「より進化した「アリエル」。」リトル・マーメイド ガバチョさんの映画レビュー(感想・評価)
より進化した「アリエル」。
人間と人魚は分かり合えるのだろうか。人間は、人魚は人間に害をなすものと思っている。人魚も人間は海の世界を壊すものと思っている。お互いに相手を知ろうとせず、不信感をもっているだけである。今までの常識を超えて、二つの対立する世界を結び付けるのがヒロインであるアリエルだ。向こう見ずな好奇心と、好きという気持ちだけで突っ走ってしまう危険な娘である。しかし彼女の強い意志がこの作品のテーマになっている。「アニメ」「ミュージカル」と進歩してきた一大ヒロインがこの実写で一段とパワーアップしたようだ。動き、表情、歌声、そして行動力とどれもアリエルらしさがあふれている。他の出演者の影が薄くなるほどにアリエルの存在感は強い。モアナのような南洋系の民族性もよくキャラクターにあっていると思う。
ミュージカルの「リトル・マーメイド」は大好きであるが、映画とミュージカルを比べることはあまり意味がないかもしれない。映像の完成度は素晴らしいし美しいが、実写ではミュージカルのような分かりやすい感動が伝わりにくいようである。人間界と海の王国との対立、海の王国内の正義の王と邪悪な妹の対立、保守的な父と行動的な娘の対立がミュージカルでは極めてドラマティックに演出されている。そして声を失ったアリエルとエリック王子との恋の行く末は物語の絶頂につながる。実写ではリアリティが増し、細かいところまで表現できるが、想像力をかきたてるのが難しいようだ。しかし、画面では表現できないところを想像力を働かせることによって生まれる感動は大きいと思う。そのあたりが、実写映画と舞台の表現の違いかもしれない。
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