「考察不足」正欲 maybeさんの映画レビュー(感想・評価)
考察不足
普通とは幻想であり、いわゆる普通に合わせているフリをしている方が多いのではないかと思っているのだが、この映画は色々と不十分だと感じた。
まず普通の人の描写がズレている。
冒頭で描かれる仕事中にズケズケと個人的な領域に立ち入って人は「普通の人」ではなく、「普通に迷惑な人」でしかなく、一般的に見ても主人公は良くある被害者に過ぎない。
普通を志向する警察の人の発言も、子供の不登校の原因が不明なので一理あるというか正論に聞こえてしまう。片付けも教えず、子供の自主性=正しいという幻想に取り憑かれた母親の方に危なっかしさを感じる。
次に致命的なのは世間知らずと言っても良い設定の甘さだ。
Youtubeとは最新情報、専門知識の発信や作り込まれた企画もの、過激なエンタメでなければ視聴は稼げない。件の不登校児(過去形だが)も有名人とのコラボ、過激なパフォやボクシングなどがあるから視聴者を稼げたのであって、この映画のように不登校児が二人で普通に遊んでるだけで順調に登録者が増える事はない。
また、警察が閲覧履歴やチャット内容を調査するのは常識であり、それで二人の容疑者の疑いは晴れるはずだがその形跡はなく、思い込みで捜査を進めて行く不自然さ。これらは作品からリアリティを奪ってしまう。
新垣は美人であるし演技も悪くないのだが、流石にセックスを経験したいと言いながら服着て試すのは無理があるのではないか?この辺りは制約があるのだろう。
それと各々の性癖を追求する権利を主張しながら、児童買春を行う者との線引きについても踏み込まずに終わるのも考察不足と言わざるを得ない。
己の嗜好の追求は是だよねというフワッとした感覚で作られているようで物足りなさを感じた映画だった。