「謝罪とは」バーバリアン なつさんの映画レビュー(感想・評価)
謝罪とは
ホラーのいろいろな要素を取り入れて且つ、少ない登場人物でコンパクトにまとめた良作!
仕事の面接に備えてデトロイトで民泊を予定していたテス。大雨の夜、家に着いても鍵が開かない。
すると中からキースという男性が出てくる。
まさかのダブルブッキング?!
これは、男が悪者だったり何かのアジトだったりするのかな?人怖系ホラー?
家にはワイン、ナッツ。バスルームにはポーチや電動歯ブラシ。
共通話題とワインで2人は仲良くなる。
夜中、寝ているドアがカチンと開く。
キースはソファでひどくうなされている。
翌朝、面接に行く道を車で走行中、誰も住んでない様な廃屋ばかり。明らかにおかしい。しかし自分はきちんとした家に泊まっていた。
呪いの家霊的ホラー?
トイレットペーパーを探しに地下へ降りるが、ドアが閉まり出られなくなってしまう。
スマホはない。すると壁に謎の紐が。
引いてみると、更に真っ暗な地下への階段がある。
灯りがないので姿見を電灯に反射させて目を凝らす。この演出はいいなぁ。
恐る恐る階段を降りる。不穏なホラーBGM。
地下の部屋にはベッドとカメラとバケツ!
怪しさ満点のお約束なセットに期待が上がりまくり!
地下の窓からテスはキースに救出。
説明してもキースはもちろん信じない。
家から出たいテスだが、キースは確かめに降りていく。
心配になり再び降りる。
奥には更に奥がある。この、不穏なBGMと共にドアを覗くテスとドア側から見たテスの影が何度も映る事によりドアへの恐怖感と緊張感を煽る。
更に降りると大きなゲージの数々。
その更に洞穴の様な地下からキースの助けの声。そこで出会ったキースは何かいる!逃げなくては!と言うがテスの外へと行こうとする側より、こっちへ!と奥へ行かせようと手をひくキース。
それは大声となり、急に下から登ってきた大きな裸の女のモンスターに頭を打ち砕かれるキース。
モンスターホラーだった!
そこで場面は車で走る陽気な映画監督AJへと変わる。
あぁ、主人公二段構えのホラーか〜
彼はレイプの裁判でお金が必要。
仕方ないのでデトロイトの家を売るかとあの家へ。
もちろんそこにはテスの荷物や電動歯ブラシ。家を荒らされた!と激怒して不動産屋に電話するも知らぬ存ぜぬ。
途中、レイプした相手に謝罪のメッセージを送りなんとか和解へと持って行きたいAJ。
そしてあの地下を発見。地下の面積で売値が上がる事を知り、ルンルンでメジャーを持って地下のドアを開けていく。
テスの時はあんなにおどろおどろしい演出だったが、AJは楽しそうに恐ろしい地下を降りて行く。
そこで例の化け物とエンカウント。掘られた地下穴に押し込まれる。そこにはテスが!!良かった…無事で…
暗転後、周りは綺麗過ぎる家が建ち並ぶ住宅街にあるこの家。例のBGMと共に出てくる男は不気味でスーパーでオムツなどを購入。そしてストーキングや家屋侵入などをして微笑む。
再び暗転。地下穴の上から差し込まれる大きな哺乳瓶。薄汚れブラブラするそれの先はえらい気色悪いが「それを飲んで!」とテスはそれを咥えて飲み始める。恐ろしい光景の中「アレは私達を育てる気なの!」何日監禁されたのかは分からないが察しの良いテス。しかしAJは恐怖で拒む。それはそう。
ズルズルと部屋へと連れ込まれ、怪物の巨大おっぱいに口を付けさせようとする。その背後には赤ちゃんの育て方のビデオが流れる。
その隙に逃げ出すテス。走って警察を呼ぶも汚らしい格好とIDも持たないテスに男性警官は懐疑的な顔しかしない。
AJを助ける為に再度屋敷へ戻るテス。いい娘だ…
出てきた女を思い切り車で壁へ打ち込む。息絶えるような化け物の顔は少しかわいそうに見えた。
その間、AJは逃げ出した部屋で謎の老人と出会う。そこには大量のビデオテープ。ラベルは「赤毛」「店員」などの名前。画面からは観えないがそれはきっと老人=ストーキング男のレイプなどの記録撮影。老人は銃で自死。その銃を手にAJは上へと進む。助けにきたテスに慌てて発砲。腹を打たれたテスに謝りながら支えて隠れ住んでいる浮浪者に匿われあの家の真実を知る。
あの老人=男は何人もの女性を攫っては孕ませその赤子も孕ませ続けてあの怪物が出来上がったと。
うーん、物理とかではなく怨念が溜まったとか?
そう説明する廃屋に住み着いていた浮浪者が、ここは安全だ。俺は40年以上ここに住んでいるんだz…の瞬間、壁からボコっと出た女の手が浮浪者の腕を引きちぎる!
ナイスタイミング!
もう化け物の方を応援してしまうよ!ヤッホーィ!
自分の赤子にはマーキングでもしてたのか?
逃げる2人。さっき改心したばかりのAJはテスを放って先へ逃げ階段を登る。下からは怪物の叫び声とお腹を打たれて走れないテスの助けを呼ぶ声。
足手纏いのテスを「ほら、お前の赤ちゃんだぜ」と上から蹴り落とす。助けに行く化け物。
化け物が下になって生き延びたテスにAJはまた謝りながら手をひき逃げ去ろうとする。怪物は彼の目と頭を掴みぐしゃり。
そりゃ自分の子供を殺しかけたんだ。当然の報い。
テスに縋り涙する化け物。テスに家を戻ろうと長い爪の指で示す。連れ出そうとも腹を撃たれたテスの呻きにオロオロする化け物。戻れないと呟いてテスは銃を怪物の頭に当てる。
最後の化け物の赤子への愛情の仕草がとても切なかった。
夜明けを歩くテス。
EDはビーマイベイビー。
ホラーにポップなEDつけると恐怖の後引き感エグいなぁと思いながら、キースは何者?と疑問が湧く。
車はテスのものだけ。あの荒廃した街で。
やたらとテスを引き止める異様さ、夜のうなされ具合。キースの私物では無さそうな物。地下へ降りようと引っ張った腕。ひょっとしたらこの家の守番だったのでは?
示し合わせた様にあの家については触らない不動産の感じからするとグルになり赤子になる人々を送ってたのでは…とか…
結局、死んでいくのは男性だけ。
キースと語るシーンでテスは先に女性が来て男性が後に来たなら家に入れないだろうと。女性は知らない男性なんて家に入れないし、知らない男がいれた紅茶なんて飲まない。
AJは清々しいほどのクズっぷりでレイプした相手に謝ればなんとかなると思ってるし、助けてくれたテスを撃っても塔から突き落としても謝ればいいみたいに口先だけの謝罪を述べる。
化け物に無理やりおっぱいを口にねじ込められる様はまるで逆レイプのようだ。
散々女性に酷い事をしていた男も自死。
性差別的な物語でもあるなぁとしみじみ。
不気味さとホラー演出、怪物の造形や凶暴さ執拗さの底にある母性。
ほんと見どころ盛りだくさんホラー映画!