「エンパイア劇場に次々と照明が灯る」エンパイア・オブ・ライト 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
エンパイア劇場に次々と照明が灯る
懐かしさ暖かさを感じる映画でした。
古き良き時代の豪華な映画館。
ノスタルジーの波が、うねりのように押し寄せてきて心地よい。
1980年代のイギリス映画館「エンパイア」を舞に移民への差別や、職場の上司のハラスメントを穏やかに語るときも、
どこか間接照明のように暖かい光りに満ちています。
そして《生きる事の痛みと不安》を表現するオリヴィア・コールマンのヒロイン像にも深く共鳴しました。
1980年。
イギリスの静かな港町マーゲイトの映画館「エンパイア」。
マネージャーのヒラリー(オリヴィア・コールマン)は孤独な中年女性です。
若くも美しくもありません。
スタイルもぽっちゃり体型です。
自律神経失調を抱えて心療内科に通院しているヒラリー。
でも事情を知る同僚は皆一様にとても優しい。
映画館「エンパイア」が影の主役です。
映写技師のノーマンが映写室も隅々まで案内してくれます。
「エンパイア」劇場はゴージャスで格調高く美しい。
スクリーンが4室もあった隆盛期に較べれば、映画の人気もやや斜陽になり
今は一階の2つのスクリーンしか営業していません。
3階も以前はピアノの弾き語りやバンド演奏のあるクラブだったようです。
(どんなにか着飾った紳士・淑女で賑わっていたのでしょうね。)
今では空室部分には鳩が住み着いています。
ヒラリーの職場に新しい従業員が入って来ます。
黒人の若者スティーヴン(マイケル・ウォード)。
大学へ行きたいが上手くいかず夢を諦めている。
ダークスーツの三つ揃いにソフト帽を被ったお洒落さん。
顔立ちの整ったハンサムボーイさん。
20歳以上の歳の差のあるヒラリーとスティーヴンは、
大晦日の夜に「エンパイア」の屋上でワインで乾杯して花火を見た事で
急接近します。
カウントダウンの後にキスを交わす2人。
そして2人は3階ののクラブ跡で愛を交わす恋人関係になるのです。
一方でヒラリーは劇場の支配人エリス(コリン・ファース)から
酷い扱いを受けています。
支配人室に呼ばれて性接待を強要されているのです。
映画館「エンパイア」
ガラス張りのチケットの売り場があり、
1階の中央にはポップコーンや甘いお菓子の売られているコーナー。
ポップコーンは量り売り。
一階のホールに照明が灯るシーンは夢のようです。
1980年初頭のイギリスはサッチャー政権で不景気の真っ只中。
酷い首切りとストライキ。
それに移民たちへの差別とデモ行進。
黒人と白人の対立が酷く、移民への風当たりが強い。
デモや衝突がしょっ中起きている。
黒人青年と白人中年女性の交際はそれだけで
目立つしスキャンダラス。
ヒラリーとスティーヴンのデート。
真っ赤な2階建てバスでビーチへ出かける。
2人は固く手を握っている。
そして砂のお城を作り、
スティーヴンの元恋人の話しで機嫌を損ねたヒラリーは砂のお城を
壊してしまう。
この映画は建物や海辺のに面した映画館そして舗道も季節も
すべて色彩が美しく映像がなんともロマンティック。
だが黒人を好きになった自分に強いプレッシャーを感じるヒラリーは
次第に精神に変調を来して行く。
統合失調症のヒラリーは、多分、病気が重くなるとともに、
被害妄想が高じてきて、攻撃的になるのだと思う。
エリスの企画した
「炎のランナー」のプレミア上映会で飛び入りのスピーチをする。
そしてホールで今までの鬱憤を晴らすようにエリスの妻に、
エリスのヒラリーへの蔑視やセクハラを暴露してしまう。
そして白人と黒人のデモと抗争の日、暴徒が正面玄関のガラスを叩き割り
「エンパイア」に雪崩れ込んでくる。
そしてスティーヴンは白人のレイシストの標的となり、激しい暴力を受けて
大怪我をする。
とても悲しい現実なのですが、サム・メンデス監督はそれを決して解決のつかない
悲劇として描きません。
どこか暖かく、そして柔らかい視線です。
「詩が好きで良く暗誦しているヒラリー」
映画館に勤めているのに映画を観る時間のないヒラリー。
スティーヴンはヒラリーに映画を観ることを勧めます。
「ブルースブラザーズ」「レイジングブル」
「オール・ザット・ジャズ」「トランザム7000」
「ピンクパンサー」などの題名が会話にのぼります。
「炎のランナー」は支配人のエリスの希望で大々的に
プレミア上映される映画。
(炎のランナーって、ユダヤ人差別を描いた映画なのに・・・)
ラストでヒラリーがノーマンに頼んで映写してもらうのは、
ノーマンお薦めの「チャンス」です。
(私は名前も知らない映画です)
映画館へ足を運ばなくても映画の観れる今日この頃です。
サム・メンデス監督はだからこそ、
改めて映画を映画館で観ることの価値と素晴らしさを、
伝えたかったのかも知れません。
共感とコメントバックを有り難うございます。
琥珀糖さんのレビューは、素敵な散文詩のようですね。
そうです。おっしゃるように、間接照明の柔らかさと暖かさだったんですね。そして、照明に照らされているうちに、観客はいつの間にか、ノスタルジックな夢を見ているのです。
この女優は超大物ですね。キス💋💏程度にとどめておけばいいのに❗️と思いました 美しく無いディープラブシーンは誰得❓❓❓だと思いました。正直、ラブシーン ゲロ吐きたいレベルで気持ち悪くなってました。【比喩では無く、ホントに本当のこと実感、事実リアルなので 表現申し訳ないです🙇】御大サム・メンデス が女優に忖度し過ぎ と感じました。イイねありがとうございました😭😊以上全て私見でございます。
琥珀糖さん
こんにちは
素敵なコメントいただきありがとうございます。
フォローもしていただきありがとうございました。
そうですね。今は配信でなんでも観れてしまう便利な時代ではありますが
やはり、劇場で観ることに価値があるということを
監督の思いが伝わってきますね。共感させていただきます。
こんにちは~
共感、コメント、フォローまでありがとうございます!
私もエンパイア・オブ・ライト好きですよ~
世界観、雰囲気、観てると心地よく流れる時間って感じで。
Disney+で配信されるとわかっていてBlu-ray買った私ってバカですかね?(笑)
その位好きです!
よろしくお願いします🙇