「不死という反則技」オールド・ガード2 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)
不死という反則技
アバターに『生身でないジェイクやノームの戦闘は生死の危機感(説得力)に欠ける。反して生身なトルーディはカッコいい。』と書いたしGHOSTINTHESHELLで気になったのは電脳化義体化するまえのトグサだった。フリーレンがいいのは「人間の寿命は短いってわかっていたのに…なんでもっと知ろうと思わなかったんだろう…」と自戒するからだ。
つまり死なないものと死ぬものが併存するなら偏頗が生じるという話。死ぬもののことをしっかりと理解させないとどんなに魅力的な不死を描いても無理なわけで。
オールドガードにあるどうしようもない軽さも結局あんたら死なないんでしょというところに尽きる。サバゲーと変わんないんだから死闘の合間に余裕なジョークも交わすだろうさ。
いや、そう思われると思ったからアンディを不死じゃなくしたんだ──というのが今作ツーだが、時すでに遅しというか、すらりと長身でモデルみたいな、みたいなというか実際モデルでもあるシャーリーズセロンが屈強な野郎どもをばったばったと倒しまくって、不死じゃなくなったけど弾は当たんないし、間一髪でぜんぶかわしちまうし、なんなんこれという感じ。かならず「何世紀も」が入るジョークも白々しいし、不死から定命に変わった者の死が悲哀ポイントになっているのもあざと感ばりばりだった。
だいたい冒頭からして海の底に沈んでいた鉄の処女をひっぱりあげて顔を開けるとプパッとかいって女が息をするんだが、いやこれぜったいやりすぎだろという始まりで、中世の鉄の処女の見たことある人なら、いやこれ拷問器具つうより即死でしょという鉄串がいっぱい付いていて、そこに入って海の底に沈めれられて、何世紀後かに引っ張り上げられて、顔開けたらプハッとかいって女が息するのって普通に考えてどうなのよ。不死だから大丈夫なんだぜってことで通しちまうのかよ。
そんな調子でこのフランチャイズ自体がすでにばかっぽくて、なんか見るにたえなかった。すいません。
このばかっぽさはシャーリーズセロンがきれいなほど増していくのだが、ネットで拾った2025/07/04付のセレブコラムに『49歳シャーリーズ・セロン、26歳男性とのワンナイトの関係が「最高だった」と告白』という見出しの記事があって、元来非現実的な人物を非現実的な主人公に祭り上げたところにオールドガードの敗因があったような気もする。
ほかのハリウッド俳優同様にLGBTQ及び多様性庇護で養母でトランプ嫌いなのはともかく、年とらないし役にがっつり没入するからセロンを抜擢したのはわかるが、これはたぶんセロンじゃないほうがよかった気がする。セロンはきれい浮きするからYoung Adultやダークプレイスのように歪んだ役のほうがいい。
いったんばかっぽさを感じると話が入ってこないが、話そこそこで格闘ばっかりやっているので、なにやってんだきみたちはという印象だった。メイキャップ部隊と格闘監修とスタントが入り乱れる現場を想像すると尚更醒める。
とはいっても冒頭に鉄の処女よりも「前回までのあらすじ」がほしかった映画で、案の定ネトフリの映画TOP10「カッコ日本」に新入荷のこれと旧作のオールドガードがランクインしており日本人は律儀であると思ったが、映画はイーオンフラックスの方がよっぽどましだった。
imdb5.2、RottenTomatoes25%と42%。