画家と泥棒のレビュー・感想・評価
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映画じゃないの?
すごいものを見てしまったなぁ。
結局リアルな感情表現は演技では再現し得ないのかと。
テーマ的には重く、人間がとても脆いものだと気付かされる。
他の人も書いていましたが、アートが人の心に到達し、その心を揺さぶるシーンを正面から捉えるなんてシーンは撮れる物ではない。
私はその姿を目の当たりにして震えてしまった。
淡々と登場人物の会話が繰り広げられていくだけなのだが、色んな意味人の人生を知れるのが興味深い。
お互いがお互いに対する見解を語るシーンもあるが、諸善は言葉にしたこと、行動で示したことしか他者には伝わらない、という事にも気付かされる。
テーマが重く暗いアートは売れない、商業ギャラリーでは取り扱ってもらえない。
すごくよく分かる!でも人間の本質なんて暗いものだよね〜〜
明るいだけで何の訴求もしないものはアートではなく、消費コンテンツ。
今はコンテンツ優勢でアート劣勢。死んだ頃に求められるようになるのだろうか。
彼らの行く末が気になりました。
別件だけど、泥棒の方はドラッグから抜け出していくのですが、その見かけの変わりようも驚くくらいで、4週間である程度強い普通の人になり、1年服役後にはマッチョに。
ドラッグってこえーーとも思えるドキュメンタリーでした。
奇作
これは本当の話でドキュメンタリーなのか。
アーティストが、自分の作品をラリって盗んだ男をモデルにして絵を描く。 男は完成した絵を見て泣く。
アーティストは直感で泥棒男がただの犯罪者チンピラでないと思い、やがて友情というのか相互同調というのか依存的とさえいえなくもない関係に。
泥棒と盗まれたアーティスト。激しいDVも過去に経験している女性、類稀なる魂の不良である泥棒に心を開きインスピレーションを受け支えようとし、支えられてもいる。恋人には危険でもありモラル的にもどうかと言われるくらい。
振る舞いも、堂々としていて著名なアーティストで、経済的にも豊かなのかと最初は思っていたが、泥棒君に自分もお金がないのに、ご飯をおごってくれたりすると言われたり、アトリエ代も支払えなくなり滞納していたり、実は絵の具剤も恋人に出してもらっていたり、アーティストの女性もそれなりに苦労人で泥棒くんとミラーになっているようなところもある。
2人の関係性や、2人の苦悩がリアルに感じられ、互いを配慮し尊重するところもあり、この人間関係そのものが芸術的と思われる。それにしても、ノルウェーと言う国のおおらかさ、自由さ、服役している泥棒さんよりももっとすごい刺青満載で、看護師さんや刑務所のスタッフや理容店のスタッフが自由なスタイルで仕事をしているし、泥棒くんが道路交通法違反などで服役する刑務所も、日本で学生が住むワンルームより良い物件で過ごし方も人間らしく、日本のそれとはとても比べ物にならない。日本の人は、日本の組織はなぜ個人の自由をここまで奪い嫌うのかと言うことをしみじみ思い知らされた。ハグする抱きしめると言う文化がないことも、日本では隣人や他人や属性が違う人への思いやりや尊重や親しみが持てない、理由なのかもしれないとも思った。奇妙な作品であり、この事件を知り最初から追いかけて、このようなドキュメント作品にした発想力もまたすごい。
ラストシーンで、絵が自分に上書きされていたことが痛々しく、これが芸術である。
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