「【”例え明日世界が滅亡しようとも、今日僕は林檎の木を植える。”世界の滅亡を眼前にした”未来を諦めた”人々の姿をブラックシュールに描く。どんな状況下でも”未来を諦めてはいけない。”と思った作品である。】」サイレント・ナイト NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”例え明日世界が滅亡しようとも、今日僕は林檎の木を植える。”世界の滅亡を眼前にした”未来を諦めた”人々の姿をブラックシュールに描く。どんな状況下でも”未来を諦めてはいけない。”と思った作品である。】
■”例え明日世界が滅亡しようとも、今日僕は林檎の木を植える。”
ご存じの通り、マルティン・ルターの名言であり、私の好きな故、開高健が好んで、色紙に記した言葉である。
決して、未来を諦めないというメッセージが色濃く表された言葉である事は、異論がないであろう。
ー 毒ガスにより、世界の破滅が近づいている事を大人たちは、政府のアナウンスで信じ切っている。
但し、その理由は”ロシアによるもの・・。””環境破壊の結果”と、判然としない。
更に、被害を写した光景も一切でない。
映されるのは、”毒ガスにより、世界が破滅する。”と信じ切っているサイモン(マシュー・グード)と、ネル(キーラ・ナイトレイ)夫妻と、親友たちである。
それと、政府が配布した”苦しまずに死ねる”と言う、赤い箱に入ったピルである。-
◆感想<個人的な想いが可なり入っています。>
・今作には、世界が破綻して行く様が、一切描かれない。
只、クリスマスイブに、サイモン家に集った子供を含めた男女が、最期の時間を楽しもうとする姿が描かれる。
皆、政府から配布された自殺用のピルを偲ばせて・・。
大人達は、世界の滅亡を信じており、哀しみを抱えながらパーティーの席に着く。
ー 毒ガスが発生した理由にも、一切言及されない・・。
本当に毒ガスなのか・・、と勝手に推測する。
思い込みなのか・・。
だが、大人達は世界の破滅を盲目的に信じている。
子供のサイモンの息子、アートを除いて・・。-
・お腹に子供を身籠っているソフィ(リリー=ローズ・デップ)も、自死に逡巡している。
■只独り、ピルを飲むことを拒否するサイモンとネルの息子、アート(ローマン・グリフィン・デイヴィス)の姿が、”未来を諦めない”姿として描かれる。
・不法入国者と、路上生活者には、ピルが配られないという設定もシニカルである。
・更に言えば、女王は”死を選ばずに”シェルターに籠る”という事も、語られる。
■逃げ出したニワトリを追いかけた、アートがガスが近づいてきた森の中の車で観たモノ。
それは、一台のハザードランプを付けた車。
車内には、ピルを飲んで死んだ人々の死体が・・。
中には、幼子もいる・・。
<混乱するアート。
家に戻った彼は、”毒ガス”を吸ったからか吐血し、それを見たサイモンは愛する妻、ネルと双子にピルを飲ませ、ベッドに横になる。
だが、翌朝、サイモン家の上空には、ガスはなく、白い雪が降り積もっている。
ホワイトクリスマスである。
これは、私の勝手な推測だが、あの黒い雲は、本当に毒ガスだったのか・・。
それは、死んだと思われたアートが、ベッドの上で一人、目をカッと見開いて目覚めるラストショットから観る側が、判断する事だろう。
現況下を鑑みても、今作はブラックシュール且つ、シニカルな作品であると私は思った作品である。>
NOBUさん、いつもありがとうございます。
世界の破滅を政府による完全なデマだとしたら、凄い内容の映画ですね~
ニュースの死亡者発表をさっと消してしまうところもニクい演出・・・