劇場公開日 2023年1月20日

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「粛々と進行される血の通わない会議」ヒトラーのための虐殺会議 カツベン二郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0粛々と進行される血の通わない会議

2023年2月23日
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鑑賞方法:映画館

会議出席者の役職や役割が今ひとつわからなかったので始まったばかりの時は不安だったが、会議が進みそれぞれの主義、主張を聞いていくうちに立ち位置が少しずつ明確になり、ユダヤ人虐殺を法律、効率、執行者の精神健全性などを争点とした意見がぶつかり、熱を帯びて来た中盤あたりからから一気に面白くなった。

意見の対立はあれどユダヤ人絶滅という最終目標については誰も疑うことはなく、どこまでをどのように処置すべきかの方法について終始話し合いがおこなわれて行く。

ニュルンベルク裁判では戦犯を裁くための重要な資料となるこのヴィンゼー会議の議事録だが、当事者達が廃棄せずによく残していたものだと感心する。
重要な最高機密文書なので逆にしっかりと保管されていたというなの事だろうか。

ハインドリヒ親衛隊大将が法令遵守を譲らないシュトゥッカート内務省次官を別室に呼び出した時の緊張感は耐えられるか心配なほどだったが、そこは上層幹部同士なので結局大人の話し合いで解決と少し拍子抜けした。(ナチスは同族には寛容?)

全編通して抑揚がなく絵も大きく変わらず音楽もないので正直言って眠気との戦いもあった。
左右両隣2人までしっかりと寝ているのがわかり、右隣のおじさんにいたってはいびきまでかいていたくらい。

本作はドイツ映画である事が重要なポイントだと思う。
同じ敗戦国の日本でも戦争映画は数多あるが、戦犯国、加害国として自国の狂気の沙汰をメインテーマで映像化したものはない(と思う)のは、本議事録のような史実であることが証明できる確固たる証拠がないからだけではないと思う。
少なくともユダヤ人迫害に関して、ドイツ人は当事者でなくとも国が続く限り一生背負って行かなくてはならない十字架である、と言うことを国民全てが認識していると言う事だと思う。

カツベン二郎
りかさんのコメント
2023年4月19日

おはようございます
初めまして。
末尾のところ、ドイツ人は皆思っているのでしょうか?
ドイツ人並びにヨーロッパの人の感想が知りたいと思っていますが。

りか