劇場公開日 2023年10月13日

「二人の『アアルトの年表』の様な映画」アアルト ネコと映画と人生とさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0二人の『アアルトの年表』の様な映画

2024年5月18日
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鑑賞方法:映画館

知的

【ストーリー(脚本) & 演出】
制作する側の主観を排除し、夫婦でやり取りをした『手紙』の文章を紹介するシーンでも 手紙をやり取りした際の二人の感情を作品中で推察する事もなく、余計な[ストーリー性]や[ドラマ性]を付随させず、その時代の二人の状況や 二人が成した仕事について「淡々と羅列的に」紹介していく《まるで『二人のアアルトの年表』を見ているかの様なドキュメンタリー映画》でありました。
(作中で特に解説されずとも『手紙の文面』からは その当時の二人の関係や心情は充分に窺い知る事が出来ると思います)

個人的には この様な構成のドキュメンタリーも嫌いではありませんが、予告編の印象から「もう少しドラマチックな要素もあるかと思っていた」ので、そこら辺を期待して観に行くと 少々肩透かしを喰うかも知れません。
脚本評価★★★★☆
演出評価★★★★★

【キャスティング(配役) & 演技】
基本的にアルヴァとアイノに関しては『モノクロの写真』や『8ミリフィルムの映像』で 二人の音声はありません。
また画面に必要以上に人物が登場する事もありません。何らかのコメントや解説が入る場面でも 殆どの場合で「ナレーションとして音声が入るのみ」で、語る人物の姿が画面に登場する事はそれ程ありません。

ストーリー評価でも書きましたが「制作者の主観」みたいな[余計なモノ]を入れ込まない 素晴らしい構成・編集で、ただ事実のみが画面に映し出され 制作者の押し付けが無い「鑑賞者自身のスタンスで鑑賞出来る」良質なドキュメンタリー作品でありました。
配役評価/ドキュメンタリーにつき無し
演技評価/ドキュメンタリーにつき無し

【映像 & 音楽】
時代背景がよく分かる映像や 彼らがデザインした家具や設計した建物の特徴的な部分を捉えた映像や、おそらくあまり知られていない出来事に関する映像資料なども収められており、アアルトの事を知らない人でも興味深く鑑賞出来ると思います。
(多少は『デザイン』や『設計』に興味が有るのに越した事はないのでしょうけど)

個人的に本作の中で 最高に評価しているのが《音楽》です。 ドキュメンタリーでありながら それなりの数のBGMが使用されていました。 また それらの楽曲自体が「非常に優れた楽曲であった」と思いました。
ドキュメンタリー作品なので有り得ない事ですが「サントラがあるなら欲しいくらい」の素敵な曲が使用されていました。
映像評価★★★★☆
音楽評価★★★★★

【総括評価】
私が住んでいる県内では 本作品を上映しているのは[1館のみ]なので、それ程 多くの方に鑑賞の機会がある作品ではありませんし、ドキュメンタリー映画自体が「観る人を選ぶ」し「鑑賞しない方も多い」ジャンルだと思います。

ドキュメンタリーは「わざわざ劇場の大きなスクリーンで観る必要が無い」ジャンルかも知れませんが、音響設備の整った劇場で「本作の音楽を聴く」のも一興かも。
お財布と時間に余裕があり 近くで鑑賞出来る機会があるならば、レイトショーなどで鑑賞してみては?

正直言って ドキュメンタリーは[個人的な好みに基く評価]と[作品を客観視した時の評価]が乖離している事が多く、評価が難しい作品が多いので「星を幾つ付けようか?」かなり迷っています。 なので ここは…
個人的評価★★★★☆(星4)
客観的評価★★☆☆☆(星2.5)

【追記】
本作はフィンランドでは"フィンランドのアカデミー賞"と称されるユッシ賞にて『音楽賞』と『編集賞』を受賞していた様です。

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