劇場公開日 2023年2月23日

「「感動」を前面に出した予告編は間違いじゃないけど、意外にハードな要素も盛り込んだ一作」エンパイア・オブ・ライト yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0「感動」を前面に出した予告編は間違いじゃないけど、意外にハードな要素も盛り込んだ一作

2023年2月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ドラマの語り手として評価の高いサム・メンデスが監督を務めている上、オリビア・コールマンを主演に迎え、舞台は1980年代初頭のイギリスの映画館、となると、予告編で強調されるまでもなく、重厚で感動的な人間ドラマが展開することが容易に想像つくし、実際その期待には十分に応えてくれる作品です。

しかし当時のイギリスは、生活不安に根ざした移民排斥運動が過激化していた時代でもあり、そうした時代の陰がこの物語にも覆い被さっています。さらに映画館のマネージャーとして穏やかで安定感のあるヒラリー(オリビア・コールマン)の別の側面が見えてくるにつれて、単に昔の映画館文化を懐かしむノスタルジー映画でもなければ、感動一辺倒の人情ドラマ、といった枠には収まりきらないハードな展開となっていきます。

つまるところ「映画」とは壁に映し出されたイメージに過ぎない訳だけど、それに対して人は何を託し、イメージは何を提示するのか、端的に示してくれる場面には、映画の可能性を信じ続ける強い意志が感じられます。フィルム式の上映方式だからこそ説得力のある場面です。

『1917』(2019)に続いてメンデス作品で撮影監督を務めたロジャー・ディーキンスの映像は相変わらず非常に美しく、逆光から浮かび上がるシルエット、曇りの外光が照らし出す室内や人物の柔らかな姿、表情豊かな後ろ姿など、一つひとつの映像が脳裏に焼き付くほどです。程よい上映時間に十分な要素を詰め込んだ作品だけど、どうせなら今回あまり前面に出なかった劇場スタッフ達のドラマも観たかったところ!

yui
yuiさんのコメント
2023年3月22日

コメントありがとうございます。壁に映し出された「幻」に想いや感情を託せるのは人間の掛け替えのない特質かも知れませんね。
『エンドロールのつづき』でも、この場面に似た描写があったことに驚きました!

yui
Uさんさんのコメント
2023年3月21日

そうですね。壁に映し出されたイメージに過ぎない映画に、驚き、感じ、揺らされるのですね。

Uさん