「法治国家って、もろい」福田村事件 マツドンさんの映画レビュー(感想・評価)
法治国家って、もろい
例えば、悪いやつが自分の村に来た場合、とっつかまえて、警察につき出す。そして、国がさばく。大正期でも日本は法治国家。なぜ、自警団が殺してもいいって事になるのか。
内務省が各地方長官などに、「朝鮮人は各地に放火」と打電(「爆弾を所持」という内容も書かれていたそう)した事実が描かれていた。
恐怖にかられ「村を守らねば」と考えたとしても、相手が武器をもたない少数者だったら、多人数で拘束できるでしょう。ましてや朝鮮人というだけで、みんなまとめて殺してしまえ、っていうのはどういう理屈。
そもそも、併合によって日本になった地域の住人、それって法的には日本人という事でしょう。15円50銭の発音が違う相手なら、倫理のストッパーを簡単に解除できるって、いろいろムリだらけ。
この映画を見て、そんな事に気付かされた。
「時代が人々をして、そうさせた」「現代の価値観で過去を裁くのは、いかがなものか」などと聞こえてきそうだけれど、映画の中で読み上げられた水平社宣言の一部分を聞けば、理想をかかげる心の純粋さに、時代など関係ないと思う。流されることなく、青臭い理想を謳いあげた言葉が、こんなにも美しいと感じられたことに驚いた。
わたしたちは個人なら倫理を求める一人一人だとしても、集団を守るための倫理は違う理屈で組み立ててしまう。オキシトシンが排他の心をあおり、アドレナリンが群集心理を高揚させ、行くところまで行ってしまう。そしてそれは、今、世界のそこかしこで行われている。自分の足元を見つめ直さねば、と思う。
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