「集団心理だけどもっと歴史を見よう」福田村事件 レインさんの映画レビュー(感想・評価)
集団心理だけどもっと歴史を見よう
「集団心理」だけど、
その一言だけで片付けるとちょっち悲しい。
「集団心理が暴走」とか「集団心理が怖い」とか、お馴染みの集団心理だから説明がつく、納得できる、仕方がない、と思ってしまうからだ。思考がその結論まで辿り着いたら即止まったみたいに。
日本人は確かに集団心理が強い、この映画も「群れること」「個人の思考」を観る人に気づかせた。(そして最近の処理水問題で日本がとりわけ大きな集団に見える)けど関東大震災後のこの虐殺は集団心理だけではないと思う。
よく考えると集団心理の定義は狭いような広いような...
この映画では村人に限った話だった。けど国家戦争も単純に二つの「集団」がぶつかっている、とみていい。(もちろん中に独立思考を持ってる個体もあるが、衝突がある時点でその人たちが作用しないようなモノ。)
いずれにせよ、集団心理で括ると、もっと広い視野でしか見えない何かを、もっとよく見ないと気付かない細かい何かを見逃すのではないかと思った。
一例として、戦時中に作られ、集団心理の作用に加勢したプロパガンダ映画はまた国家という「集団」によるもの、こんな一概した結論に何の意味があるだろう。
政治政権はどうだろう。
幸いにこの映画は当時の社会的背景への描写が上手く、女記者と新聞社、飴を売る朝鮮人の女の子などなどを通して、「時代」を感じさせるシーンを続々と見せてくれた。そのシーンたちの手助けこそが、もっと長い歴史を振り返る機会・視点を与えてくれていると思う。
政治、国家主義とか、イデオロギーとか...もうちょっとシンプルな言葉だと、倫理、人性、差別、信仰、戦争...色々あるのでは。
これらの側面からもう一度、集団から離れ、日本人としてではなく、人間として日本は一体どんな国だったのか、どんな国になっていこうとしているのか、自分は何を信じるべきだろうか、を考えることが大事だと思った。
バラエティ番組、娯楽映画ばかり盛んでいる日本では、このような渋く真実だけを伝えようとする映画、内省をしようと呼びかける映画はとてもありがたい。
いろんな面に広がる思考が、100年後の今を生きる人間の行動につながっていると信じたい。
考え続けよう。
コメントありがとうございます。
本当に面白くて色々考えさせられます。日本人が見るべき映画であり、未来のためでも、歴史を振り返り、自身を見直すきっかけになれるといいですね。
共感ありがとうございます。
この作品は物議を醸すと最初から判っているような映画でしたが、造りとして面白く作ってありとっつき易かったと思います。不謹慎かもしれませんが、こういうのが口コミやSNSで拡散するのは悪くないと考えてます。