劇場公開日 2023年2月23日

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「その迷いの軌跡を青春と呼ぶ」少女は卒業しない 因果さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0その迷いの軌跡を青春と呼ぶ

2023年6月16日
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卒業式は高校生活のピリオドであっても世界の終わりではない。そんなことは百も承知だし、明日からも私たちの人生は続いていく。「さよなら」と手を振ったあの子やあの子のInstagramを私はちゃんと知っている。それでも卒業式というものに特別な意味を、ただならぬ寂寞を見出してしまう。

卒業式だけではない、少女も、高校生も、恋愛の終わりも、それ自体には何の特別さもないことを我々は知っている。知っていながら特別なことだと思っている。甘い夢想と苦い現実のせめぎあいの中を彼女たちは生きている。その迷いの軌跡を青春と呼ぶんだと思う。

俺はいまだに高校生という区分が何なのかよくわからない。ガキと呼ぶには成熟しすぎているし、大人と呼ぶには冷酷さが足りない。幽明のあわいを漂うような、実体の定まらない存在。しかしその不明瞭さを過度な神話化やフェチズム化によって無理やり固定せず、流れるがままに流しているのが本作だった。「卒業式」のために人々が存在しているのではなく、人々の存在がまずあって、そこに時間経過の必然として卒業式が立ち現れている。

少女たちが紆余曲折を経て卒業式の後の世界へと踏み出していくラストシーンはやや達観が過ぎるのではないかと思うものの、微かな爽やかさがある。そして映画の終幕をもって彼女たちの青春時代は終わりを迎える。

今や過ぎ去った日々を名残惜しげに振り返るように、「Danny Boy」の旋律がいつまでも響き続ける。

The summer's gone
and all the roses falling
'Tis you, 'tis you
must go and I must bide.

夏は終わり
バラも散り果て
あなたは去って
私は待ちぼうける

因果