「五感が心地よい、ガラス一枚で隔てられたパラダイス」エンパイア・オブ・ライト かばこさんの映画レビュー(感想・評価)
五感が心地よい、ガラス一枚で隔てられたパラダイス
ヒラリーの「正体」が初めは良くわからなかったが、途中で劇的に判明する。そして、職場仲間の心遣いも分かる。
押し付けがましくなく適度な距離感で見守れるのは、彼らもそれぞれ傷や闇を抱えており人の気持ちが分かるからでしょうが、自分が辛いとその分他人の不幸は蜜になりがちなのに、ここの人たちは温かく優しい。
スティーブンのお母さんの優しさと視野の広さも心地よい。
普通なら年若い息子をたぶらかした中年(メンヘラ)オンナ、と攻撃しそうなのに。
サッチャー政権下、失業者が溢れストライキや暴動が多発した時代のイギリスの庶民が主役の映画は、「ブラス」とか「フル・モンティー」とかいい映画があったがこれもそう。
映像が美しい。
音楽も良い。
五感が安心する心地よさがある。
映画館の中は特に心地よい。
外部とガラス一枚で隔てられた空間は、物理的にも精神的にも、中で働く人々を守っている安全な場所。
優しい人達しかいないささやかなコミュニティ。
映画館は「職場」なので、失業の脅威からも守られている。
この映画館はパラダイスです。
こんな職場で死ぬまで働けたらいいなあ。
弱い立場の女性にセクハラし続けてきたゲス支配人が晴れ舞台で成敗されるのも心地よいです。
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