劇場公開日 2025年1月31日

「関連作と一緒に(VODで)見るのがおススメか」ベルサイユのばら yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5関連作と一緒に(VODで)見るのがおススメか

2025年1月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

今年37本目(合計1,579本目/今月(2025年1月度)37本目)。

 なかなか月の本数としても30本は超えても40本を超えるのは容易ではないですね…。
なお私は原作は知らず、高校世界史でこの点をしる程度です。

 おそらく、原作コミック(小説?)等の何十巻とあるものを100分そこそこにまとめたためにかなりの飛びがあり、そこをどうとるか…といったところです。ただ、ストーリーとしては飛びは見られても、エンディングに至るまで時間軸の巻き戻し処理は一部を除いて存在せず、高校世界史レベルの知識で見ることができるのでそこは有利な点です。

 翻って本作品を見ると、今の国民主権にあたるような思想を持っている登場人物が多く出てくるのは、映画内には表立って出てこないものの、当時の法学者や哲学者など(フィヒテが代表例か)の影響を受けていたものと思われるところ、そこを飛ばしたのが難しかったかなといったところです。ほか、おそらく原作に準拠したものと思いますが、唐突に星座の話をするなど(ふたご座。「兄」にあたるカストルは2等星、「弟」にあたるポルックスは1等星。2等星で固有名が知られるのは北極星(ポラリス)以外に基本的にないので、やや厳しいか)、やや混乱させる部分もあります(かつ、オスカルとアンドレは兄弟関係にはないため)。

 本作品だけでも十分楽しめますが、「裏主人公」であろうところのマリー・アントワネットの「対立した人物」を描いた作品の「ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人」や、その後を描く「ナポレオン」など、関連作はすでにVODにあるようなので、それらと一緒に見ると理解度があがるのでは、と思います。

 採点に関しては以下まで考慮しています。

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 (減点0.3/マリー・アントワネットが悪人かどうかの描写に配慮が足りない)

 この点、彼女は加害者でもあり被害者でもあります。高校世界史では加害者的な立場で描かれますが、被害者的な部分もあり(後述)、ここは関連する作品である本作では適宜説明が欲しかったです(後述)。
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 (減点なし/参考/マリー・アントワネットとサリカ法)

 もともと「サリカ法」という法律は、フランク王国ができた当時くらいからヨーロッパを支配していた法体系で、今の法体系で言えば刑法・刑事訴訟法にあたります(国によって法律名は異なるが、同趣旨の法律をまとめて「サリカ法」という)。とはいえ、当時はキリスト教文化が一般的でしたから、「神のお答えがすべて」であり、それは形式的なものではなく、このサリカ法に一部存在した、遺産相続に関する男女差別的な規定が問題となり(王位継承を事実上、男性のみに制限したり、土地の分割においても女性は不利な立場だった)、これは百年戦争(1339~1456)をもたらした一つの原因にもなります。

 映画内でも描かれるように、彼女は20歳にも満たない間に結婚しましたが(それどころか、映画内の描写と歴史に照らせば、それこそ12歳とか15歳とかというレベル)、これも当然政略結婚であり、またそのような年齢で結婚しても宮廷内では「男児を生むこと」を暗黙に要請されていたため、そればかりを要求された(むしろ、彼女に当時のフランスの政治を任せても無駄だったし、そのことは宮廷内では常識だった)ため、彼女にストレスがたまりまくりの状況であり、そのストレスに対する「八つ当たり部分」は、「ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人」にも描かれています(VODで見られるはず)。

 この点、余りにも早すぎる結婚であったこと、ルイ16世が「子作りが上手ではなかった」ため(表現は緩和しています)、彼女は難産も経た上で最終的には2男2女を出産しますが、その後に起きたフランス革命やナポレオン戦争他によってそれらの小さい子もそうした革命のもとに犠牲となり、最終的に天寿を全うできたといいうるのは、女性(女児)であったマリー・テレーズ・シャルロットだけであった、というのも皮肉なところです。

 なお、こうした遺産相続における男女差を規定していたサリカ法は、ナポレオンによるナポレオン法典等で大半の規定が削除され(ナポレオンの一つの功績と言われる)、他国においても男女同権思想が当たり前になった時に削除され、今にいたります。

 こうしたサリカ法の存在で「男の子を産むこと」のみを求められた彼女はその意味において明らかに被害者でもあり、この点については何らかの配慮が欲しかったところです。

 (減点なし/参考/一部においてフランス語が表示される部分)

 フランスはこの当時、話されていたフランス語が現在のフランス語とほぼ同じであった一方、フランス語は「子音を原則発音しない」「リエゾンが発生する」といった言語であるため、発音からスペルを推測したり、さらに性数一致を推測する必要があるなど文法的な要素があるため、フランス語をどれだけ読み書きできるかは、たとえ映画内でいうところの「一市民階級」であろうと重要なことであり、特に「聴いたことをそのまま書き取る」、「書き取り練習」は当時から存在し、当時からそれが伝統的に一市民階級でも常識扱いでした。

 現在でもフランスでは高校(リセ)でもこれらは「ディクテ」(英語ではディクテーション)として行われるほか(日本では、最も有名なフランス語系の資格である仏検においても、初級から程度の差はあれこの科目は存在する)、同じようにリエゾンが存在するような韓国語でも同じような学習法が存在したり、発声方法が特殊な中国語でも行われることがあります(←日本語ではそのような学習は、(外国人の日本語学習を除けば)せいぜい小学1年か2年かでしか行われない(中学高校でそのようなことをやったという方はいないはず)ことと比べると違いがはっきりする)。

yukispica