劇場公開日 2023年2月23日

「シンプルに、映画と映画館を愛する作品だったら…」エンパイア・オブ・ライト たいちぃさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0シンプルに、映画と映画館を愛する作品だったら…

2023年2月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ユナイテッドシネマ浦和にて鑑賞。

予告編を見て「映画館での映画だから…」と公開初日に観に行ったら、エピソード詰め込み過ぎのサム・メンデス監督作品だった。
映し出される様々なシーンは、撮影監督ロジャー・ディーキンスだから、確かに美しいのだけれども…。

「暗闇の中に光を見いだす」なるテロップで始まり、イギリスのどこか海沿いにある映画館=エンパイア劇場では『ブルース・ブラザース』&『オール・ザット・ジャズ』の二本立て。
こうした風景を見ると「おっ、80年代の名画座(早稲田松竹・八重洲スター座・文芸坐・パール座等)みたいだ。イイ感じかも…」と思う。

エンパイア劇場では、年配女性(オリヴィア・コールマン)が働いているが、映画館主(コリン・ファース)と束の間の熟年恋愛。
そんな所に、若い黒人男性(マイケル・ウォード)が雇用されて着任。
オリヴィア・コールマンは精神科に通っているが、マイケル・ウォードと出会ったことで明るくなっていく感じ。
2人が花火を見るシーンは名場面。
この後も物語は続くが、割愛(笑)

映画館と映画を愛する気持ちを描いているあたりは、ルビッチ・ヒッチコック・マーロンブランド・キャサリンヘブバーン等々の写真が飾られていたり、様々な映画フッテージが使われたりと、それなりに伝わって来る。特に『チャンス』(ピーター・セラーズ主演)の名ラストシーンなど見せられると感動再びの感はある。
ただ、そこに、オリヴィア・コールマンの狂ったような演技で精神分裂(字幕は統合失調症)の姿、熟年恋愛風景、歳の差恋愛、黒人差別問題、就労問題デモから発した差別暴力などを絡ませたのは盛り過ぎ。

そうしたダーク面が盛り込まれた本作でも、田舎を走るロンドン二階建てバスは新鮮であるし、『炎のランナー』プレミア上映で年配女が「ヤルか、ヤラざるか、それが問題だ」というハムレット的な発言は笑えたりする。

まぁ、映画と映画館を愛する物語を普通に描いてくれれば、それなりに楽しい気分になれたかも知れないが、暗いエピソードたっぷりなので気分高揚する感じではなかったのが残念。

<映倫No.49437>

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たいちぃ