「もう、大丈夫。」少女は卒業しない 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)
もう、大丈夫。
校舎の取り壊しを目前に控えたある地方高校で、最後の卒業式を迎える4人の少女の群像劇。
それぞれの想いを抱えた彼女たちは周りを巻き込みながら最後の2日間を過ごす。
ー私はさよならする。世界の全てだった学校とこの恋に。
朝井リョウの原作を実写化。
『カランコエの花』の衝撃が印象深い中川駿監督の商業映画デビュー作。
主演には河合優実、小野莉奈などの実力派若手俳優が脇を固め、主題歌はみゆなの『夢でも』。
この時点で自分の中での優勝を確信していたし、実際に優勝だった。
言葉にするのを躊躇いたくなるほど、良い良い良い。
なんともいえない余韻が素晴らしくて、近いうちにもう一度観に行こうと決めた。
卒業。
それは平等に与えられたターニングポイントだと思う。
4人はクラスメイトだがほとんど関わりがない。
同じ教室にいるのも疑ってしまうほど他人だ。
そして立場も性格も全く違う。
勿論、卒業に対する想いも違う。
ずっと卒業したくない者、早く卒業したい者、卒業を機に変わりたい者、変わりたくない者、上京する者、地元に残る者、進学する者、就職する者。
社交的な人にも教室に居場所がない人にも、みな平等に、ある意味残酷に、卒業の時はやってくる(留年とかは今回は除いて)。
卒業しなければならない。
そして彼女たちは進まなければならない。
そのためには大切ななにかを捨てなければならない。
この映画では卒業式前日と当日のたった2日間が描かれる。
しかもある一点を除いて、時間はそのまま進み無駄な回想や時系列の前後はない。ある一点を除いて。
進むしかない、時間は戻ってくれない。
楽しかったことも悲しかったことも戻らない。やり直したくてもあと1日しかない。
だからあの過去にもこの恋にも別れを告げるんだ。
どんなに嫌でも自分の気持ちに区切りをつけて次のステージに進む。
それを迫られるのが、卒業式というある意味残酷な儀式なのだ。
少女は卒業しない。少女だったあの頃の私はこの校舎とともにさよならする。少女だった私は永遠に卒業しない。
高校時代、私にはこんな青春はなかった。
特別仲の良い友達はいなかったし、勉強も運動も出来なかったから自分の中では割と暗黒時代で、出来れば思い出したくない。
でも今回、頑張って思い出しながら観ると、やはりこみあげるものがある。
どんな高校生活を送った人でもきっとあの中に自分がいるはず。
なんとなく卒業してしまったけれど、あの時この映画を観ていたら何か違ったのかなと思ったり思わなかったり。
地獄のアディショナルタイム、ものすごく分かる。
一緒に写真撮ったり寄せ書きしたりする相手もいないけれど、すぐ帰るのもなんか嫌だったから校内ウロウロしてたな。そのせいでとある事件が起きたんだけど、それは今回は割愛。
あと、結構イジられキャラで普通に評価されないってこともあったから、森崎の姿が本当にカッコよかった。自分もあれがやりたかったな。
たった2日の出来事、一人一人で見ればそんなにすごいたくさんの事があったわけではない。
でも、答辞を読む山城まなみの勇気に感化された、ただのクラスメイトだった4人の少女の物語が集まった時、この話が生まれた。
元々原作は短編集らしいが、それを結びつけて1つの映画を作り上げた監督に拍手。
カメラワークだとか細かい演出には彼女たちの日常を覗き見しているような臨場感がある。
セリフなどで直接的に語ることは一切なく、この2日間の彼女たちの様子だけで、これまでの3年間分の出来事をなんとなく観客に理解させるやり方はただただ上手いと感じた。
中川監督でなければここまで自分も入り込める作品になっていなかったと思う。
国連、願掛けフリースロー、Danny Boy、延滞本。
何度も泣かされた。
涙を流すのはただ悲しいからだけじゃない。
これは終わりの物語ではなく始まりの物語だ。
出会いがあれば別れがある。別れがあればまた新たな出会いがある。
とにかく観て欲しい。
映画館で映画が観たい、そう思ったならこれを観て欲しい。
どれを観ようか悩み前にまずこれを観て欲しい。
早くも今年ベスト最有力。おすすめ!
いい映画でした。
森崎くんの歌は期待しすぎたので、あれ?という感じはあったが、遠くで流れる歌に、主人公が気づいた時の表情が心に残りました。2回見たのですが、2回目は自分の高校時代のこと等ばかり思い出して、ほとんど、映画の内容は頭に入りませんでした。