「目をそらさない人でいたい」福田村事件 kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)
目をそらさない人でいたい
関東大震災の直後、多くの朝鮮人が虐殺されたのは明らかな史実だ。この歴史の怖いところは、殺したのが自警団を結成した一般の日本人市民たちだということ。ヒステリックな集団心理の怖さを感じる。
そんな震災後の朝鮮人虐殺が行われた中での日本人殺害を描いたこの映画。序盤は地震発生までの福田村の姿と香川から出発する行商一行が淡々と描かれる。それが結構長いのに不思議と飽きない。仕事をし、飯を食い、セックスする。今で言う不倫や浮気もあったりする。時代だなーと思うところもある。でも、時代は違えど彼らが普通の人々だということをうまく描いていた。
そこで地震が発生。不穏な空気に一変する。そこで活きてくるのが、今まで描いてきた普通の人々の中にある朝鮮人への差別意識。福田村には朝鮮人がいない中、行商で訪れていた薬売りの一行を、村を襲いに来た朝鮮人だと勘違いする流れ。とても緊迫感のあるシーンだったが、朝鮮人だろ?日本人だ!のやり取りを聞きながら、猛烈な違和感を覚えていた。そこじゃないよと。そのモヤモヤを、永山瑛太演じる行商の長が振り払う一言を放ってくれた。あの展開はハッとさせられる。
説教くさくなるのを極力抑えたように思える作りだったが、それでもインパクトは絶大だ。悲しいシーンもあるのに、その悲しさよりもショックのほうが強くて泣けなかった。最後の字幕も含めてやるせなさと憤りを強く感じてしまう。なんて映画だ。これは目をそらさずに観ておくべきだ。
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