「忘れられつつあった映画創生期の狂騒を蘇らせた一作」バビロン yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
忘れられつつあった映画創生期の狂騒を蘇らせた一作
長いけど面白い、というか、4人の主人公の物語がそれぞれ目も離せないほどに面白く、時間を感じさせない一作でした。本作の時代背景についてあまり知らない…、という方でも、約100年前、産業としての映画がサイレント(無声)時代からトーキー(有声)へと大きく姿を変えつつあり、同時に映画制作にそれほど大きな法的規制がかかっておらず、ハリウッドは一種の無法地帯的な側面も持っていた…、という時代が舞台と、さしあたって頭に入れておくだけで、十分楽しめると思います。
予告編で期待させてくれる、豪華で退廃的な狂宴は、導入部からいきなりかましてくれるので、鑑賞のテンションは否が応でも高まります。主人公達の中でも、ブラッド・ピット(ジャック)とマーゴット・ロビー(ネリー)は、実際の俳優としての彼らの姿をどこか連想させるところがあり、その優雅さも備えた演技巧者ぶりのおかげで、本作が栄華の後の凋落を描いている物語であるにもかかわらず、過剰に陰惨な描写にはなっていません。
むしろハリウッドの闇の部分を担っているのがトビー・マグワイアというところが、ちょっと意外なところです。彼が登場してからの「地獄巡り」は、神話的でもあるし、ちょっとこれまでの展開とは雰囲気が違ってもいるんだけど、しかしどこかユーモラス名ところでもあります。
全体的に非常によく練られた語り口なので、登場人物の多さの割に物語の流れを追うこと自体はそれほど難しくないんだけど、終盤の展開はちょっと意表を突かれる人もいるかもですね。音楽は同じメロディが何度も繰り返す特徴的なもので(さらに『ラ・ラ・ランド』を連想させるような曲調もちらほら)、特に"Voodoo Mama"は耳から離れない強烈な印象を残します。