「巨匠監督誕生までの前日譚!! スピルバーグ監督の少年期の葛藤と,モラリストたろうとした両親の苦悩をフィルムが淡々と捉えた青春愛憎映画」フェイブルマンズ O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)さんの映画レビュー(感想・評価)
巨匠監督誕生までの前日譚!! スピルバーグ監督の少年期の葛藤と,モラリストたろうとした両親の苦悩をフィルムが淡々と捉えた青春愛憎映画
巨匠スティーヴン・スピルバーグが映画監督として頭角を現す前の、少年期における人間形成の過程を描くドラマ映画であり、少年期の彼の投影であるサミー・フェイブルマンの成長が主軸ではあるのですが、主演はミシェル・ウィリアムズ演じるサミーの母リアであり、彼女が夫とともに"良き親・良き配偶者"であろうと努めつつもままならない現実に傷付き悩む等身大の大人たちの物語でもあります。
また、幼年の折に映画の魅力に取りつかれてのめり込む豊かな好奇心の発露と成功体験、両親との相克や同年代の少年からの被差別によるコンプレックスと衝突、そして淡い恋…等々、実に瑞々しいジュブナイル的青春映画としても胸を打つ一本でした。
ホームドラマとして、そして青春映画として非常に楽しめたのですが、スピルバーグ監督は大衆を楽しませるエンターテイナーとしての側面がかなり強いということが本作であらためてよく解りました。
つまりは、己の存在理由を掛けて、世の中への挑戦状のように自身の内奥のマグマを叩き付けるような内省的な作家とは対極に位置するであろう、ということです。
職業選択に際しても、母の後押しで父からも映画業界に進むことを全面的に支持されており、その点、両親や周囲の反対を押し切って己の信じる道に飛び込む類の人生形成を経た人のギラつきのようなものは感じられません。
もちろんそれが悪いということではなく、それがゆえに広範な人々が享受出来る娯楽のチャンネルを掴みえたということでしょうが、そうした創作活動の源泉を垣間見られたという意味でも意義深い作品でした。
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