「原作アニメ公開から30年、グラフィックの技術の進歩は感じるが。」リトル・マーメイド 吐露取ろとろさんの映画レビュー(感想・評価)
原作アニメ公開から30年、グラフィックの技術の進歩は感じるが。
まず、黒人を主人公として採用したことについて、私は賛成も反対もしていないことを宣言させていただきます。
あらすじはリトルマーメイドのアニメ作品との変わりはそこまでありません。そのため、感動できない作品ではないと思います。最新のCGで場面を装飾しているため、アニメの方の映画よりも感動できたという人もいると思います。私も例にもれず良い作品/テンプレートだなと思いました。
しかしながら、30年の時間を経ておきながら全く話に深みのようなものが生まれていないと感じました(アニメ版との差分の話ですよ)。せっかく黒人の主人公を採用し世論をかき乱したのだから、何らかしらのメッセージがあるのではないかとも思いましたがそれもなく、
「ただ白人でもできるような役を黒人に何も考えず当てはめてしまった」
という印象を受けました。
アリエルのデザインの基は、アニメ映画ですからキャラクターの肌の色も含めてのデザインであることは言うまでもありません。ですから、黒人を主人公に当てはめることを決めたからには、アリエルの服装(人魚の服?)のデザインにも手を入れて、その俳優に似合うようにデザインしなおしてもよいはずです。散々、様々なデザインの人魚を外に配置しながら、主人公のデザインには一切手を加えない。ただ黒人を配置したという点のみで満足してしまっている。これはあまりにももったいないばかりか、黒人を採用したことを一層目立たせる結果となっており、これが昨今の批判の増大につながっているのではとも感じます。
私が演出なら、アリエルの人魚の衣装は白を基調としたものに変えて、より一層外圧からの解放の印象を強くするような演出を取り入れます。そのくらいのことはできたはずです。30年もたっているのですから。
総じて、演出の工夫が全くなされていない、ただCG/VFXの向上で押し切った映画になってしまったのは残念です。これがリメイク作品でなければ印象に残る映画だったとは思いますが... ディズニーさんはその手の壁を突破する力は持っていると思っていたのですが、見当違いだったのでしょうか。