの。
登場人物の気持ちが、ちょっと飛ぶところあるんだよね。永野芽郁が「嘘よ。みんな嘘ばっかり」って言うところとか、大泉洋が「こういう仕事は裏切らないから」と言うところとか。少し脈略ない台詞に思えるの。
でも「人間って、こういうものかもな」って納得してしまう。捕え方が深いんだろうね。
大泉洋は大手町の現代的なビルに本社を構える会社の人事部長で50前だから、超エリートなのね。それでも最後に宮藤官九郎を救って会社を辞める決断をする。
普通は、しないよね、そんな決断。でも「首を切る方も大変ね」「逆なら良かったのに」というやり取りも振ってあって、そちらの方がいいんだよというのが、作品を通じた考え方なの。
大泉洋の離婚もそうなんだよね。永野芽郁のお母さんが「お父さんみたいな会社に勤めるか、お父さんみたいな会社で偉くなりそうな人のお嫁になるしかない」と永野芽郁に言ったことになってるけど、お母さんはその理屈で大泉洋を選んでるんだよ。
でも最後は、好きな人がいて、そちらに走る。実利より気持ち優先。
吉永小百合の恋は「好きって言ってもらうの」と述べていたのに、寺尾聰が出発するときに「私も北海道に連れて行って」と言っちゃうんだよね。観てて『ベタすぎる』ぐらいの感覚だったんだけど、隣で観ていたマダムの心は掴んでいた。声が出てたもん。やっぱり、うまいんだなあ山田洋次と思ったね。
もう山田洋次の時代じゃないなと思うけど、それでも唸るところはあって、永野芽郁も可愛いし、観ても良いかなと思うよ。