「【”暗闇の中に光を見出す。”最近、映画をテーマにした良作の公開が続くが、今作もその一作である。映画館が如何に大切な存在であるかを描き出した趣ある作品である。映画館で観る映画って、ヤッパリ良いよね。】」エンパイア・オブ・ライト NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”暗闇の中に光を見出す。”最近、映画をテーマにした良作の公開が続くが、今作もその一作である。映画館が如何に大切な存在であるかを描き出した趣ある作品である。映画館で観る映画って、ヤッパリ良いよね。】
ー 「エンドロールの続き」「バビロン」来週公開の「フェイブルマンズ」(面白いに決まっている!)。古くは、「カイロの紫のバラ」「SUPER 8」「アーティスト」そして、誰もが知っている「ニュー・シネマ・パラダイス」ほぼ外れなしである。
映画館で映画を観るのは、家で配信を見るより、当たり前だがメンドクサイ。だが、私だけかも知れないが、映画館で観た映画は、より心に残るモノが多い気がする。それは、事前に体調を整え、映画館まで時間を掛けて足を運ぶ行為が介在しているからだと思っている。
だが、配信の良さもコロナ禍以降、実感している。日本には映画館の無い地域が多数あるからである。配信の普及はコロナ禍が齎した数少ない、僥倖な事だと思っている。-
■今作は、映画館に勤める中年の白人女性ヒラリー(オリヴィア・コールマン)と、新入りで雇われた黒人青年スティーヴン(マイケル・ウォード)との恋物語を軸に、彼らにとって、如何に映画館が大切な存在であるかを、描き出した趣ある作品である。
◆感想
・序盤、ヒラリーが医師の診察を受けているシーンが映し出される。会話を聞いていると、彼女が心に傷を負っていることが分かるが、この時点では詳細には明らかにされない。
ー この映画は、登場人物達の過去を、観る側に少しづつ開示して行く。それが奏功している。-
・スティーヴンも、親しくなったヒラリーとのエンパイヤ映画館の、使われていない展望喫茶店で、”本当は建築家に成りたかったけれど・・。”とか”母親は1960年代にトリニダッドから英国に来て、それ以来ずっと看護師”等と言い、ヒラリーも幼き頃に両親から受けた心の傷を話すのである。
ー 孤独であった、彼らにとって心を許した相手と会話する事は、一種の救済である。-
・支配人のエリス(コリン・ファース)のセクハラに悩むヒラリー。だが、中々言い出せない中、スティーヴンが質の悪い常連客がフィッシュ&チップスを食べながら劇場に入場しようとした際に、毅然と”食べるならここで!”と言い放つ姿を見て、妥協していた自分の行為を恥じるかのような表情を浮かべるシーン。
ー ”場内での飲食は”、売店で購入したモノでお願いします。”と言うのは、1980年代のイギリスでも同じだったんだ!という発見も少し、嬉しい。-
・そして、エリス待望の「炎のランナー」プレミアム試写会での、支配人の喜びと誇りに満ちたスピーチの後、解雇されていたヒラリーが、舞台に上がり”心の欲望は栓抜きの様に歪んでいる。躍れ、踊れ・・。”とまるで支配人のそれまでの行いを揶揄するような詩を読み上げ、去るシーン。
ー そして、怒りに震えた支配人に対し、妻が見ている中、彼の卑劣な行為を暴露するシーン。-
・支配人が別の地に去った後、劇場に束の間の平穏が訪れたかと思いきや、従業員の休憩所で、パンキッシュな髪の毛のジャニーンが大音量で掛けていた”スージー&バンシーズ”の”スペル・バウンド”の音の、向こうから聞こえて来た大勢の足音。
ー サッチャー政権は、当時極右的な思想の下、外国人を排斥しようとしていた事を学んだことを即座に思い出す。そして、暴徒と化した男達はそれまでもスティーヴンの事を“国に帰れ!猿!”と言っていたが、今度は殴る蹴るの暴行を彼に行う。そして、彼は母親が勤める病院へ救急車で運ばれる・・。深夜まで、病院のロビーで待っていたヒラリーに母親が”貴方が息子と海岸へ行った人ね。息子から伝えてと頼まれたの・・。息子は大怪我だけれども大丈夫・・。
このシーンは、沁みたなあ・・。中年の白人であり、スティーヴンの前で見せてしまった情緒不安定な事を知っての言葉だからである。-
・映画館の裏の階段で、映写技師のノーマン(トビー・ジョーンズ)とヒラリーが交わす言葉も良い。”見舞いに行ったか?””行っていない・・。””俺は息子が8歳の時に別れたままだ。あいつはもう22歳だ・・。”
ー ノーマンの、”年齢差や、人種の違いなど関係ない”・・。”と言う言葉が伝わって来る。そして、後悔しない人生を送れ。というメッセージも・・。-
・無事、退院したスティーヴンが、改装され綺麗になった展望喫茶店で、”建築学部へ行くよ・・。”と言った時の、ヒラリーの嬉しそうな顔。
<そして、彼女は夜中タクシーを飛ばし、エンパイヤ劇場へ向かう。帰りかけていたノーマンに”お願い、映画を観せて・・。何でも良いから・・。”そして、ノーマンは、ピーター・セラーズ主演の「チャンス」を彼女だけの為に上映してくれるのである。
ノーマンやニール(実に良い奴である。)の心温かき、エンパイヤ映画館の従業員たちの、ヒラリーとスティーヴンの恋を容認する姿も良いし、何と言ってもヒラリーが涙を流しながら、独り映画館のど真ん中で映画を観るシーンは、忘れ難き作品である。>
ヒラリー、最初のダンスシーンでは割り当てられた男性が相手で曲は4拍子、ぎこちない踊り子でしたね。それが2回目のダンスシーンはワルツで頭部を上げて姿勢良く楽しそうに踊っていましたね!私は遅くて「ファーザー」からなんですがコールマンという女優に出会えて幸せです
おはようございます!
ここ最近は洋画から足が遠退いてたんですが観に行ってよかったと思える作品でした!
あと私の場合、他の方が選ばなそうな席に座る(前の方の席)ので結構気にせず泣きますよ!(笑)
またよろしくです👍️
あのおじさんにスティーヴンが毅然と対応していたこととヒラリーが場をうまくとりまとめていたことは、彼が理不尽なものに屈しない強さを備えていること、彼女の今の気持ちに余裕があること、を感じられ、なんだか嬉しいシーンでした。
あたたかい仲間たちのいるあの劇場で働きたくなってしまいましたよ。もちろん支配人交代の後に^_^
返信ありがとうございました。
失礼いたします。
失礼します
大変稚拙な文章に寄り添って頂き、誠にありがとうございます
本来は間違っていると思いますが、鑑賞後に自分の素の感想を削ぐ為に考察サイトを調べてしまうのです 今作は余りにも否定的な評価が目立ったので、『恥』を承知で憤った次第です(苦笑
人の善悪なんてない あるのは『恥』の塗り固め方 蓋なんてパカパカ開かないぞと意気込む人達には温い印象だったんでしょうね・・・
くどいようですが改めて感謝致します