「原作少女マンガの根幹の精神を、わずか2時間で見事に描いた」ベルサイユのばら temashunさんの映画レビュー(感想・評価)
原作少女マンガの根幹の精神を、わずか2時間で見事に描いた
少女マンガ「ベルサイユのばら」は、フランス革命期を舞台に
「困難な運命の中で、自立し、自らの道を切り開いていく女性の生きざま」を描いた物語だ
この作品の根幹とも言えるテーマ、【女性の自立と自己決定権】が、過去の2次作品では主なスタッフが男性だったからだろうか、大切にされてはこなかった
主人公オスカルをして、男性の後ろからついていく、全く別の人格になってしまっていたこともある
今回の映画化で初めて、
監督・脚本家・スタッフに女性を擁し、
原作者が女性である少女マンガの
「意義と世界観」を、忠実に映像に表現出来たと言える
【ベルばらが、女性の革命により、女性たちの手に取り戻された 記念碑的な映画】なのだ
美しいMAPPAの映像
選りすぐりの声優陣
現代的でリズミカルな楽曲
原作少女マンガ準拠の脚本
原作マンガを愛し、その精神を理解しつくした監督
これ以上ない環境で作られた、久しぶりのベルサイユのばらメディアミックスの新作
短時間だが決してダイジェストではなく、
「物語の芯」を描ききった
素晴らしい出来映えだ
まず映画の主題は【これが私の道】だろう
♪Blieve in my way の曲でも、映像の中で特に強調されている
そして映画から感じられた、製作陣のスタンスは、以下の2点
1可能な限り原作少女マンガの内容通りに、忠実に
2原作少女マンガ・ベルサイユのばらを未来へ繋ぐこと・裾野を広げることに注力・若年層観客の存在を意識(暴力的な場面を省略)
〈現代の叡智の結集〉
今風の顔のキャラクター・令和の映像技術・現代の優れた音楽・人気の実力派声優
これらは今の若者たちに訴えかけるに必須だ
大人の鑑賞にも十分耐えうる内容になっている
〈暴力的なシーンを極力排除〉
時間が足りないことも幸いしたか
原作マンガに数ヶ所は有る、男性からの暴力的な場面のほとんどが、映画ではほとんど見受けられず
女性が安全に安心して鑑賞できる内容になった
革命の戦闘場面はあるが、悲惨な場面の大半を、映画ラストの短い時間に集約させ、その分
少女マンガらしく、
愛・夢・希望を描く時間を充足させた
ところで私は、原作少女マンガ・ベルサイユのばらの主人公は、オスカル(原作者池田理代子の思想信条をを体現するキャラクター)1人であると考えている
(アントワネットはオスカルの対比対象)
特筆すべきは、そのオスカルが
この映画では、身体的にも精神的にも、極めて自然な「女性として描かれていること」だ
テレビアニメでも、もしかしたら原作マンガでも、これまでのオスカルは男性的あるいは中性的に描かれていたように思う
女性キャラクターを、女性のままに
『軍人の女性であるオスカル』として位置づけたことも、劇場版ベルサイユのばらの功績だろう
そのことが、「女性は身体的にも精神的にも、なんら自分を変えることなく、自ら道を選んで、生きていい」とのエールになり、エールを受け取った私は、
この映画に自己を投影できた
これこそが映画鑑賞の喜び、醍醐味なのか
最後に
原作少女マンガのオスカルと、映画のオスカルの人物像が、ほぼ一致していたことを、とても喜んでいる
子どもの頃に憧れた、ヒーローヒロイン
「美しく鮮烈なオスカル」が、
たしかにスクリーンに存在した