「【”燈火には神様がいる。”香港の2010年の建築基準法改正以来「百万ドルの夜景」を彩った多くの燈火が消えて行く中、亡き夫がやり残した仕事を完成させる妻と弟子の姿を、情緒溢れるトーンで描いた作品。】」燈火(ネオン)は消えず NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”燈火には神様がいる。”香港の2010年の建築基準法改正以来「百万ドルの夜景」を彩った多くの燈火が消えて行く中、亡き夫がやり残した仕事を完成させる妻と弟子の姿を、情緒溢れるトーンで描いた作品。】
ー 学生時代、中国に放浪の旅に行く時に、貧乏だったのでいつも船便で香港経由で中国に入国した。夜の香港の街は、原色の色鮮やかな多くの燈火が灯っていたモノだ。
だが、今作のフライヤーによると、2010年の建築基準法改正以来、この2-3年で9割もの燈火が違法とされ、消えているそうである。-
■腕利きの燈火職人だった夫・ビル(サイモン・ヤム)を亡くしたメイヒョン(シルヴィア・チャン)。
夫の弟子だと言うレオ(ヘニック・チャウ)と工房で出会い、彼から「師匠のやり残した燈火を完成させよう」と説得されたメイヒョンは、燈火作りの修行を始める。
そんな時、娘のチョイホン(セシリア・チョイ)から香港を離れてオーストラリアへ恋人と移住すると告げられる。
◆感想<Caution! 内容に触れています。>
・個人的に好きな、情緒感溢れる作品である。消えゆく香港文化への郷愁も感じさせる。
・失われつつある光の芸術を追い続けた燈火職人とその妻の愛情物語でもあると思う。
・娘のチョイホン(虹)は最初は、借金塗れの工房を考え、燈火再現に反対するが、幼き時に父から言われた”燈火には神様がいる。お前がお母さんのお腹にいた時に、燈火の下で祈って居たらお前が産まれたんだ。”という言葉を父の姿と共に、思い出すのである。
■独りで暮らすメイヒョンの思い出の中は、何時でも若き夫の姿と燈火のシーンで満ちている。
哀愁を感じさせると共に、燈火の下でのプロポーズを始め、美しいシーンの数々に魅入られる。
<ラスト、メイヒョンとレオ達が作った”妙麗”と言う言葉が中心にある、孔雀のような燈火に光が灯った時に、メイヒョンとレオ、チョイホン、そして制作を依頼した女性と彼女の認知症の父がやって来て、その燈火を見るシーンは美しい。
極彩色の燈火が、彼らの未来への一筋の希望を照らし出しているように思えたシーンでもある。
実在の燈火職人の数々が登場するエンドロールも、印象的な作品である。>