「ストーリー展開があまりにも陳腐」ファミリア rie530さんの映画レビュー(感想・評価)
ストーリー展開があまりにも陳腐
在日外国人支援をする団体のメンバーでもあるので、とても興味深く、期待をもって見た。
しかしそれはものの見事に裏切られる。
そもそも宣伝のリード文からしておかしい。主観的な見方の違いもあるだろうけれど、南米系移民が古い公団/公営住宅に居住するのは東海地区の郊外がほとんどで、画面に名鉄の駅が映ってもいる。『山あい』の訳ないじゃん!とまず思う。そもそも陶芸だって山にこもらなきゃできない訳ではないし。宣伝のステレオタイプがそもそも悪い予感を感じさせる。
また、アルジェリアの難民キャンプ出身だという長男のパートナーがどう見ても南アジア系。彼の地の難民はモロッコ周辺の西サハラ政変で生じた人々で、風貌はアラビックのはず。こんなの報道写真みればすぐわかることなのに、手抜きが見え見えだ。
そして何より移民青年との「家族」関係を築くのに、何で半グレ集団との命を賭けた抗争が必要なのだろう。
話の中で語られる移民青年の父親の死、裏切られた「ジャパニーズ・ドリーム」、配偶者に死なれ、息子も定職に就けない母親の気持ち、それらはどんなものだろう。他にもただ台詞の中で語られるだけのことがらの方が、ずっと現実の移民社会の闇を表していて、バカバカしい半グレの不毛な喧嘩のシーンなんかより、よっぽど現実の深刻さを表しているはずなのに、と見ていてほんとうに苛々させられた。
最後の役所広司の突っ込みも何だかなぁ、と思う。素人が録音した自白テープなんて、法廷では何の効力も無い。そもそも幼馴染の警官が彼の行為を黙認した形で、ある意味囮捜査を仕掛けることなんてあり得ない。
こうまで過激にならずとも、彼らにはとても重たい現実があるということを作る側に知っておいて欲しかった。