「銀河鉄道の脱線」銀河鉄道の父 critique_0102さんの映画レビュー(感想・評価)
銀河鉄道の脱線
GWということもあり、会場は多くの人で溢れかえっていた。こんなにも多い人を映画館で見るのは久しぶり、というよりもあまりにも珍しい光景である。
コロナ禍でこの映画館で観た『ジュディ』は自分一人ということもあったことを考えると、WHOのテドロス事務局長による新型コロナウイルスの感染拡大に関する「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言終了を身をもって体感したということになるだろうか。
しかし、周りを見ると、高齢者があまりにも多い。このGW、他に行くところもなく、彷徨うその行方は映画館だったということか。まぁ、自分も夫婦50割引でチケットを購入したその中の一人だから、とやかく言うことはするまい。でも、この雰囲気は、つまらぬところで、「あえて」声を出して笑ったり、どうでもいいところで「啜り泣く」ようなお年を召した方が多いこと、そんなことが気がかりになりながら着席したのだった。
予感は当たっていた・・・(佐野元春ばりのセリフが口をつく。まぁ、その世代だから許してね、っていうか、周りも、そうだし。。。)
映画のつかみで、なんで面白くもなく場面で笑うん?
(思い切り、この後、中略)
映画のラストに近い部分で、なんでこの場面で泣くん?
的な、方々が多いこと。
それを冷めた目で見ていた(実際には見えないので耳で聞いていた)自分としては、予感通りのことを確信したのだった。
「つまらない」
この映画で言いたかったことって何?
政次郎と賢治の親子物語。・・・気持ち悪いストーリーにしてしまったのは脚本のせい?
賢治のバカっぽさ。・・・それって狙いじゃないよね。この賢治、薄い。
トシとの情愛。・・・森七菜を押し出したかったの?
プレビューを見たら、いつものように「提灯」レビューが多いのにうんざり。
この映画は、どう頑張ったところで、父、息子、娘(妹)、そして母。どの視点から見ても描き方が物足りないということに尽きる。
しかし、
真っ当な意見もあり、少し安堵。良心的な真っ当な映画ファンはいるんだね。『キネ旬』的な。・・・・休刊にならないこと願いますよーー。それだけが、今の心配。(「脱線」しましたwww)
# 感動の「脅迫」に、みなさん、乗ってしまってはいけません。こんな映画で。
# 「あめゆじゅ とてちて けんじゃ」で妹との関係性にフォーカスした方が良かったかも。誰もが知っている事実だからこそ、自分なりに解釈を入れ込むことができる。
# 「銀河鉄道の母」の方が、さらに面白かったかもね。母イチの視点でナラティブ構成した方が映画としては出来が良くなったかもしれませんね。
# 父親に最期の場面で「雨ニモマケズ風ニモマケズ雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ丈夫ナカラダヲモチ・・・」一番やってはいけない最悪の脚本。これには参った。
# 父親との関係から死後発表の「銀河鉄道」に固執するあまり、映画のラストシーン、もはやコメディ。自分なら同じような死後発表なら『ツェねずみ』の「私のような弱いものをだますなんて!償うてください、償うてください」で、そこに至ってしまった賢治の心を語りたいけどね。生前なら『オツベルと象』。日蓮宗に持ち込む「下手くそな展開」よりも、断然いいと思うけどね。
「こんなにみんなにみまもられながら
おまへはまだここでくるしまなければならないか
ああ巨きな信のちからからことさらにはなれ
また純粋やちひさな徳性のかずをうしなひ
わたくしが青ぐらい修羅をあるいてゐるとき
おまへはじぶんにさだめられたみちを
ひとりさびしく往かうとするか」
この映画の目的は
賢治を愚弄することにあったのだろうか。そうではないと思いながら、こんな映画を世に出している人々を恨む。