「ミア・ゴス大暴れ」Pearl パール kozukaさんの映画レビュー(感想・評価)
ミア・ゴス大暴れ
近年米国発のネオ・ホラーの傑作が次々と登場しているが、その中心となっている製作会社A24が、またしてもユニークでオリジナリティの高いホラーを製作した。
3部作となる1作目は2022年に公開された「X」で1970年米テキサスが舞台であったが、2作目の今作は時代が遡り1918年が舞台で「X」で殺人老婆だったパールの青年期、いかにして殺人鬼パールが誕生したかの前日譚になる。
映画スターに憧れるパール(ミア・ゴス)は厳格な母と病気で全身麻痺の父とテキサスの農場で暮らしている。
夫は戦地に出征中で、父の介護と家畜の世話に明け暮れている。
パールの息抜きは家畜の世話の最中のミュージカルスターの妄想や街へ使いに出た時の映画鑑賞など。
ある日、ミュージカルショーのオーディションが街に来ることを知り、参加を母に相談するが、母はパールの映画スターの夢を罵倒し、参加は許さない。
この辺りから、抑圧に対する狂気が沸騰し始め、殺人鬼が覚醒する展開になる。
まずホラー映画なのだが、映画のトーンが「オズの魔法使い」や「メリー・ポピンズ」といったハリウッドの古き良きミュージカル映画にある、テクニカラー風の極彩色の色調を使い、夢のような世界観を表現する。
しかしこの映画の最大の魅力はミア・ゴス演じるパールのコケティッシュかつ常軌を逸した殺人鬼ぶりだろう。
ミア・ゴスのオンステージと言ってもいいくらい暴れまくる。
傑作シーンはいくつもあるがオーディションのダンスシーンは戦場をバックに大砲と花火が炸裂するブラックファンタジーは必見。
ラストのパールの表情はホラー映画史に残る名演技だ。
監督・脚本は前作同様タイ・ウェストが務め、今作ではミア・ゴスが脚本と製作総指揮も担当と正に大暴れ。
3部作の完結編の「MaXXXine」が製作中であり、公開が楽しみだ。