「いろいろな見方ができる知的な枠。今週おすすめ。」エンパイア・オブ・ライト yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
いろいろな見方ができる知的な枠。今週おすすめ。
今年59本目(合計711本目/今月(2023年2月度)25本目)。
ミニシアター(シアター2つの模様)を舞台に、その従業員やその常連さんほかを描いたヒューマン系のストーリーです。
この時代(1980年代ごろ)はまだ男女同権思想も完全ではなく、もっといえば黒人差別問題は普通にありました。このようなことが映画内では明確に見て取れます。
ただ、ミニシアターが舞台だとはいっても、コロナ事情等あるわけでもない1980年代のお話なので「経営難が何だの」といった「映画館の裏側」といったお話はほとんど出ないです(そういう趣旨のストーリーではないので注意)。
ストーリーも、「ミニシアターを中心とした人間関係」と「ヒラリーなどをはじめとした個々個人に着目したストーリー」の2本立てになっています(それらが交互に進むかたち)。いろいろな見方ができるので今週おすすめといったところでしょうか。
採点は下記がきになったので、4.7で4.5まで切り下げています。
------
(減点0.3/(当時の事情である点は理解しても)人権に対する配慮が足りない)
・ 「精神科から逃げてきたら人(警察?福祉施設の人?)が無理やり連れ戻す」シーンです。
日本では、このような「強制的な連行」は、刑事事件において令状がなければ行うことはできません(憲法/例外あり。現行犯の場合、緊急逮捕の時など)。そしてそのことは、刑事事件に限らない、一般の行政手続(たとえば、精神科のこの話は、医療行政)にも等しく及ぶ考え方です(日本では、川崎民商事件、成田新法事件など。「刑事手続きではない、ということのみをもって、憲法が保障するこれらの手続きが行政手続きに全く適用されないとは解されない」という最高裁判例)。
もっとも国も違うのも理解はするものの、この点はどこの国であろうが人権侵害の疑いが非常に強いもので(だから日本では今ではほとんどとられていません。制度上存在はしますが、死文化しているものが多いです)、こうした点に対する字幕上(エンディングロール)の配慮がなかったのが残念でした。
------