エンパイア・オブ・ライトのレビュー・感想・評価
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素晴らしい映像と音楽! エンパイア劇場、海辺の町、アパートメント、...
素晴らしい映像と音楽!
エンパイア劇場、海辺の町、アパートメント、ビーチ、レイシストの暴動、すべてが心に焼き付いた。
この映画は、映画館に係わる様々な人々の人生と、映画館そのものに光をあてた、賛歌なのだろうと感じた。もう一度みたい。
映画館で観る美しい映画館の映画
イングランドの海岸沿いにある映画館が舞台なのだが、この映画館がとにかく魅力的。ロケ地は元映画館の建物、ドリームランドシネマという所だそうだ。目の前に広がる砂浜も併せて一度行ってみたい場所になった。
そんな映画館を中心に物語は進行する。精神的に弱い中年女性、1980年頃まだまだ立場の弱い黒人男性の交流がストーリーの軸となる。激しくぶつかるシーンや人種差別など感情の起伏を誘うシーンもあるが、全体的にはゆったり流れる海辺の物語。時折出てくる映写技師の老人がいいアクセントになっていた。
全体的に心地良い作品。普通の映画館で観た美しい映画館。普通のスクリーンの奥にあるゴージャスな引割幕付きのスクリーン。何か不思議な気分になる映画でした。
イギリスの海辺の風景が綺麗
1980年代、イギリス・マーゲイトの映画館・エンパイアで働くヒラリーに、映画館で働くことにした青年スティーヴンが現れた。彼らは少しずつ心を通わせていき、生きる希望を見いだしていくヒラリーは・・・てな話。
エロ全開のオリビア・コールマンの名演に尽きる。
館長との好きでもないセックスで何か満たされていたのかはわからないが、パワハラ・セクハラ上司はどこにでもいるし、当時そんな言葉は日本には無かったからイギリスでもまだそんなに言われてなかったかも。
心に傷を負っていたヒラリーが黒人の青年の正論にハッとしたり、館長の晴れ舞台でドレスのバックが開いてたり、歯に口紅が付いてたり、もヒラリーの心の高揚を表していたのかな。海辺の街、マーケイドの美しい風景も良かった。
薄く観るとエロくておかしなおばさんの話のようにしか見えないが、題に光があるということは、光と影、色々深いものがありそうにも感じた。
趣きある作品です。
“靴下”の違い、、
コリン・ファースの、テーブルにドカッと投げ降ろすヒラリーに向けた裏の黒く汚れた靴下と、
マイケル・ウォードの、傷を癒やしてやがて空を飛ばせてくれるために包み込む白い靴下。
普段あまり目にしない、でも大切な部分。ここを演出に使うメンデス監督に感嘆しました✨
人が口にするウイスキーを置いた卓上、年明けに無理から誘った女性に向けた汚れた靴下は本当にイラッとしたなあ怒
サム・メンデスが全て自分で書いた脚本
ディーキンスによる最高峰のシネマトグラフィー
コールマンの圧倒的な演技
ただヒラリーとスティーヴンが互いになぜ惹かれているのかが
ロマンティックに描かれていない
失業率の高い80年代のイギリスを背景に
人種差別と女性のメンタルヘルスを
懐かしいフィルム時代の劇場で感動的に包もうとしているが
ヒラリーもスティーヴンも本当に映画や劇場が好きなのかも疑問
スティーヴンも映画じゃなくて建築を勉強したいんだっていう・・・
キャラと舞台背景の関連性が薄い
意外だったり、さもありなんと思ったり、
さて、アカデミー賞の発表も近づいてきましたが、本作も「ノミネートされている作品」として鑑賞に臨み、観終わって感じたのは「あぁ、サム・メンデスに監督賞獲ってほしい」と言う想い。映画のレビューもそこをとっかかりに書き始めようと思いながら帰宅し、改めてノミネーションをチェックしたところ、なんと該当は「撮影賞」だけ。「そんなアホな」と思ったので結局レビューのとっかかりはこうなりましたw
まぁそうですよね、サーチライト・ピクチャーズは『イニシェリン島の精霊』があるわけで、そちらに比重が大きくなるのは納得しますが、でもはっきり言いますが『エンパイア・オブ・ライト』素晴らしいです。ディズニープラスでの配信を待つという判断に異は唱えませんが、押さざる得ない気持ちも捨てきれません。
特に近年において「この人が出演なら取り敢えず観ておかなきゃ」と思わせるオリビア・コールマンは今回も間違いありません。お決まりの「何とも言えない表情」はヒラリーと言う役が最早「オリビアに当て書されたとしか思えない」と思い、「あれ?まさか??」と思って念のため調べたらなんとサム・メンデス、オリビアに当て書きしたらしいw要するに、私も自分で思っている以上にオリビアが好きなのでしょう。今作でも素晴らしいです。
そして、そのオリビアにも引けを取らないほどの素晴らしい演技で魅了してくれたのが、スティーヴン役のマイケル・ウォード。彼の出演作品は初めてでしたが「よくぞキャスティングしてくれた」と思える説得力ある演技。ヒラリーという先進的で鋭く、そして正しく当たり前であるべき感受性の持ち主が停滞しそうになるのを、常にけん引しつつ、そしてお互いが素直になれる相手として大事に思い合う姿はグッときます。
コロナの反動や時代感を意識している感の強いアカデミー賞ノミネーション、という印象がありますが、むしろ実力があるのに取りこぼされたと思えるほど、大切に思える作品でした。
黒人青年と白人年増女の恋には、越えるべき壁が。しかし全体的に温かみのある映像と、希望を膨らませる結末にこころがほっこりする作品です。に
近年は「007」シリーズなどの大作に携わってきたサム・メンデス監督が、コロナ禍のさなかに構想したヒューマンドラマ。彼自身が青春期を過ごした1980年代初頭を背景に、海辺の映画館で働く男女の人間模様を綴った作品が本作です。
ここのところ、映画館や映画作りにまつわる作品の公開が続いています。インドが舞台の「エンドロールのつづき」(公開中)、スティーブン・スピルバーグ監督「フェイブルマンズ」(3月3日公開)、そして本作。コロナ禍で映画館の衰退、映画の危機が叫ばれた影響なのでしょうか。ただし、他の2作がいかにも映画ファン的だったのに比べ、本作はより社会性が際立っています。映画にまつわる映画はすこぶる多いなかで、英国の映画館を舞台にしたこの作品は上出来の部類に入ることでしょう。さすが「アメリカン・ビューティー」で第72回アカデミー賞の作品賞を受賞したメンデス監督ならではです。
1980年代初頭、英国の海辺の町にある歴史を感じさせる映画館「エンパイア劇場」は、支配人のエリス氏で(コリン・ファース)と、マネジャーのヒラリー(オリヴィア・コールマン)や映写技師のノーマン(トビー・ジョーンズ)のほか数名のスタッフによって運営されていました。
ヒラリーは、かつて心を病んだこともあり、感情をあまり外に出せませんでした。加えて身勝手な支配人のセクハラにも耐えていたのです。心を病むヒラリーを支えるのは仲間の従業員たち。そこに新たにスタッフに加わった黒人の青年、スティーヴン(マイケル・ウォード)とは、挫折経験のある者同士として互いに引かれ合っていきます。
スティーヴンは、黒人にまつわる様々な差別に屈して、すっかりある夢の実現を諦めていました。けれども人種も年齢差も越えたふたりが恋に堕ちていくなかで、ヒラリーの欝屈した日常が代わりだし、またスティーヴンも諦めていた夢に再び向かっていくことを決意するのでした。
見かけはメロドラマ風ですが、黒人と白人でしかも女性のほうが30歳くらい年上という世間から白い目で見られてしまうカップルの誕生。でも物語を見ていく内に、そんな人種や年齢の違いが全く気にならなくなりました。
なので全体を包む印象はとても温かいのです。名手ロジャー・ディーキンスの撮影の効果もあると思います。でもなにより、映画館という空間への格別な思いが、全てを融和させる効果を生んでいるのだと思います。「エンドロールのつづき」のラストシーンでも描かれたように、映画館はどんな人も受け入れ、笑わせ泣かせ、いっとき時間を共有させる「光の帝国」なのだということです。映画愛を、劇場従業員たちの 疑似家族めいた睦まじさに象徴させていることも功を奏していると思います。
しかし本作はスティーヴンが受ける人種的な差別もしっかり描かれています。サッチャー政権下である。高い失業率、移民排斥、人種差別、暴動。スキンヘッドのバイクの大行進が劇場を揺らすのです。極めつけは、黒人排斥の若者たちが暴動を起こし、劇場を襲撃。スティーヴンが重症を負わされてしまうのです。おまけに暴動に怖じ気づいたヒラリーは、スティーヴンの見舞いにも怖くて近づけなくなってしまうことに。
スティーヴンは、母も自分も、そして自分の子供たちもみんな差別で苦しみ続けるのかと嘆き悲しむのでした。
これらは実際に英国育ちのメンデス監督が若い頃、身近に感じていた問題だそうです。そして一方、監督は自分の母親が周期的に精神に混乱をきたすのを見て育ったというのです。その母の面影が、ヒラリーに重ねられているのでしょう。差別と病に関わる描写が切実なのも当然だと思います。
ところで本作でもう一つの主役といえそうなのが、エンパイア劇場という巨大な舞台装置です。アールデコ調の内装が厳かな歴史を感じさせる一方、静かに朽ちかけているこの映画館には、廃虚のような立ち入り禁止の場所があったのです。そのひそやかな空間で主人公らが心を通わす描写が素晴らしいのです。ぜひご期待ください。
陰陽
鳩のいた廃墟状態のラウンジがとても良い雰囲気
稼働してるフロアも人が居なく明かりが消えていると廃墟のよう
明かりがつくと息を吹き返す感じがとても良い
ヒラリーは自分とは真逆のスティーヴンの眩しいくらいの若さや美しさに惹かれ、
蓋をしてしまっていた心が再び揺れ動く
劇場で観るべき作品
•薬よりも大切に思える人の方が効くんだ
•そう思える人は年齢も何も関係ないんだ
•そんな人とはちゃんと向き合わないといけないんだ
•本当に信頼し合える二人には紆余曲折が必要なんだ
•劇場の光には、人を癒す力があるんだ
お互いに好きなものを共有し合えたり、アドバイスし合えたりする二人の輝きは、そんなことを感じさせてくれました。
気が付くと、終盤ではオリビア•コールマンと一緒に、スクリーン眺めながら涙していました。
観に行くのがスキなわけですが、劇場で働けるって良いなーと改めて感じました。
まさかの…長年の謎が遂に!!
映画館で働き、心に闇を抱えた女性ヒラリーの前に、新任として現れた青年スティーヴン。夢を諦めここで働いているという彼と心を通わせ、少しずつ光を取り戻し始めたかに見えたが…といった物語。
まぁまぁの暮らしを送るように見えて、どこか燻っているような雰囲気のヒラリー。落ち着いた大人の女性かと思いきや・・・え!?これが結構なかなか・・・。
寂れた3,4番スクリーンの雰囲気も味があって良いですねぇ~。嘗ては人であふれていたであろうこの場所は、どんなメッセージを投げかけていたのかな。
全体を通し、日常に潜む悩みや、差別のような大きな問題も取り込みつつ、劇場のスタッフは皆暖かで微笑ましい。こんな仲間に囲まれているのは素敵ですね(1名除く)。
お気に入りキャラはノーマン。チケット売りならだれでもできる…なんて言うようなちょっと嫌なヤツかと思ったけど、フィルム技師としてのお話は本当に素敵。ストレートではないけど、見えているものが全てじゃないというか、光の前ではちょっとの暗闇など・・・といった意味合いなのかな。
夢を諦めかけるスティーヴンや、若いスティーヴンと近づきつつも・・・なヒラリーの心情を示していたように感じましたね。
ヒラリーの頼みを聞き終え、映写室を背にする姿・・・ひとりの職人が背で語る。。彼の物語も気になりますね。
本作、人生は逃げてはいけないということを教えてくれますね。
「覚えてない…」。。もしかしたら、振り返ることもできない程些細なことで、逃げて失ったものは大きすぎるものなのかもしれないなぁ。
スティーヴンのお母さんのちょい複雑そうな表情を見るに、何もかもキレイな話では済ませられないかもしれないけど、それでもね。
終始、切なさの中にも暖かさを感じるような名作だった。
そしてそして‼本筋ではないが、ワタクシにとって衝撃的だったのは「チェンジマーク」‼
実はコレ、まったく知りませんでした。
子供の頃にみてたドラえもん映画のビデオなんかにも出てきてて、当時は「たまに出てくるまっくろくろすけ」なんて呼んでおりました。それでいて、ちょっと怖がってもおりました(笑)不気味だった。
ワタクシ自身、映画を沢山観るようになったのはここ数年のことなので、チェンジマークの詳細など全く知らず、本作は内容も素晴らしかったのですが、云十年越しに子供の頃抱いていた謎をいきなり解き明かされて、おおきな衝撃を受けました(笑)‼
さて、だいぶ脱線したレビューになってしまいましたが、今後もワタクシの知らない知識を、映画に沢山教えてもらいたいと思います!
なんか心地いい
1980年代初頭、イギリスの海辺の町にある劇場で働く者、働く者の日常の話。
過去の出来事もあり精神病を患ってるヒラリー、劇場に新人で入ってきたスティーヴンとの出会いで始まるストーリー。
なんか心地のいい作品ってのが率直な感想。
洋画の字幕は途中でウトウトしてしまってストーリーが把握出来ないって事が多いんですが、終始いい雰囲気、私個人的には凄く良かったです。
中盤過ぎた辺りでの暴動デモで被害にあってしまうスティーヴン・・・からの入院、怪我も徐々に回復、ヒラリーがお見舞いしてからの看護師の母とヒラリーの握手のシーンは母親側の心情は何だったんだろう?
握手の意味は、ありがとう?スティーヴンをよろしく?何かしらいい意味だとは思うんだけど何か泣けた。その後ヒラリーが劇場に向かい1人で映画を観るシーンも良かったし泣けた。
何か引き込まれるいい作品でした!
あと映画好きには堪らない劇場側の裏側を見させてもらった感じで良かったです。
おばさんの情事
全体的にとてもオシャレ。
まず画面の配色。海岸の水色と白、オレンジのセーター、スクリーンの幕の赤とか。多くの名作を生みだしてきたロジャー・ディーキンスの撮影の手腕が遺憾なく発揮されている。
それにポスト・クラシカルなトレント・レズナーとアティカス・ロスのサントラが、とても柔らかくて耳に心地いい。
登場人物が、それぞれに問題を抱えながらも、人と人の絆の中で生かされているさまが、じんわりと心に染みる。
サム・メンデスは、007みたいなアクションだけでなく、こうした詩的な小品もうまいね。
♪誘われた映画はまぶしすぎた♪
誘われた映画はまぶしすぎた。
『チャンス』
ピーター・セラーズがクルーゾー警部、
ゼンダ城と(フーマンチューはチャンスの後で、確か亡くなった後だったような記憶が、、)コメディアンという認識しかなく、『チャンス』を観て驚き(志村けんが『生きる』のような作品に出て、それが遺作になるような、、、)、
ブルース・ブラザーズのめちゃくちゃぶりに映画の基本形をI saw the lightと知った気になり、
オール・ザット・ジャズで、
陽気なはずのミュージカルで、
byebye happiness hello loneliness、
人の暗部を見た気になった中学生の頃。
同時代にリアルタイムで映画を観た人たちにとっては懐かしい。
映写機の背後では、
社会が、時代が、リアルに現れていて、鉄の女と言われていたサッチャー政権が始まり、
ピストルズが、no future を繰り返していた。
♪はらはらしどうしのエピローグにはおもわずうつむいた私です♪
『裸足の季節』松田聖子より
ちょっとノスタルジーが過ぎない?
ハラハラしどうしでうつむきました。
エリザベス女王、アン王女、本作のようなキャラクターも変わりなく演じ切ってしまうコールマンは素晴らしい。
日常に社会に馴染めない人たちの、
一面だけしか描かない?
同年代なら充分に理解できる、
ビデオもPCもない、
デジタルと言えば時計と計算機のみ。
日本では松田聖子のデビュー曲が流行り始め、『ヤング・マスター 師弟出馬』ジャッキー・チェンのアップデートにも驚いていた頃、
サム・メンデスは映画に何を観ていたんだろうか?
ブリティッシュなビューティをやるには生すぎたのか、映画に引っ張られすぎたか。
ノーマンのドン・コルレオーネ風のドア閉め、、、ノーマン!グッドチョイス!はわかるけど、、、。
It's alright,Maはイージーライダーへのリスペクト?(ディランがピーター・フォンダに使わせなかったというのはもはや都市伝説。)
バイクの集団は、スティングも出てた、
さらば青春の光、か、、、etc
「映画館」が好き
大学生のころ家の近くのシネコンで働いていた。映写を希望部署で提出したが、配属されたのは飲食売店、後にチケットもぎりに異動したが、結局4年間で映写の仕事をすることはなかった。たまたま知り合いの先輩が映写部署におり、バイトの後時折映写室をのぞかせてもらっていた。当時すでにほぼ自動化されていたため、劇中のような映写機の切り替えや、手動での巻き戻しなどは行われていなかったが、巻ごとに分けられたフィルムをつなぎ合わせる作業台や、大型の映写機などは今でも魅力的に思い出せるものである。
そんなわけで、本作では映写技師のノーマン(トビー・ジョーンズ)のキャラクターに惹かれた。往年の映画スターの切り抜きのピンナップに溢れた映写室。途中スティーブン(マイケル・ウォード)に映写のいろはを教えるシーンはたまらない。自分もあんな映写室で、あんなベテラン技師に教えを請いたいと思わされる。そして彼が、自分の息子についての後悔とともに、ヒラリー(オリヴィア・コールマン)に対して、入院したスティーブンの見舞いに行くべきだと伝えるシーンが特に印象に残った。映写室はノーマンの「家」であり、映写機は彼の「息子」であったのだと思う。しかし彼の本当「家」は劇中では描かれず、「息子」とは10年以上疎遠であり、なぜそうなったか理由も覚えていないほど、もはや修復は不可能な状態であることがわかる。取り返しのつかない過去だからこそ、それが悲しいものであっても、人生の中で美しく輝きを放つのである。失恋は美化されるとよく言われるが、良かれあしかれすべての思いでがそうなのだろう。
本作ではそんな「輝かしい過去」が美しく、ノスタルジックに描かれる。それはもう使われなくなった3・4番劇場であり、展望レストランである。ヒラリーとスティーブンにとっては、互いの思い出が「美しい過去」になっていくことを予感するラストに胸が打たれる。
そして本作は「抑えがたい思い」についても描かれている。ヒラリーとスティーブンの、人種も年齢も越えた愛が描かれているが、それ以外にも、スティーブンの大学への思い、先述した通りノーマンの映写に対する思い、あまり共感したくはないがエリス(コリン・ファース)のヒラリーへの情念も「抑えがたい」思いなのだろう。そしてそれは、我々の「映画に対する思い」を映し出したものなのではないか。
コロナ禍以降、そして時を同じくして動画配信サービスが普及した現代において「映画館で映画を見る」という行為は、人々から遠い存在になっているように感じる。決して安くはないチケット代と決して暇ではない時間を使って映画館で映画を見なくても、ちょっと待てばすぐに配信され、下手するとテレビで放送される世の中である。私自身「これはそのうちテレビでやるだろうな」と思って敬遠した作品も少なくない。(本作のパンフレットにも、しっかり同じサーチライトピクチャーズの『ザ・メニュー』の配信宣伝記事が含まれている。まだ2か月しかたっていないのに。)それでも映画館に行く理由はだた一つ「映画が、ひいては映画館が好きだから」である。理屈で考えれば、映画館で映画を見るメリットはもはや「大画面で見る」以外にない。大規模映画館は既にフィルム上映ですらないのだから。それでも私が映画館に行くのは、理性では抑えがたい映画館に対する愛情があるからである。 そんな「映画館で映画を見る」という行為への、「抑えがたい愛情」が随所に見られる映画であった。
映画館で映画を見るという行為はとても個別的、自己陶酔的な行為である。あの暗い、会話の許されない空間では、作品と自己との対話以外、できることがないからである。しかし映画によって、人と人とはつながりを持つことができる。そんなことを思い起こさせてくれる良作であった。
「感動」を前面に出した予告編は間違いじゃないけど、意外にハードな要素も盛り込んだ一作
ドラマの語り手として評価の高いサム・メンデスが監督を務めている上、オリビア・コールマンを主演に迎え、舞台は1980年代初頭のイギリスの映画館、となると、予告編で強調されるまでもなく、重厚で感動的な人間ドラマが展開することが容易に想像つくし、実際その期待には十分に応えてくれる作品です。
しかし当時のイギリスは、生活不安に根ざした移民排斥運動が過激化していた時代でもあり、そうした時代の陰がこの物語にも覆い被さっています。さらに映画館のマネージャーとして穏やかで安定感のあるヒラリー(オリビア・コールマン)の別の側面が見えてくるにつれて、単に昔の映画館文化を懐かしむノスタルジー映画でもなければ、感動一辺倒の人情ドラマ、といった枠には収まりきらないハードな展開となっていきます。
つまるところ「映画」とは壁に映し出されたイメージに過ぎない訳だけど、それに対して人は何を託し、イメージは何を提示するのか、端的に示してくれる場面には、映画の可能性を信じ続ける強い意志が感じられます。フィルム式の上映方式だからこそ説得力のある場面です。
『1917』(2019)に続いてメンデス作品で撮影監督を務めたロジャー・ディーキンスの映像は相変わらず非常に美しく、逆光から浮かび上がるシルエット、曇りの外光が照らし出す室内や人物の柔らかな姿、表情豊かな後ろ姿など、一つひとつの映像が脳裏に焼き付くほどです。程よい上映時間に十分な要素を詰め込んだ作品だけど、どうせなら今回あまり前面に出なかった劇場スタッフ達のドラマも観たかったところ!
タイトルなし
この映画は評判いいし、私もとても好きな映画でした。
サム・メンデスの映画愛に溢れた撮影法にはうならされたし、主人公の熱演もいい。
ただ問題提起という面ではすべてが、残念ながら中途半端になってしまったので惜しかった!
若い青年の前途を思っても、すべてが点描するだけで解決するわけでもなく…
しかし今の社会情勢を見ても、少しも前進していないテーマもあり、難しいのかなぁ
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