「加害と被害」福田村事件 たまさんの映画レビュー(感想・評価)
加害と被害
犠牲になってしまう、永山瑛太演じる香川の行商人の言葉
この映画のテーゼでもあろうかと思う
朝鮮人なら、殺してもええんか
多くのレビューで
評価されるのも、むべなるかなというところか。
長らく、ドキュメンタリーで傑作を撮ってきた森達也監督。初の劇映画というところで、一抹の不安がないわけではなかったが杞憂に終わった。
この題材をよく映像化された。製作陣スタッフ、強力なキャスト陣に敬意を表したい
企画やシナリオに、荒井晴彦氏が名を連ねているのも大きい。
100年もの間、闇に葬られていた歴史事実
映画の下敷きになった原作も読んだが、埋もれていた史実を丹念に取材した辻野弥生氏にも感服。
いまだ、関東大震災時の流言蜚語による虐殺を正視しない、この国の為政者たち。
震災時の虐殺はなかった、とする説などが流布する現代日本
俗な言葉になるが加害にも向き合わず、日本黒歴史ともいえる事実に目をそむけつづけるならば、歴史は繰り返されるだろう。違う形で。との言葉を残したのはどの歴史家であったか。
自分に問いかける。あの場、時代に生きていたなら自分はどう行動しただろう。殺す側?殺される側?傍観している?
煽っている?…
この作品は重層的かつ多層的に作られている。
つまり、視座がひとつではないというところ。
差別が構造的かつ複雑にあり、朝鮮人と間違われ殺害された日本人。彼らは被差別部落出身者たち。その彼らも大陸の人々に対する差別、ハンセン氏病の人々に対する差別心があり、それらをも描いている。
多くの方が見られることをお勧めする
はじめまして
共感そしてフォローまでして頂き、
ありがとうございます。
原作も読まれてるのですね。
本質を抉ったレビューに触れて、勉強になりました。
よろしくお願いいたします。
おっしゃる通りだと思います。
クラファンでの資金集めもされたようですが、この題材なかなか商業映画では難しいと思いました。
永山瑛太の言葉、インパクトありましたね
私はこの作品が、そこまで気に入ったわけではありませんが、永山瑛太の言葉は。このレビューと同様に一番、心に残りました。
「この題材をよく映像化・・・」は、まったく同感です。
共感ありがとうございます。
多重的な描写が、詰め込み過ぎとの批判も呼んでるようですね。コミュニスト謀殺やスト潰し、震災直下での厳戒等々、製作陣の想いは際限なく拡がったようです。
「朝鮮人やったら殺してもええんか!」
瑛太さんの叫び。まさに魂の叫びだった。
自分自身、迂闊にも、知らずの間に、早く巡査が戻ってきて
この人達を日本人だと証明してくれ、この人達は間違いなく
日本人だと言ってくれと念じていたのだが、この一言で目が覚めた。
そして、この一言が、殺戮の火ぶたを切った。
普通だったら人々の目を覚まさせる強烈な叫びだったのだが、
このような場面ではそれは通用しなかった。
また、最も弱いものが最も残酷になれる。これも現実なのか。
あれゆる不条理を網羅し、我々に突きつけて来た映画だと思う。