「脚本の面白さ」「ウルトラセブン」55周年記念 4K特別上映 Scottさんの映画レビュー(感想・評価)
脚本の面白さ
ウルトラセブンのエピソードから5話が選ばれて上映されんの。「なんで、この5話?」感もなくはないけど、どのエピソードもまあまあ面白いからいいんだよね。
オープニングのキャスト観てたらキリヤマ隊長が先頭で、役者の格として中山昭二さんが上だったのかなと思ったよ。
《宇宙囚人303》
ホラーっぽいの。怪獣の姿は一部しか見せずに、どんどん人間が殺られていっちゃうっていう。
いざ現れた怪獣はそんなに恐そうでもないのが肩透かしなんだけど。
セブンがやっつけて、最後にダンが『正義は一つだ』って断言するんだけど、この辺が、大きな物語がまだ生きていた時代の話だと思ったよ。今だと『悪にも悪の事情がある』みたいな話の方が多いしね。
《超兵器R1号》
核開発競争がモチーフの話だね。
ダンの『血を吐きながら続ける、悲しいマラソンですよ』という言葉や、アンヌの『人類はそんなに愚かなんでしょうか』という言葉でR2号の開発を止めるってラストで、めでたし、めでたし……って、そんなわけねえだろ!と思ったな。
これ人類は『生物はいない』って前提でギエロン星をR1で爆破してんだよね。『そしたら生物いました!』って話で、ゴメンで済む話じゃないんだよ。本気でお詫びすんなら地球を爆破しないと。
それでギエロン星人が地球を攻めてくるんだけど、セブンがやっつけちゃうっていう。ひどいよね。全部悪いの地球人じゃん。
それで『生物はいない』って宣言した科学者が『私はギエロン星人を憎む気にはなれません』って言うんだけど、そうじゃなくて土下座して謝れって。『万死に値することをしてしまった』って話だろ。
この辺の都合の良さがセブンが作られた時代っぽくて良いなと思いました。
一方で、R1という強い兵器を持った強い相手には弱者は蹂躙されてしまい、文句も言えない。実はR1を持つことには正当性があるのではというテーマと真逆のことも感じたな。
《盗まれたウルトラ・アイ》
地球征服を企むマゼラン星人がウルトラ・アイを盗み『任務完了、迎えをよこせ』と打電するんだけど、マゼラン星の人々はウルトラ・アイを盗んだマゼラン星人もろとも地球を破壊することに決めたっていう酷い話だね。それを聞いたマゼラン星人はウルトラ・アイを返してくれる。
ウルトラセブンの時代は、まだ、権力というかでっかい力を持ったものを信じてない感じなんだな。
《史上最大の侵略》(前編)(後編)
ウルトラセブンの最終回はいつも号泣するんだけど、今回は比較的落ち着いて観たよ。
これ展開と演出がすごいんだよね。だから号泣させられるっていう。今回はシーケンスをけっこう覚えてたから耐えられた。
『もう一回、変身したら死ぬぞ』と言われているのに、セブンは変身してしまう。仲間を守るためなんだよね。炎に包まれたキリヤマ隊長たちを観て、救うために変身する。
診療所でレントゲン検査されそうになってダンが抜け出したシーンで、史上最大の作戦で基地中がてんやわんやになってる中でアンヌが『ダン!』って出てくるシーンもカッコいい。
そして少年に助けを求めると、少年がウルトラ警備隊に憧れてるのもいいね。
そんななか『彼だってウルトラ警備隊の一員だ。自分の命より地球を救うことを優先するはずだ』を聞いてダンの心が固まる。
そこに出てくるアンヌ。『地球人だって宇宙人だっていいじゃない』はいつ聞いてもすごい。宇宙人とか関係ないんだよ。
戦うセブンを見て『ウルトラセブンは、私たちのダンだったの』とアンヌが言うタイミングも凄い。タメがないんだよね。ズバッと言う。ここカッコいい。
あと、史上最大の作戦が進行していくなかで、ニューヨーク、パリといったそうそうたる大都市が地中爆弾で壊滅させられるんだよね。『でも東京のこってるからいいや』というノリがすごい。ニューヨークやパリをやられた時点でかなり人類側の負けでしょう。
そんなこんなでウルトラセブンは去っていき、今後地球はどうなるのか。帰ってきたウルトラマンが来るから大丈夫だね。