劇場公開日 2023年12月15日

「「願いを諦めたくはない」と歌う主人公の願いが心に響かない」ウィッシュ tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0「願いを諦めたくはない」と歌う主人公の願いが心に響かない

2023年12月27日
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冒頭で、絵本を読む形で説明される王国の設定が、まず、分からない。
国民は、滅多に叶えられることもなく、しかも、その内容も忘れてしまう「願い」を、なぜ、積極的に国王に預けようとするのだろうか?いくら努力しても絶対に叶わないような願いだったら、宝くじ感覚でそうするかもしれないが、そもそも、そんな願いに煩わされることはないだろうし、それで国民が国王を慕うようになるとも思えない。
その国王にしても、国民の願いを集めて何がしたいのかがよく分からない。国民が願いを取り戻すラストの展開から、願いは、間違いなく国王の力の源泉だったのだろう。しかし、国王が、願いで魔力が増すことを知ったのは、偶然、主人公の母親の願いを破壊した時のようだったし、少なくとも、私利私欲のために願いを利用したり、願いで悪事を企んでいるようにも見えなかった。
そんな国王に立ち向かう主人公にしても、どうしてそこまでムキになって彼から願いを取り戻そうとするのかが、よく分からない。国民は、国王に預けた願いを忘れているだけで、夢や希望を奪われた訳でも、気力や活力を失った訳でもないのだ。
そもそも、それだけ願いを大切にしている主人公なのに、彼女自身の願いが何なのかが、今一つ分からない。もちろん、皆の願いを取り戻すということは、彼女の願いであるに違いない。ただ、その理由が納得できないので、「手段」が「目的」化しているようにしか思えないのである。
主人公が、国王の秘密を知る経緯も安易すぎるし、星に願っただけで魔法の星が舞い降りてくるという流れもご都合主義的すぎる。それだったら、国王に願いを預けたりせずに、誰でもそうすればよいのではないかと思えてしまう。
その魔法の星にしても、動物を喋らせたり
巨大化させる以外に、どのような能力があるのかがよく分からなかった。
結局、分からないことや納得できないことが多すぎて、最後まで物語に入り込むことができず、美しい歌声も心に響くことはなかった。

tomato