「滅びを受け入れたグダグダな大人たちの最後のパーティー」サイレント・ナイト 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
滅びを受け入れたグダグダな大人たちの最後のパーティー
この映画に出てくる大人たちは、おそらく人類滅亡の危機に瀕しても、きっとなんとかなる、誰かがなんとかしてくれる、偉い人たちの言うことを聞いていれば大丈夫と手をこまねいていたはずで、これほど消極的な市民をメインに据えた映画も珍しい。監督としては社会批判の気持ちも強く、ダメな大人へのアンチとしての子どもの目線も描かれてもいるのだが、どうしても怠慢でグダグダな大人どもの情けなさに注目してしまう。
映画としてコメディにもシリアスにもなっていないのは、どっちに振り切ることもできない人たちの話だからで、100%いい意味で誰のことも好きになれない。好きにはなれない、が、でもこの人たちのことは絶対に知っているし、むしろ親近感すら覚える。特にキーラ・ナイトレイが演じた役のナチュあるな主体性のなさは、本作の核ではないかと思う。
作品としては結構な批判にもさらされたようで、インタビュー記事を読むと監督が反省を述べたりもしているが、ちゃんとビジョンを持ってやり通していると思うので、その果敢な姿勢を支持するし、何目線かわからないけど、監督にももっと自信を持っていただきたい。
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