「この善き日、私たちは旅立ちの日を迎えることとなりました。私たちにとって、学校は世界のすべてであったと言っても過言ではありません。」少女は卒業しない 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
この善き日、私たちは旅立ちの日を迎えることとなりました。私たちにとって、学校は世界のすべてであったと言っても過言ではありません。
これはヤバい。なぜにこれほどまでに胸が締め付けられるのだろう。「14歳の栞」で感じたものにも似ているが、おそらく、「桐島」に近い。かつての自分の体験と重なる(といってもここまで美しいものではないが)場面がでてくるたびに、悲しさと切なさとわずかな喜びが胸の中で渦を巻く。
自由登校明けの、卒業式前日のリハーサルで、久々にあう級友たち。
廃校予定、取り壊される校舎。
三年間の思い出を清算する三年生たち。
「卒業なんてしなかったら、ずっと楽しいのにね。」
「人生の1/3だよ。」
「ねえ見て。桜、きれい。」
「じゃあ作田さんはそっちを持っていてください。」
いくつものセリフで、撃ち抜かれるような衝撃を受けた。たぶん、彼ら彼女らは、そこまでの気持ちで言ってはいないだろうに。
監督やキャストの過去作を見ると、ああ、これこれというものばかり。ダニーボーイの彼はあの夫婦の息子なのか、という驚きもあった。たまにこういう映画を観て、自分の心の周りの曇った膜を洗い流すのは必要な作業かも知れない。もう取り戻すことのできないかけがえのないものを思い出すためにも。
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