「戦前の日本社会が抱えていた闇」福田村事件 知徳さんの映画レビュー(感想・評価)
戦前の日本社会が抱えていた闇
ようやく観ることができました。公開当初から多くの人に勧められていました。ドキュメンタリーであればすぐにも観に行ったのですが、劇映画となるとつい足が重くなります。あまりに目を背けたくなる歴史的な事実なので、エキセントリックな表現になると、原作者や監督の意図しない方向に行きがちです。どのような形であの事件を描くのか、冷静に観ようと思い、鑑賞しました。
なかなか一言では表現できませんが、戦前の日本社会が抱えていた闇(朝鮮人差別はいうまでもなく、被差別部落の問題、経済的な格差、農村社会の封建的体質、日本のデモクラシーの脆弱性、出征兵士やその遺族に与えるダメージ、権利に忖度するマスコミなど)を、見事に描いていました。冷静に、今日本はどうなのか、同じような過ちを起こさないと言えるのかというと、必ずしも否定できない自分がここにいます。
残虐なシーンもありますが、そこは抑制的に描き、一人ひとりに感情移入しすぎないように演出されています。私と同様な気持ちで躊躇している方も、安心して是非ご高覧あれ。
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トミーさんのコメント
2023年9月18日
共感ありがとうございます。
この事件の要素には複合的な問題が有るのだと思いました。劇映画でしか世に問う事は出来なかったと思いますし、抑制された表現はひとまず正しかったと感じました。