父は憶えているのレビュー・感想・評価
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スクリーン越しにキルギスの大地に触れられる喜び
キルギスの小さな村を舞台に、ロシアへ出稼ぎに行ったきり消息不明だった父の帰郷を描いた物語。23年ぶりに再会した父は記憶や言葉をすっかり失っていた。そしてふと気づけば家を抜け出し、ただ黙々とゴミを拾い続ける日々・・・。我々の頭にまず湧き上がるのは、父に一体何があったのかという疑問だが、しかし本作はそんな過去には目もくれず、「今この瞬間」だけを見つめる。すなわち、父の行動に振り回されつつも、なんとか前に進もうとする家族の姿を穏やかに、丹念に、浮き彫りにしていくのだ。背景にはキルギスの雄大な景色と、便利さからは程遠い村の環境設備、厳しさと共にある経済状況がゆったりと広がる。そんな中でも孫の少女はいつも好奇心旺盛な笑みを絶やさず、窓辺には可憐な花が咲いている。スクリーンを介してキルギスの文化や人々の心に触れられるこの喜び。彼ら家族が何を抱きしめ未来を生きようとしているのか、しみじみと伝わってくる。
時間は平等に流れる
普段は観る機会がないキルギスの映画です。ロシアに出稼ぎに行ったまま行方不明になっていた父は、事故によって記憶と言葉を失い、23年ぶりに帰って来ました。そして、家や村をゆっくり掃除し続けるだけの毎日を送り始めます。父からは何ら積極的に働きかける訳ではないのに、家族や村人の関係が、彼の存在を触媒として少しずつ軋み始めるのです。父は、23年間に人々が何とか誤魔化して生きて来た過去への悔恨の象徴なんだろうな。自分達が失った物、しでかしてしまった事を彼を通して突き付けられるのでしょう。 のんびりしている平原の村にも時間は平等に流れているのです。
長年行方不明だった父が、郷里のキルギスに突然戻ってきたものの、記憶...
長年行方不明だった父が、郷里のキルギスに突然戻ってきたものの、記憶と言葉を失っていて。 人の関係が変わっていたものが、彼の帰還によって揺り動かされたり、 記憶を思い出させようと、周囲が四苦八苦したり、 雄大で寒々しい景色、人々の思いや表情の移ろい、 父が一度だけ見せた、歌声への反応、 静かながらも、凄い見ごたえでした。
劇的な事件は起こらない映画
23年ぶりに帰ってきた父親が記憶も言葉も失っていた、という以上の事件は起こらないし、派手なB.G.Mもかからないドキュメンタリーのような映画という点で成瀬巳喜男の『あにいもうと』を思い出しました。
イスラム文化圏で旧ソ連圏、中央アジアの乾いた風景は日本とは明らかに異なって共通項もありませんが、キルギスの人たちはどこか日本人に似ていて、23年もの時が流れれば、かつての故郷も様変わりしているのはどの国でも似たような事情なのだと思います。
同じ監督の『旅立ちの汽笛』で主演を張った息子さんが今作でも息子の役で好演しています。最初のうちは事情も話さず、ただ村中のゴミを拾い集める父を恥ずかしいと思っていたのに、いつかそんな父を受け入れて、母の再婚を止められなかったことを謝罪するまでになっていくのを見ていると、お国が違えど人間の幸せというのは普遍的なものなんだろうなと思わされました。
最後、やっぱり黙々と木を白くする(キルギスの風習だそうですが)父が、戻ってきた母の歌声を聞いて空を見上げる表情に、この家族の再生という希望を見出して温かい気持ちになりました。
静かに心に染み入る名作です。
初キルギス
23年前にロシアへ出稼ぎに行ったまま行方がわからなくなっていたザールクが、キルギスの村に帰ってきた。ザールクの妻・ウムスナイは再婚して家を出ていた。記憶を無くしていたザールクは村のゴミを黙々と片付けはじめた。そんな話。 キルギスという国がどこに有るのか鑑賞前に調べておいたが、カザフスタンの南、中国の西という地理的な知識だけで本作を鑑賞した。 イスラム教かぁ、女性は大変だろうなぁ、風景は綺麗だなぁ、ゴミ問題はどこでも有るんだなぁ、などとボーッとスクリーンを眺めていたらおわった。 初キルギスで、それだけで観る価値が有ったと思う。 元ソ連に入ってたから、今でもロシアの影響はあるのかな?なんて思いつつ、ウクライナへ連れて行かれなくて良かったね、など、そんなことも思った。 ちょっと眠くなったけど。 それと、邦題は???だった。
キルギスの文化を知る映画
この邦題は適切なのだろうか?と観終えて率直に思いました。 最後まで疑問でしたが、記憶は無くしても体は憶えている的な? そんな意味合いなのかもなとも。 映画自体は、ロシアから帰ってきた父を軸に描かれる 群像劇になっていて、独特の”間”に若干眠気を誘われつつも、 キルギスの生活、文化、宗教など、興味深く観ることができました。 エンターテインメント要素はないので、観る人を選ぶ映画と思います。
日本に高い関心と好意を寄せる国、キルギス!
聞いてはいたけれど、何と言っても驚いたことは、キルギスの人たちが日本人および朝鮮民族と驚くほど似ていること。それも男性が女性より似ている気がする。思い出されるのは、80年代に大阪医大の松本先生という方がGm遺伝子を研究し、シベリアのバイカル湖畔に北方系モンゴロイドのオリジンがあり、日本人のルーツでもあることを明らかにされていたことだ。当然、ウイグルやキルギスはバイカル湖に近いので、日本人と似ていてもおかしくはない。今日では、この研究は、ほぼ忘れられていたのだが、近年、金沢大学を含む国際研究チームが、これまでの常識を覆す研究成果を公表し、いわゆる弥生時代には北方系のモンゴロイドが、古墳時代には南方系のモンゴロイドが、それぞれ日本列島に移ってきたとのデータを発表された。これから解明がさらに進められる必要があるが、いずれも、キルギスの人たちと私たちが似ていることを支持する結果だ。おそらくそれを反映してのことだろう。映画の中で出てきた小型トラックは韓国のH社製、乗用車は、かの日本の誇るLブランド。キルギスから日本に寄せる高い関心と好意が感じられてならなかった。 もう一つ気になったことは、アクタン・アリム・クバト監督自身が演じた主人公ザールクは、おそらく外傷による脳器質性精神障害(高次脳機能障害)を患っているらしいことだ。それも多分、交通事故後の。髪を長く伸ばしていたことも、それを裏書きしている。エピソード記憶(身体で覚えた記憶)を反映して、ロシアでもともと、あるいは事故後の訓練で、ごみの片付けをしていたのだろう。もしかすると、木の根元を白く塗装していたことも(虫よけ?)それだろう。長男のお嫁さんは、正しい知識を持っているようだった。 それにしても、高速道路や鉄道はもちろん、多くの人が(私よりも)スマホを使いこなし、コロナの知識も十分持っているように見えた。 もう一つの大事なポイントはイスラム教だろうけれど、日本にとっての仏教と同じくらいの歴史があるだろうから、今度、キルギス映画を観るときのために、とっておこうと思う。
何も解決しない映画
お父さん
最後まで一言も発せず…
何を憶えてるのか
何も憶えてないのか
一切判明しませんでした
伏線回収どころか
主線も回収できていない
何を言いたいのか
よく分からない映画でした
本年ワーストの映画です( ; ; )
冒頭の木々の幹と張り巡らされた根っこは、人の脳神経なのではないかと読み取った。記憶は確かにそこにある。
声を発することさえなくても、風の音や匂い、友人たちとのふれあいの中で気持ちは通じているのだろう。 古いしきたりとイスラム教の教えに縛られても懐かしい人はそこにいた。 アクタン・アリム・クバト監督のワンカットは幾分長すぎるきらいがあり、子どもの扱いも日本の古い映画のような優等生的扱いで面白くない。構図も見ていて不自然に感じる点も多い。 それにしてもウムスナイがあき竹城に見えてしまって・・・(汗
床いっぱいのパンと紅茶
父親役の監督と息子役の役者さん、そっくりだと思ったら本当の親子だったのか。
床いっぱいのパンと紅茶が美味しそうな映画である。
行方不明になって死んだと思っていた夫ザールクが23年ぶりに見つかったが、妻はすでに再婚していて…というキルギス版「ひまわり」だが、戻ってきた夫は記憶喪失だし一言もしゃべらないしあくまで映画は息子視点。しかも妻の再婚相手が村でも嫌われているモラハラクソ男。妻は子育てプラス義父のケアで疲れてきたし、娘は初めて会う祖父に懐いているが何故か父は娘を連れてゴミ拾いばかりしてる。
息子や元妻が懸命に夫の記憶を取り戻す話なのかと思いきやそうではない。かつての夫婦二人のドラマが叙情的に挿入されるのかと思ったらそうでもない。
これはかえってきたザールクを中心に周りの人の変化を描いているドラマなのだ。
たとえ記憶をなくして一言も話せなくても昔と変わらずザールクを愛している(元)妻ウムスナイ。
イスラム教においては夫が「タラーク」と3回唱えるだけで離婚できる。妻から離婚することも一応可能らしく「クル」と言うらしい。この場合は、すでに妻が夫から貰っている婚資相当額を返還する必要があるらしく容易なことではないのかもしれない。夫にとっても不名誉なことなのか、そのあたりの背景をもっと知っていると本編をよりよく理解できるのだろうか。いずれも男女不平等なことは本編でも明らかだ。
「女は厳しくしつけろと言ったでしょ」と息子に迫る母親という何ともミソジニーを内面化した姑の台詞がなんともえぐい。
記憶がなくてもザールクに会いに友人達が度々訪れるのを観ると、ザールクは村でも好かれていたんだろうな。
ゴミいっぱいのキルギスだけど、ザールクのおかげで村は少しずつ綺麗になる。
ラストでそれまでの黒一色とは打って変わって明るい色の服を纏うウムスナイに希望を感じる。クソ夫と離婚できているといいな。
キルギスという国そのものを知らなかった。
今回、映画を見て、確認するまで、キルギスという国がどこにあるのかさえ知らなかった。 私は見る映画が、ほぼ日本、アメリカ、フランス等の国に限られていたが、最近いろいろな国の映画を見る機会が増えた。(といっても、まだまだ少数だが) 知ってどうする(どうなる)というものでもないが、知らない国の様子を知ることができるのは、映画の大きな長所だと感じた。 当たり前だが、どこの国であろうと、人間の感情は変わらないと思った。
もう少しどうにかなった気もするけど、 キルギスのちょっとした習慣と...
もう少しどうにかなった気もするけど、 キルギスのちょっとした習慣とか日常を知ることができて良かった
期待度○鑑賞後の満足度◎ 全てを憶えているのはキルギスの大地、木々、そしてそこを渡る風…ということかな…
①冒頭に撮されるの異様に白い木々。何だろう、と思っていたらラストで種明かしされる。お父さんは憶えていたんだろうか。ロシアでやっていたからだけだろうか。 ②キルギスの美しい景色の中に突然現れる広大なごみ捨て場。はじめはちょっとドキッとする。
55点ぐらい。
ここ最近、バフティヤル・フドイナザーロフ監督の作品を観ていて、中央アジアに興味があり観てみました。 感想は、眠い… 静かで、ほとんど抑揚なく、淡々としてるので、眠くなります(笑) いい所は、キルギスの、美しい自然、のどかな日常、異文化。 樹木の根で始まるオープニングが美しくて印象的だったんだけどな… 最後も、えっ!!こんな終わり!?って終わり方です。 作家性なんだろうけど… エンドロールが始まると自然音が流れてますが、後には何もないです。 お急ぎの方は、お帰り頂いて結構です。
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