「偽ペルシャ語の語源」ペルシャン・レッスン 戦場の教室 norinoriさんの映画レビュー(感想・評価)
偽ペルシャ語の語源
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製作陣を見てほしい。ドイツ・ロシア・ベラルーシ合作、監督はウクライナ出身。政治的には今やあり得ないチームが、喜劇とも悲劇ともつかないホロコースト映画を作った。まことに歴史は変化するもので、決して一面では語れない。敵は敵のままでなく、味方も味方のままではない。
もちろんナチスの行為は永遠に正当化されることはないだろうが、この映画は、ナチスにいた人間をきちんと人間らしく描いている。彼らもささやかな希望を持った普通の人間であり、だからこそ普通の人間が大罪に加担してしまう怖さを考えさせられる。
コッホ大尉も、生き延びてほしいと願わずにいられない愛すべき人物だった。貧しい育ちで教養もなく当然ペルシャ語はおろか外国語習得の経験もないのだろう。ジルをペルシャ人と信じることで希望にしがみついているのだ。
一方、ペルシャ人を装うジルの、生か死かの綱渡りの展開にはハラハラさせられるものの、彼の事情がユダヤ人ということ以外まったくわからない(見逃しか?)ため、コッホほど感情移入ができない。それでも次第に自分の特権的立場がつらくなり仲間を助けるに至る姿は見る者に希望をくれる。地獄のなかにあって身を捨てて善を行う、これも人間の一面と信じたい。
でまかせのペルシャ語の語源となった数千の名前をそらんじるラストは感動的。その名を持っていたひとりひとりの生の重みが余韻となっていつまでも胸に響く。
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