「あの頃海辺の映画館で」エンパイア・オブ・ライト カールⅢ世さんの映画レビュー(感想・評価)
あの頃海辺の映画館で
サッチャー政権時代、海辺の映画館で出逢う親子ほど歳の離れた男女のせつないラブストーリー。
映画館のスタッフ、ヒラリー役に女王陛下のお気に入りのオリビア・コールマン。
トリニダードトバゴからの移民の青年スタッフ、スティーブン役に新人マイケル・ウォード。
ステファンの母親(看護師)役にベテラン舞台女優のターニャ・ムーディ。
映写技師役を名脇役トビー・ジョーンズ。
英国王のスピーチのコリン・ファースが映画館の支配人役。
イギリス南部の観光地にある映画館、エンパイア劇場はかつてはダンスホールもあった瀟洒な建物。サム・メンデス監督が見つけてきたそうです。
最上階のダンスホールに鳩を放し飼いにして、あのシーンを演出するなんて。
ヒラリーは躁鬱病(双極性障害)の気がある中年女性。色々あって独身のようです。上映早々に支配人室に呼ばれて性的奉仕を度々強要されていると思われるシーンがあり、コ、コ、コ、コリン・ファースが~となってしまいます。1980年代の設定ですが、この二人が演じると、必要以上になんて封建的!と感じてしまいます。
物語が進むうちに素晴らしい音楽とともに、ヒラリーは狂ってなんかいないとだんだん感じるようになっていきました。
あんなになってしまうヒラリーが旅立つスティーブンのために理性でぐっとこらえているシーンには分別ある大人として歳の差恋愛の決着をつけなきゃみたいなヒラリーを演じるオリビア・コールマンがいじらしくてたまりません。
カセットテープのウォークマン、EP盤、70年代後半に英国で流行った2toneバンドなど音楽に対する愛情もいっぱい詰まってました。
映写技師がヒラリーにかける言葉。しみます。
母親が病院でヒラリーに言った、
「ヒラリー、あなたがビーチに一緒に行った人なのね。」
なんて優しくて強い母親なのでしょう。
二人の優しい大人の女性から巣立っていったスティーブン。
みずから世話した翼を怪我した鳩が彼に重なります。
大晦日の花火も一緒だったことは2人だけの秘密にしてあげたいですね。