「みんな、汚穢から生まれて汚穢に帰るんだ... ハリウッドの特殊効果の第一人者が三十余年を費やして己の脳内をぶちまけた阿鼻叫喚のストップモーションアニメ映画」マッドゴッド O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)さんの映画レビュー(感想・評価)
みんな、汚穢から生まれて汚穢に帰るんだ... ハリウッドの特殊効果の第一人者が三十余年を費やして己の脳内をぶちまけた阿鼻叫喚のストップモーションアニメ映画
旧『スター・ウォーズ』シリーズに始まり、『ジュラシック・パーク』や『スターシップ・トゥルーパーズ』シリーズの特殊効果を担った鬼才フィル=ティペットが1990年に着想して以降、自宅をスタジオとしつつ、クラウドファンディングも重ねて遂に作り上げた全編ストップモーション・アニメによる地獄絵図にして彼自身の脳内宇宙そのもの!!
グロテスクな生物たちの饗宴に、巨大で暴力的な機械群に撒き散らされる命の血飛沫・・・全編セリフ無しの物語ゆえにただただ目の前で繰り広げられる狂気の世界にクギ付けになれます。
非常に簡単に言ってしまうと"地獄めぐり"をただただ眺めて刮目して楽しむ作品です。
描写や展開それぞれの意味性を考えるのではなく、目の前の異形がどのように動き回ってどのように"中身"をぶちまけるのか…そんな作品です。(*´艸`)
デジタル全盛の世の中に気の遠くなるような歳月を要して一コマ一コマ紡ぎ出された画面は細部まで凝りに凝っており、またそれだけ造り込まれた事物やキャラキターを盛大に弾けさせるので、エコとかSDGsとかいう概念にも真っ向から喧嘩を吹っ掛けているような異端中の異端作。
意味やメッセージを考えるような作風ではないですが、上記のような細密でサイケなビジュアルに加えて耳障りな金属音のノイズ(さながら『鉄男』のような)が奏でる不協和音音楽との相乗により、何度でも観たくなるような危険な中毒性も秘めています。
これだけの大作をほぼ独力で作られていたのでそりゃ~30年は掛かるだろうな、というところですが、もしこれが2000年前後にフルで完成して広く世の中に出されていればアナログからCGデジタルへの移行がもっと緩やかだったかもしれません。
それぐらいのアナログの可能性と拡がりを感じさせる作品です。