「「Empire of Light」= 映画 というお話。」エンパイア・オブ・ライト もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
「Empire of Light」= 映画 というお話。
①最近、ハリウッドでは『パビロン』、日本では『銀平町シネマブルース』といった映画館への愛・回帰を謳う映画が続いているが、イギリスからはこの映画が届いた。
②映画が大好きなのに、映画の中でトビー・ジョーンズ扮する映写技師ノーマンが説明してくれるまで、映画というのは「長いフィルムに高速度で連続撮影した静止画像を映写機で映写幕に連続投影して形や動きを再現するもの」であることは分かっていたけれども、“複数の少しずつ異なる静止画(1コマ1コマの間には黒いスペースがある)を断続的に投影することにより、それを見る人間の頭の中で、静止画と静止画の間の像を描いてしまうという「仮現運動」という心理作用が働くことによって、動いている映像が感じられるのである。”ということは知らなかった。
いや、お恥ずかしい。
そして、その“投影”するのに必要なのが“光(light)”。
だから、“Empire of light(光の国―光が無いと成り立たない国)”とは、ここでは映画のことを指していたんだね。(ウルトラマンの故郷じゃなく)
③そして、ここで映画と映画館とを描くのにサム・メンデスは、深刻な不況からイギリス経済を立て直そうとしていたサッチャー政権下の保守的だった80年代初頭を舞台にした、統合失調症を患う中年女性と不況下で更に拍車が掛かった偏見と差別とに苦しめられる黒人青年との間に芽生える恋と心の触れ合いという話を持ってきた。
③洗面台に置かれていた薬、定期的な精神医のカウンセリング、オリヴィア・コールマン扮するヒラリーが何かの精神的な病を患っていることがわかる場面が点描される。休憩室でも浮いているわけではないが、仕事仲間とは微妙に違う空気感を纏っているのがわかる。この辺りのオリヴィア・コールマンの演技は凄い。
映画館の統括主任という仕事もしっかりこなしている様に見えるヒラリーだが、新しく入ってきたスティーブンに惹かれ始めた辺りから奇矯な言動が目立つようになってくる。