「面白さはありましたし感想を書くのは野暮とは思いながら‥」映画ネメシス 黄金螺旋の謎 komagire23さんの映画レビュー(感想・評価)
面白さはありましたし感想を書くのは野暮とは思いながら‥
(完全ネタバレですので鑑賞後にお読み下さい)
もちろんTVシリーズの映画化で、その水準で見れば面白さはあったと思われます。
それを踏まえればレビューを書くのは野暮な気もしています。
しかし、映画は有料で足を運んで見るものなので、この映画が映画の水準に達していたかと問われると一方で疑問はありました。
その大きな要因は、映画の質の水準として重要な<社会に生きる人間のリアリティ>が、この映画では描けてない点だろうと思われました。
例えば、美神アンナ(広瀬すずさん)の新居の部屋の壁に悪夢を発生させる装置が仕込まれていますが、この装置の設置に費用は一体幾ら掛ったんだろうか、そこに費用対効果のリアリティがあるのか、とは思われました。
もちろん、新居の部屋に悪夢発生装置を設置させる費用ぐらい、ゲノム編集データを盗むために集まったスポンサーの資金を考えれば訳がないとの反論があるかもしれません。
では、終盤で地下スタジオの壁一面にバーチャル世界を立ち上げるための装置に対してはどうでしょうか?
そもそも美神アンナからゲノム編集データを盗むために、こんな大掛かりな装置を設置する理由が私には分かりませんでした。
そして、窓(佐藤浩市さん)の名刺にも描かれていた、黄金の螺旋に従って殺人を犯して行く理由も分かりません。
これは、美神アンナからゲノム編集データを盗むための<リアリティ>から計画(作品)が構築されていないのが理由だと思われます。
そうではなく逆に、”黄金の螺旋に沿って殺人が行われたら面白いよね、そこに悪夢やバーチャル世界も見せられれば良いよね”、という”ガワ”の発想から作品が構築されているのが理由だと思われました。
そういった作品の作り方では、とても<社会に生きる人間のリアリティ>が描かれた映画の水準には到達できないとは思われました。
例えば細かいですが、交通整理のバイトをしている美神アンナと神田凪沙(真木よう子さん)が会話をしている場面がありましたが、美神アンナが交通整理をしていた場所には代わりの人物は立っておらず(少し離れた場所に立っている人をアリバイ的に発見出来ましたが‥)、そもそも交通整理の現場でずっと2人が話し込んでいるのは<現実リアリティ>がなかったように思われます。
この映画『映画ネメシス 黄金螺旋の謎』は、そこかしこに<社会に生きる人間のリアリティ>からは地続きでない違和感が見受けられました。
残念ながらそういった点から評価は難しい作品だったなと思われました。
もちろん悪夢装置には面白さはなくはなかったですし、神田凪沙のラストに明かされる意外性もあったとは思われます。
また広瀬すずさんを初めとした(人間リアリティは演出上で落ちたとしても)役者の皆さんのキャラとしての演技の楽しさはあったと思われます。
であるので、<リアリティ>ある映画としてでなく、あくまでTVシリーズの映画版として楽しめば良く、私のような感想は一方で野暮だよなあ、とは思われてもいます。