エンパイア・オブ・ライトのレビュー・感想・評価
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人生とは・・・
奥の深い、良質な映画。
テーマがいろいろありながら、どれも丁寧に描かれていて。
言いたいことを飲み込んで、溜め込んでしまう苦しさが、スクリーンを通して伝わってきて切なくなる。
それでも、希望がある。
希望と笑顔と愛がある。
迎えてくれる仲間と、見捨てない人がいる。
そして、映写室。
ここのところ、映写室をよく見かけるけど、リールじゃなくてデジタルになったから?
映写室から放たれる光が、希望の光。
弱者が連帯する困難
2022年。サム・メンデス監督。80年代イギリスの港町。映画館で働く女性は心に問題を抱えて鬱々と過ごしている。職場にやってきた魅力的な黒人青年と親しくなっていくが、ふとしたことから過去のトラウマに捕らわれ、仕事に行けなくなってしまう。一方、青年は日常的に人種差別にさらされていて、、、。暴力に抑圧される人々が連帯することの困難を描く。
幸福な人は同じように幸福だが、不幸な人々はそれぞれに不幸だ、というトルストイ(たしか「戦争と平和」うろ覚え)を引くまでもなく、弱者の連帯は難しい。幼いころのDVで心を病んだ中年女性と、人種差別に苦しむ黒人青年も個別に苦痛を感じており、相手の心の奥底に思いをはせるのは難しい。それでも、思いやることは可能であり、社会に一撃をくらわせる攻撃は可能であり、教育によって現状を抜けだすことも可能である。
映画が現実逃避の手段としか見られていない映画を撮るのはどういう監督心理なのか、といういぶかしさが残る。
ひょっとして名作かも。
イギリスのパッとしない映画館立て直しものだろう、、と予備知識無しで観たら全然違った、凄かった。
ちょいと心を病んだ白人おばちゃんと、イケてる黒人青年の恋、そして光の帝国の住人の優しさと映画愛。
東のハズレの国で当時スペシャルズやマッドネスなんか聞いてジャケ写位しか見てない私はイギリスの若者は黒人白人仲良いなぁ、位にしか思ってなかったがかなり現実は違ってたようだ、、アホだな俺。
エンパイアオブライトの名にふさわしく、全てのカットが本当に美しい、関係者必見。
映画館の美術も最高。
役者のレベルの高さも半端無し。
名画座が似合う作品
「お願いっ!壊さないで!」スキンヘッドの集団が映画館を覗き不悪な笑みを浮かべた瞬間
声をあげそうになった
映画館を取り上げた作品は多々ありますが
「個人的な思いが詰まった作品」と語るサム.メンディス監督が彩や明の表現多きジャンルに移民や人種…失業による貧困と、社会問題…
あえて陰や暗の描写に監督の時代背景への想いの濃さを感じました
80年代初頭の静かな海辺の街にある人気の映画館エンパイアに
黒人青年スティーブンが仲間入りをする
そこには支配人のセクハラに耐えながら心を病んだ過去を持つヒラリーと数人のスタッフ達が働いていた
心の病いを理解しヒラリーに優しく接し黒人のスティーブンにも差別なく対応し家族の様な絆をも感じるスタッフ達(支配人は別)こそ時代の先駆者だろう
しかし現代においてもいまだに心の病いを理解せず差別は無くならないのが残念でならない
お互い過酷な現実に道を阻まれて来たスティーブンとヒラリー…2人それぞれが
人とは違う際立つ何かを掴んだ時
彼は更に成長し彼女は安らぎと和らぎを得る事が出来るはずだろう
ヒラリーを演じたオリビア・コールマン!
磨きかかった演技は名優の勲章を更に一つ増やした程!
対する新鋭マイケル・ウォードの芯のある力強くも繊細な演技!
コリン・ファースにトビー・ジョーンズ
脇を固める役者陣も贅沢過ぎる!
奇跡と感動の物語に心満たされた後
スクリーンに一例し席を立ちました
✳︎80年代にスクリーンを飾った名画達に触発され帰宅後、エンパイアの階段横に貼ってあった「プライベート・ベンジャミン」楽しみました
「おしゃれな映画」
今年33本目。
アカデミー賞撮影賞ノミネート。素晴らしい映像だったと思います。最初がおしゃれ。経験ある女性と若い男性の恋愛。自分も女性の方が年齢が近いのでこう言う恋愛に憧れます。映写技師と男性の映写室でのやり取りが胸を打ちます。先月見たインド映画の「エンドロールのつづき」も映写室が出て来ますが、昔は映画館がフィルムだったと言うのが味わい深い。今作も自分が映画好きなのもあって映画ファンに向けた作品だったなあと。
映画を巡る上質のファンタジー
オリヴィア・コールマンはいつも期待を裏切らない。
それどころか、常に新しい挑戦をして、驚かせてくれる。今回も、ヒラリーの姿に、彼女の演技者としての自分を越えようとする意思を感じた。
ところで、サム・メンデスのこの映画は、予告編ではラブストーリーorヒューマンドラマみたいに感じられるが、私にとっては、上質のファンタジーそのものだった(大好物)。
80年代の映画館を改装して臨んだ美しいロケーション。時代背景は80年代のイギリス南部だが、登場人物の多くは、映画の夢に棲むフェアリーたち。そして、映画への愛が、凝った映像と素晴らしい音楽によって語られている。
廃墟のような屋上レストランの美しさはタルコフスキーを思い起こし、映写室の映写技師とスティーヴンのやりとりは、正にニュー・シネマ・パラダイスへのオマージュ。
鳩をヒロインにわたす青年の手付きは、「波止場」のマーロン・ブランドの姿がかぶる。
海と砂浜のシーンに漂う寂寞感は、明らかに、フェリーニへのリスペクト。
どれをとっても、好みの映像が次から次へと繰り出され、至福のときだった。
1980年代の貧富の分断、レイシズムやジェンダーギャップ、精神疾患への差別・偏見などは、現代にも通じ解決していない問題も多いが、映画館の仲間たちが示す底抜けの理解と優しさは明らかに80年代の現実とはかけ離れている。実は映画の妖精たちだから、愛に溢れた仲間でヒラリーは絶対大丈夫。
コリン・ファースだけは例外で、当時も今もいそうな典型的なエセ紳士の俗物を演じていて、これはこれでとても上手だが、典型的な悪役の妖精。最後にいなくなって実害はない。
ヒラリーがラストシーンで並木通を静かに去っていく姿は、第三の男かな? 戦争の傷が顕なウイーンの街でアリダ・ヴァリは枯れ木と廃墟の中を歩いていったが、オリヴィアを包むのは新緑の美しい木々。希望に満ちたファンタジーの終わり方で、納得がいく。
古風な劇場
を主体にした物語なのかと思ったら、精神的に闇を背負った女性と黒人の青年の恋に色んな事が降りかかって来ます。それを乗り越えて彼らの恋愛がどうなるか?です。ヒラリーはかなり年上の設定ですよね?
ふんわりやさしく、とにかく美しい
今年になって映画がらみの映画が増えている。本作もそう。1980年代初頭のイギリスの映画館が舞台。でも、他の映画館映画のような映画愛に溢れている感じはあまりしない。映画のことなんかほとんど話題にならないし。映画館に掲示されている作品名やポスターでそうかこの作品の時期かー、なんてこちらが想像するだけ。
ヒラリーの孤独、スティーヴンの境遇と遭遇する事件、二人の恋。どこに焦点を当てているのかわからなくなる。ボヤッとした印象。個人的には涙するようなシーンはなかった。
でも印象は意外といい。エンパイア劇場の人たち、劇場でクローズされていふフロアに射し込む光、そしてトレント・レズナーの音楽。ふんわりとやさしくて、とにかく美しい。終わり方も何か劇的に変わったわけではないけれど、明るい印象のラストで悪くない。とても不思議な映画だった。
オリビア・コールマンもマイケル・ウォードもよかった。あれだけ年齢差があるのに嫌な感じがしないのは2人が醸し出す雰囲気のおかげ。そしてコリン・ファース。英国紳士然としているのはいつも通りだが、なかなかのクズを見事に演じていた。こんなのもいけるんだな。
にしてもマイケル・ウォードの美丈夫っぷりときたら‥
劇中トビー・ジョーンズ扮する映写技師が解説するように、映画とは決して画像自体が動くわけではなく、静止画を連続してスクリーン上に映しているに過ぎないから、静止画と静止画の間に必ず暗闇が発生する。しかし一秒間に24コマの静止画を連続投影することによってこの暗闇は消え、あたかも画像が動いているように見える。映画とは人間のこの錯視のメカニズムを利用することによって成立している。つまり我々は映画を観る際、その美しい光と同量の闇を観ることになる、或いは美しさとは闇の別名である、とか。さすがにこれは飛躍しすぎか。
この映画での80年代初頭の英国地方都市の映画館は、はからずもマージナルな立場に置かれた登場人物たちが集うシェルターの機能を呈していた。私のような不出来な人間もまた、自分の似姿としての映画に、これからも助けを求め続けることになるのだろうな。
チャンス
人生五十年生きていると、こういう映画が身に沁みる
二十歳ぐらいで観ていたら、ただの退屈な映画に感じていただろう
オリビア・コールマンをはじめトビー・ジョーンズやコリン・ファース(裏切りのサーカス組)の芸達者が脇を固め、他の役者陣みんないい!
役者の表情で泣かされる
映像の美しさと切なさですかね?
大したはなしでもないのに、妙に惹きつける魅力があります。
停滞の時代の英国のどんよりした雰囲気が曇天の海岸添いの地方都市に浮かびように映し出されます。画面画面の構図と図柄が、才能としかいいようのないセンスで繋がります。
さすが007を任される監督、平凡な話をドラマチックな語り口で飽きさせません。
しかし、オスカー女優の演技力は凄まじい限りです。
人それぞれの刺さり方
往年の映画ファンなら、グッとくるんだろうなあとは思うんだけれど、私はあまり映画文化に思い入れがないので、ので、そこはスルー。
エンパイア劇場をはじめとする、映像がとても美しく、全編、光と影が印象的だった。
わたし的には、
自分と年齢的にも近く心が不安定なヒラリーに、思い入れてしまって、心に刺さりまくりだった。
オリヴィア・コールマンの名演技があってのことだと思うけれど。揺れ動きすぎる彼女に、こちらも揺さぶられっぱなし。
スティーブンもとてもいいけれど、映像技師のノーマンや同僚のニールと、ヒラリーの距離感もすごく好きな感じだ。トビー・ジョーンズ好きなんよね。ノーマンの出てくるシーンは、どこもすごく良くて これが名優というものかと思ったり。
自分的には、最高の映画だった。文句なしの満点評価。
この映画のような世界が、早く終わることを祈るばかり。
サムメンデス&オリヴィエコールマンというだけで、映画館に足を運ばせるには十分すぎる。いつものように事前情報は極力排して臨んだものの、予告でコールマンの表情が、何を表すのかかなり気になるところではあった。
共にある種の痛みを抱える人々の物語。互いに癒しを求め合う関係は、設定は違えど「希望の灯り」を思い出させた。1980年代よりも、より理解が進んでいると思われる現代でも、変わらず深く根を張るテーマであることは変わりない。
映画は静止画の連続でその間は暗闇なんだ。
イギリス映画は、映像と音楽に、成熟した国の文化を感じるんだよなあ。舞台は1981年1月、憧れていたかっこいいイギリスの頃だ。だけどこの頃をピークとして、(むしろそれ以前からすでに)かの国は停滞し、文化は爛熟から下降へと。そう、激甘の熟れた果物が実を落とすように、差別や貧困や失業という社会問題が増えていく。そんな時代の、一地方の映画館を舞台にした物語。
心を病んだ中年女性と、黒人青年の交流。それはそれで、二人の心が通い合う感情の揺れ動くさまは美しくもある。だけど、なぜそう容易く(少なくと自分にはそう見えた)肉体関係を持っちゃうかなあ。そこを求めない、そういう欲望さえもない方が、物語として美しいと思うだけど、それは国民性の(もしくは単なる自分の好みの)違いなのか。相手に強めの好意をもつという感情は、性欲へとなるのか。堅い信頼由来の友情関係では満足できないのか。男と女の友情ってないのか。中年と青年の友情も、白人と黒人の友情もないのか。そのせいかな、オリビア・コールマンがいつのまにか寺島しのぶに見えて仕方がなかったのは。
そんなことを言ってるくせに、あとからさざ波のように押し寄せてくる余韻は、やはりあの映像や音楽に彩られて、美しい記憶として残っている。自分の中の美しい思い出も、こうして記憶されているだろうなあ。一瞬一瞬の静止画のように。その間が暗闇(苦い経験とか)であることを忘れたかのように。むしろ、暗闇に挟まれたからこそ、思い出は輝き、美しいのかもしれないけど。
女王陛下vs.英国王
パンチDEデートの桂三枝的には、エンパイア劇場と言うよりも…オリビア・コールマン劇場!(古すぎ)。特に、統合失調のよくないときの状態でスティーブンにまくし立て鬼気迫る様子は、ヤバいよヤバいよーと呟きたくなるほど圧倒的。プレミア上映のいきなり舞台挨拶でも、歯に口紅に付いてるとかの細かい演出がよかった。
日本だったら、こーゆー人は腫れ物に触る扱いをしそうだけど、職場のノッポ君にパンクな姉ちゃんはじめみんな優しくいい人たちで(元英国王除く)、ヒラリー復帰時のお祝いシーンには思わず泣けた。人間の脳はコマとコマの間の闇は認識できないというトビー・ジョーンズのセリフがすべてを物語っていて、終盤、映画館に勤めながら映画を観たことがなかったヒラリーがスクリーンの光を見つめるシーンでまた泣けた。
最近、立て続けに公開される「映画を描いた映画」はバビロンしか観ていないのだが、本作は色々な差別や抑圧を描きながら、暗闇に身を沈め映画を観ることがその救いとなっているという点で、チャゼることなく、とても上品かつ上質。作品の舞台は、スクリーン前にステージがあって両脇に彫像が立ち、絨毯が敷かれた大理石の階段を上がってホールへ向かう。まさしく劇場であり、シネコンばかりの現代日本にはこんな映画館はどこにもないだろうから、せめて丸ピカの2階席とかで観られたらより雰囲気が感じられたかも(しかし丸ピカで上映はなし)。
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