画家と泥棒のレビュー・感想・評価
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類まれなる人生のカケラを映し出した奇跡的なドキュメンタリー
もともと配信で観ていたのだが、映画館のスクリーンで観ることで得られるものが非常に大きかった。特に表情の機微と、画家であるバルボラさんが描く絵のディティールが、この映画の説得力をさらに増していた。
絵を盗まれた画家と、盗んだ泥棒が出会い、画家が泥棒の肖像画を描こうとする、という導入からして十分に面白いドキュメンタリーだが、ある瞬間を転換点に、類まれなる人間ドラマへとなだれ込んでいく。こんなのはフェイクだ演技だというひともいて、確かにフィクション的な手法も駆使されている。が、個人的には、あんな表情を演技でできるひとがいますか?と思ってしまうし、背景を調べたり当事者である出演者に話を聞いた限り、フェイクだと認定するよな材料は出てこなかった。
まあでも、1000歩譲ってフェイクだったとしても「こんなに面白い映画あります?」なので、考えた人の天才っぷりを賞賛する気になる。そしてそもそも、あらゆる映像作品は切り取りと編集でできているという点で一種のフェイクだし、それは劇中の絵画も含めて「あらゆる表現は複雑に視点が絡み合ってできている」という命題にも触れていて、二重三重に考えさせられる。
そしてドキュメンタリーとして、被写体がこれほどまでに自分たちと人生をさらけ出していることは、監督も含めた奇跡的な出会いと信頼関係がないと成り立たない。ほんとこの映画に参加してくれて、そしてわれわれ観客に人生の一部をシェアしてくれて、心からありがとうございますという気持ちです。
芸術が心を揺さぶる瞬間を捉えた貴重な作品
絵画を盗んだ泥棒と、被害者である画家が友情を育むドキュメンタリー。泥棒は2人組で、主要登場人物となるのはその内の1人のみ。彼はどうして盗んだのか、絵がその後どうなったのか全く覚えていないという。動機と絵の行方という謎を提示して始まる本作だが、ミステリーとしては展開しない。でも、そういうミステリー要素よりも、ある意味謎の深い人の心の問題を掘り下げていく展開となる。
写実的な画風で、心の闇をモチーフに描く画家は、様々な苦しみを抱えている。泥棒の方もその生い立ちと境遇ゆえにドラッグに手を染め、罪を犯してしまっていた。絵画と犯罪、全く異なるが、両者にとってはそれぞれの人生の苦しみを表出するための手段だったともいえる。
絵画に感動して唐突に涙を流す泥棒の瞬間をカメラは捉えている。あれほど人の心が劇的に動いた瞬間を捉えた映像は、なかなかお目にかかれないだろう。あのワンシーを観るだけでも価値がある作品だと思う。
予期せぬ傑作との出会い
ハリウッドが劇映画にリメイクしたいとの事
ノルウェーで絵画の盗難事件が起き、画家は犯人を突き止めるが犯人は「覚えてない」と言うだけ。
画家は、犯人に「あなたをモデルに絵を描かせてほしい」と提案し…
被害にあった画家と絵を盗んだ犯人の事件後の交流を追ったドキュメンタリー。
本作の主役である画家のバルボラ・キシルコワさんのトークイベント付き上映に行ってきました。
配信でも観れるみたいだし、劇映画じゃなくドキュメンタリーだしな…と思ったけど、評価が高いみたいだし、生で主役の方が見れるならと。
結果は大正解!!面白かった♪♪
並んで写真を撮ってもらえたし、サインもらえたし、少し話せたし(笑)
トークイベント時にバルボラさんが言ってた事を少し書いときます。
絵が盗まれた時に旦那さんはバルボラさんに「おめでとう」と言ったらしい(笑)
盗まれるような絵を描いてる、盗まれるような画家になったね、って事でしょう(笑)
もし本作の、この続きを撮りたいと監督に言われたら、どうしますか?の問いに、笑顔で「SAY YES!」と答えてました(笑)
あと、ハリウッドから劇映画としてリメイクしたいとの話があるそうです。
スゴイと思ったけど、このドキュメンタリーは超えられないと思う、たぶん。
それぐらい、いいドキュメンタリーだった。
それに、ドキュメンタリーってより普通の劇映画を観た感じだった。
終わり方というかエンドロールに入る直前も良かったです。
ホントいいドキュメンタリー映画なので、今なら配信でも観れるし、ぜひ皆さんに観て頂きたい作品です。
人には善も悪もどちらもあるのが普通!
馴染みのない北欧映画でStranger@菊川デビュー💜
ポスタービジュアルだけ見て老人の画家のお話なのか〜と勝手に思い込んでたけど、全然違ってた😂
実際にノルウェーであった絵画盗難事件をベースに、その絵画を盗んだ加害者の男と盗まれた被害者の女性画家という稀有な関係性から生まれた出会いからそれぞれの視点でその後のストーリーが描かれていくというドキュメンタリーらしからぬドキュメンタリー。(あまりに構成が秀逸すぎて本当にドキュメンタリー??と懐疑的に思う部分はあるけどそれもご愛嬌❤ ❤ ❤)
前半部分では『善と悪』がしっかりと分けられており、盗んだカール=ベルティルの悪に対してバルボラがまるで光に包まれた聖女様かのように描かれてる。でも話が進むにつれて、実はその聖女にだって闇はあることがわかり…。そもそもアーティストってそうでない人が目を向けない、もしくは背けがちな側面に着目して『美』を見出すことが多いから、その行動だけを取り上げるとわからない人にはそれ自体が『悪』にすら見えてしまう。
一方で『悪の象徴』のはずだったベルティルの明るい側面がアートの力でどんどん解き放たれていき……。
結局2人は同じなのか違うのか。いろんな想像を張り巡らせるのが楽しいこの作品。
いやー、よかったなー。
この作品が観られるならU-NEXTへの加入をリアル検討しようかしら?と思うほど🍀🍀🍀
映画じゃないの?
すごいものを見てしまったなぁ。
結局リアルな感情表現は演技では再現し得ないのかと。
テーマ的には重く、人間がとても脆いものだと気付かされる。
他の人も書いていましたが、アートが人の心に到達し、その心を揺さぶるシーンを正面から捉えるなんてシーンは撮れる物ではない。
私はその姿を目の当たりにして震えてしまった。
淡々と登場人物の会話が繰り広げられていくだけなのだが、色んな意味人の人生を知れるのが興味深い。
お互いがお互いに対する見解を語るシーンもあるが、諸善は言葉にしたこと、行動で示したことしか他者には伝わらない、という事にも気付かされる。
テーマが重く暗いアートは売れない、商業ギャラリーでは取り扱ってもらえない。
すごくよく分かる!でも人間の本質なんて暗いものだよね〜〜
明るいだけで何の訴求もしないものはアートではなく、消費コンテンツ。
今はコンテンツ優勢でアート劣勢。死んだ頃に求められるようになるのだろうか。
彼らの行く末が気になりました。
別件だけど、泥棒の方はドラッグから抜け出していくのですが、その見かけの変わりようも驚くくらいで、4週間である程度強い普通の人になり、1年服役後にはマッチョに。
ドラッグってこえーーとも思えるドキュメンタリーでした。
ドキュメンタリーだと撮れない筈のシーンがちゃんとあるドキュメンタリー。
奇作
これは本当の話でドキュメンタリーなのか。
アーティストが、自分の作品をラリって盗んだ男をモデルにして絵を描く。 男は完成した絵を見て泣く。
アーティストは直感で泥棒男がただの犯罪者チンピラでないと思い、やがて友情というのか相互同調というのか依存的とさえいえなくもない関係に。
泥棒と盗まれたアーティスト。激しいDVも過去に経験している女性、類稀なる魂の不良である泥棒に心を開きインスピレーションを受け支えようとし、支えられてもいる。恋人には危険でもありモラル的にもどうかと言われるくらい。
振る舞いも、堂々としていて著名なアーティストで、経済的にも豊かなのかと最初は思っていたが、泥棒君に自分もお金がないのに、ご飯をおごってくれたりすると言われたり、アトリエ代も支払えなくなり滞納していたり、実は絵の具剤も恋人に出してもらっていたり、アーティストの女性もそれなりに苦労人で泥棒くんとミラーになっているようなところもある。
2人の関係性や、2人の苦悩がリアルに感じられ、互いを配慮し尊重するところもあり、この人間関係そのものが芸術的と思われる。それにしても、ノルウェーと言う国のおおらかさ、自由さ、服役している泥棒さんよりももっとすごい刺青満載で、看護師さんや刑務所のスタッフや理容店のスタッフが自由なスタイルで仕事をしているし、泥棒くんが道路交通法違反などで服役する刑務所も、日本で学生が住むワンルームより良い物件で過ごし方も人間らしく、日本のそれとはとても比べ物にならない。日本の人は、日本の組織はなぜ個人の自由をここまで奪い嫌うのかと言うことをしみじみ思い知らされた。ハグする抱きしめると言う文化がないことも、日本では隣人や他人や属性が違う人への思いやりや尊重や親しみが持てない、理由なのかもしれないとも思った。奇妙な作品であり、この事件を知り最初から追いかけて、このようなドキュメント作品にした発想力もまたすごい。
ラストシーンで、絵が自分に上書きされていたことが痛々しく、これが芸術である。
技法
映画好きにこそ見てほしい
絵を盗まれた画家(バルボラ)と盗んだ泥棒(ベルティル)のドキュメンタリー映画
2020年(ノルウェー製作)
この映画は長編ドキュメンタリー映画ですが、
驚きのストーリーのあるドキュメンタリー映画です。
ドラマティックで感動的な愛の芸術作品です。
映画はバルボラの展覧会から白昼、絵を盗む2人の泥棒の
防犯カメラの映像から始まります。
その映像から犯人の一人ベルティルは捕まります。
そして公判で面会したバルボラが思いがけない提案をします。
泥棒のベルティルに自分の絵のモデルにならないか?
と言うのです。
身体中タトゥーだらけの怪しい男。
そして本当にベルティルがバルボラの家に来て、
絵は描きはじめられます。
(バルボラははじめ執拗に絵の隠し場所を尋ねます・・・
(ドラッグを使っていてまるっきり記憶がないというベルティル・・・
バルボラが描いた3つの絵があります。
①ベルティルと仲間のマックスに盗まれた「白鳥」
②バルボラが描いたベルティルの肖像画。
③ベルティルの上に覆い被さる裸身のバルボラの絵。
②を見たベルティルは子供のように泣きじゃくります。
母親にやっと発見された子供のように。
ベルティルは迷子でした。
①は見つかりました。
もう一人の泥棒・マックスが地下倉庫に立てかけてあったのです。
床の「白鳥」の絵に頬擦りするバルボラ。
愛する絵が帰ってきたのです。
③重なり合うバルボラとベルティル。
ラストに見たこの絵は衝撃でした。
2人はこんなにも互いを必要としていた。
この絵には横たわるベルティルの上に半裸で覆い被さるバルボラの絵柄。
ベルティルはバルボラが前世で産み、育てられずに捨てた赤子。
やはり2人は出会うべき半身。
2人は一枚の絵の中でカッチリと嵌め込まれる2個のピース。
そしてこの映画が素晴らしいのは、バルボラの絵のチカラです。
その絵の芸術性がこの映画を崇高な作品に仕上げる源泉です。
それと共に編集の巧さが際立ちました。
もし編集で時系列や場面を変えたら?
まったく別の映画になる・・・
そんな危惧も感じました。
(Amazonプライムで配信していますので、是非)
画家と泥棒の魂の邂逅
絵画の窃盗事件は世界中で起こっており、その多くは高額な価値がつけられた有名な画家の作品。しかし、本作で盗まれたのは、決して有名ではない画家の有名ではない作品だ。
その上、自分の絵を盗んだ犯罪者に「絵を描かせてほしい」とお願いするのは、パートナーも心配するように、いわゆる“普通”の感覚ではないと思えてしまう。
しかしながら、その“普通”ならざる者たちが邂逅した先には、数奇な友情の形が垣間見えた。
視点を変えて徐々に見せていく構成も良い意味でドキュメンタリーと感じさせない絶妙な働きをしている。盗んだベルティルの内面の闇を見ていくうちに、次第に画家のバルボラの抱える闇も見えていく。人の絵を描くという、「見る・見られる関係」を通して、赦しを超えた互いの深い部分までつながっていくラストには震えた。
展示会から釘を抜いて消えた絵が、再び釘を打って展示される。新たに加わった作品には、「画家と泥棒」の関係を超えた2人の魂の交わりをみた。
分断が進む社会の中で、一見すると交わらざる者たちが交わるとき、そこに光が差す瞬間が見えた。見事なドキュメンタリーだった。
作品が盗まれたことで始まる小さな物語
現在進行形のドキュメンタリーは、時にフィクションよりも印象的な展開が待っている。この作品もその1つ。
作品を盗まれた画家と盗んだジャンキーが接点を持ち続け互いに理解し合う関係に昇華していくにつれ、出来過ぎでフィクションかな?と疑わせる展開だったものの、同時にその視点は社会の影の部分にスポットを当てる作業でもあるように見え、結果的にしっかりと地に足のついたドキュメンタリーだったように思う。
「盗まれた作品」の行方も気になるところだが、それは作品を観て確認してください。
美しいかけがえのないシーン、あれだけでも観る価値がある作品
ドキュメンタリーの強みは、フィクションでは到底及びもつかないような映像を撮れることだと思う。
この作品にもそういうシーンがあって、かなり心を揺さぶられた。美しい、かけがえのないシーンだったと思う。
画家が、自分の絵を盗んだジャンキーのチンピラ?にコンタクトをとりモデルとして絵を描いていくというこの非凡な物語は、なぜこれが成り立つかといえば、画家のバルボラと泥棒のベルティルはどこか通じ合うものがあったからだと思う。ふたりとも極めて危なっかしいのは、死や失うこと、傷が、彼らにとってはそう遠い存在ではなくて身近で親しい存在だから。
カモンカモンを観た時、インタビューされるというのは尊重されることなんだなと感じたのだけど、モデルにされるというのも同じようなことかもしれない。関心をもたれること、経緯を払われること。パンだけじゃなくてそういうものがなければ、人は満たされないのかもしれない。
実話、なんですね。
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