劇場公開日 2022年12月30日

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「軽いエンタメとして割り切って観ましょう!」近江商人、走る! おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0軽いエンタメとして割り切って観ましょう!

2022年12月30日
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鑑賞方法:映画館

楽しい

幸せ

年末の締めの一本は、一年の心の汚れを洗い流し、前向きな気持ちで新たな一年を迎えられるような作品をいつも選んでいます。しかし、今週は大作や話題作の公開なし。そんな中、仕事にかける日本人のひたむきさや勤勉さを思い出させてくれるのではないかと、とりあえず本作をチョイス。「海賊とよばれた男」のような展開を期待していたのですが、かなりテイストの異なる作品でした。

ストーリーは、幼い頃に身寄りをなくした銀次が、たまたま出会った薬売りに見込まれて紹介された大津の米問屋・大善屋で丁稚奉公することになり、そこで徐々にその才覚を表し、やがて周囲からも認められる存在となり、大善屋に訪れた絶体絶命のピンチをその商才で救ってみせるというもの。江戸時代の商売の話ではありますが、歴史や経済の知識が皆無でも楽しめるほどわかりやすく描かれています。

前半でその商才を生かして周囲の人たちを助ける銀次の様子を描きながら、ここで助けられた人たちが後半の伏線になっているという構成がなかなかよかったです。終盤で一致団結して手繰り寄せた大逆転劇はなかなか胸熱でした。さらに最終盤でもう一度ピンチが訪れますが、序盤で打った布石が大逆転につながるという展開で、王道時代劇のテンプレを想起させるものの、悪くはなかったです。

その一方で惜しいと感じたのは、ところどころに現代要素を大胆に取り入れたり、かなり誇張して描いたりしている点です。本作が史実に基づくものかどうかは知りませんが、少なくとも実在する「近江商人」をテーマに掲げている以上、あまりに軽いエンタメに振ったのはいささか疑問です。特に茶店の看板娘のくだりや悪徳奉行の悪ノリは、絵的にはおもしろかったですが、好みが分かれるのではないでしょうか。もっと知恵を絞って、当時の世相を反映した現実的な手法で庶民のピンチを救ったり、奉行の悪巧みを暴いたりして観せてほしかったです。そのほうが、より銀次の才覚を観客にアピールすることができたのではないかと思います。

他にも、気になることが多くて物語に浸れなかったのも残念でした。喜平は、大根一本まともに売れない銀次のどこに商才を感じ取ったのでしょう? その後に銀次が開花させる商才は、いったいいつどこで培われたのでしょう? なぜ親方と大げんかしていた大工が急に心変わりしたのでしょう? どうして中途半端に関西弁の人が混じっているのでしょう? 最後は本当に「三方よし」でした? そもそも近江商人はどんな点が優れていたのでしょう? 挙げだしたらキリがないですが、軽いエンタメと割り切って観れば気にならないのかもしれません。

キャストは、上村侑くんを主演に、筧利夫さん、真飛聖さん、堀部圭亮さん、前野朋哉さんらに加え、滋賀県とゆかりのある方々が脇を固めます。予算の都合で演技力と集客力のある役者さんを揃えられなかったのかもしれませんが、拙い演技は没入感を著しく削ぐので、もうちょっと頑張ってほしかったです。そんな中、矢柴俊博さん、森永悠希くんが、作品にいい意味の緊張感をもたらし、ひときわ存在感を放っていました。

おじゃる