「デミアン・○ャゼルにこの映画を煎じて飲ませたい」エンパイア・オブ・ライト ヘルスポーンさんの映画レビュー(感想・評価)
デミアン・○ャゼルにこの映画を煎じて飲ませたい
「アメリカン・ビューティー」のあのサム・メンデス監督が帰ってきました。
ファーストショットから左右対称のフレームで美しく映し出されるエンパイア劇場と、そこで働くオリビア・コールマンの哀愁漂う日常描写。ゆったりとしたピアノサウンド。ここまで台詞一切なし!
映像と音楽で語ってくるザ・サムメンデス・ショット!
バッチリデザインされ尽くしたオープニング。さすが。
(スリッパをストーブの前に置いて上司の為に暖めてあげるさりげない所作などもgood)
撮影監督は巨匠ロジャー・ディーキンス。音楽はナイン・インチ・ネイルズのプロデューサーコンビ。
黒人差別や性差別を描きながらもエンパイア劇場で働く人々の人間関係や"映画"を観ること・観る人達全てを平等に温かく包み込むような非常に心地良い映画でした。
総合失調症だと分かる中盤で、「ビューティフル・マインド」のように妄想と現実が入り乱れる展開か?と思いきやそうではない。彼女は果たして本当に病気だったのだろうか。過去にいったい何があったのか。映画の中では彼女の闇ははっきりと描かれない。
劇中のとある台詞であるように「映画とは光と闇の連続で、1秒間に24枚の画を光が映し出す。人間の目にはその光だけが見えて、光の間にある闇は見えない」のだから
エンパイア・オブ・ライトというタイトルながら光という映画を描き、闇という人間を描いたサム・メンデス監督らしい、むしろ集大成的な映画なんじゃないかと思いました。色んな闇を抱えてる全ての人間が映画のスクリーンの前では平等にその光に照らされる。というしっとりとしたビターチョコレートのような映画。
ハリーポッターの百味ビーンズのようにカラフルだけど鼻くそ味だった何とかチャゼルのバビロンとは風格の違う映画。
舞台美術もめちゃくちゃ豪華で、イギリスの静かな海辺の町・マーゲイトに実在する元映画館“Dreamlandを改修して使ったのと、Dreamlandは広いロビーがなかったため、ロビーに関しては並びの空き地に完全オリジナルデザインで新しく作ったという気合いの入りよう。
あのチケットカウンターから中央の物販エリア、劇場へと続く階段などは本作オリジナルデザイン。本当に行きたくなるくらい最高の劇場でした。
※映写技師への配慮に少し欠けた「ニューシネマ・パラダイス」を補完してくれるかのような描写もgood やはりあそこが映写技師の腕の見せ所。